《Hamura》

フラスコで沸かしたお湯で
温かい珈琲を淹れていると
君が教室に入ってきた

僕は気が付かない振りをして
足音をさせないように
忍び寄ってくる君を待っていた

どうして
こんな気持ちが芽生えたのだろう
あんなに僕らは傷ついていたのに

まるでチャップリンが演じた
ヒトラーのように
おどけた空気が
二人の間には流れていた

動物園に行ったね
水族館にも連れて行った
ペンギンのはなしを
僕がすると
君はまるで幼い子供のように
無邪気にはしゃいでいた

それからしばらくして
寒い冬がやってきた
バレンタインの夜に
雪が降って
とても冷たい夜を
一緒に過ごしたね

すべては
それでいいと
僕は思っていた

地下のジャズ喫茶で
流れていた旧い曲を
君は父親から聞いたはなしを
僕に自慢げに教えてくれた

僕がした
ペンギンや朝顔のはなしを
君がいつまでも忘れないように
僕だって
あの曲の題名だけは
今でも覚えている

でも、たった一つ
あの曲と違う点があるとしたら
僕らの紡いだ赤い糸は
決して
失敗ではなかったということ

二人の関係は
とても微笑ましくて
温かいものだったんだ・・・・・・

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