イカロス (詩)
「おい、見ろよ。空を。赤く黄色く橙の、太陽の傷口を。まるで排水口じゃないか。宇宙の星々は下水じゃないか。汚い空だ。恐ろしい空だ。」
ーー血まみれになった太陽を吸い上げると、空はひしゃげて、ぺちゃんこになった。(血まみれだから仕方ないよね。)言い訳しながら、更に太陽を啜って、汚水のように、流れていった。
「ぞろ目が出たからもう一度。ぞろ目が出たからもう一度。」
ーー遊び半分の遊戯で、多くの女が泣かされた。それは、雨としては降らずに、もっぱら家庭の災害になった。
「流れきって夜が来る。遊び疲れた昼が死ぬ。」
ーー当たり前の沈没が控えていた。取り返しのつかない日が暮れた。息を殺してそれを見つめた。
「さあ、“手をくれ”になる前に、あの橙に、飛び込もウ。手つかずの汚れに、飛び込もう。」
ーーそう言って、太陽に、イカロスは、落下した。最初のイカロスが落下してからも、この星は懲りずにたくさんのイカロスを産んだ。それらの有象無象のイカロスは、みな、太陽に落下した。
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