雨宿り (お話し)

雨が降って、雨宿り。
いつも休憩するベンチの下に
かわいい猫いっぴき。

「おまえも雨宿りか?」
「おまえとはなんだ。三毛って言う名前があるんだ。」
「ミケくんか。」
「ああ。僕の毛並みを見たまえ。由緒正しい三毛柄だろう?」
「ああ見事な毛並みだ。」
「そうだろう。そうだろう。僕のご先祖さまは立派なんだ。この町内の猫大臣だったんだから。」
「ははあ。猫大臣。」思わず平伏した。
「うむ。しかしね最近は景気が悪くてどうにもいけない。魚の一匹も食べられない。」三毛のお腹はグーッとなった。雨はぽつぽつ降っていた。ポケットの中からビスケットをとりだして、三毛にやった。
「ほほーう。これをくれるのか。ずいぶん気前が良いなあ。」三毛はそう言ってカツカツ、カツカツ、ビスケットを食べた。
「景気が良いんだよ。」財布のなかはすっからかんだった。無精髭を親指でしごいて、そろそろ仕事を見つけにゃならんなと雨の降る風景を眺めた。風もなく穏やかで、雨はやさしく降っていた。

雨の止むまでおしゃべりした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?