「タイタス・アンドロ二カス」精読①1.1.1-8

第一幕。第一場。舞台はローマ、神殿(キャピトル)の前で、この劇は幕を開ける。ファンファーレがなって、続々と登場人物たちが舞台に登場する。マーカス・アンドロニカス(タイタスの弟)を含む護民官たち、元老院議員たちが二階舞台に登場する。平舞台の一方からサターナイナス(先のローマ皇帝の長男)とその一党、もう一方からバシエーナス(サターナイナスの弟)とその一党が、それぞれ太鼓手やラッパ手を先頭にして、登場する。

本文・日本語訳(1幕1場1行目から8行目)
先の皇帝の二人の息子だった、サターナイナスとバシエーナスの兄弟が、皇帝位を争って、市民に支持を訴えて演説しているところから、この劇は始まる。


SATURNINUS.(サターナイナス)

Noble patricians, patrons of my right,
貴族の皆さん、私の権利の支持者の皆さん、

Defend the justice of my cause with arms;
武器を持って、私の大義の正当性を守ってくれ。

And, countrymen, my loving followers,
そして、同郷の人々、忠臣たち、

 Plead my successive title with your swords.
剣を持って私の皇帝位の継承権を弁護してくれ。

I am his first born son that was the last
That wore the imperial diadem of Rome;
私はローマの王冠を戴いていた今は亡き先帝の長子である。

Then let my father's honours live in me,
したがって父の名誉が、私の中に生きることを許してくれ。

Nor wrong mine age with this indignity.
この侮蔑(帝位の継承権が脅かされること)によって私の歳月(長男であること)を汚さないでくれ。

単語・語法解説
①Noble patricians  :貴族の皆さん(ここでは呼びかけ)。

②patrons of my right :私の権利の支持者の皆さん(呼びかけ)。patron:支持者。right:権利。

③Defend the justice of my cause with arms:Defendは命令形、〜を守ってくれ。the justice of〜:〜の正当性。my cause:大義名分。with arms:武器を使って。

④countrymen:同郷の人(ここではローマ人)

⑤my loving followers:私に忠実な臣下。loving:〜に忠実な。

⑥Plead my successive title with your swords:Pleadは命令形、〜を弁護してくれ。my successive title:皇帝位の継承権。successive:相続の、継承の。title :称号、肩書き。ここでは皇帝の称号のこと。

⑦I am his first born son :私は彼(亡くなった先帝)の長男である。first born:最初に生まれた。son:息子。

⑧that was the last:最後の皇帝の(長男)。that:関係代名詞。先行詞は⑦のhis。the last:最後の皇帝。全体を直訳すると、最後の皇帝だった(彼の長男)。

    ⑨That wore the imperial diadem of Rome:ローマ皇帝の冠をかぶっていた(最後の皇帝)。That:関係代名詞。先行詞は⑧the last。imperial:皇帝の。diadem:王冠、冠。

⑩Then :だから。

⑪let my father's honours live in me:let O 〜:Oに〜させる、Oが〜することを許す。letは命令形。(父の名誉が私の中で生き)ることを許してくれ。 my father's honours:私の父の名誉。honour:名誉。 live in me:私の中で生きる。

⑫Nor:and do not。肯定の節のあとに否定の節をつなげる接続し。wrongしないでくれ、ということ。

⑬Nor wrong mine age :wrong:命令形、〜を不当に扱わないでくれ。mine age:私の歳月を(不当に扱わないでくれ)。私の歳月とは、長男で生まれたということを示している。私は先の皇帝の長男で(弟のバシエイナスよりも)長く生きている、その長く生きたことを不当に扱って、私が皇帝になれないなどということが無いようにしてくれ、という意味。

⑭with this indignity:この侮蔑によって(私の歳月を不当に扱わないでくれ)。侮蔑とは、長男であるサターナイナスが帝位を継承できない可能性があること。

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