《コザイク》

ぺらっぺらの薄っぺらいBB紙を
顔の輪郭に重ねて
上から6Bの鉛筆でなぞると
君に瓜二つの風貌をした青年が
画用紙のなかにあらわれた

それだけでも
ある程度は満たされたのだけど
写真のように見えるだけだから
すこしだけコザイクを施した

唇の形と瞳の色を変えてみると
今にも君は動き出しそうになった
ホントはAIでも埋め込むことができたら
もっと精巧なロボットのように
君は動いたのかもしれない

残念ながら
そこまでの専門知識を持たないまま
僕は大人になってしまった
大学に行けばよかったというのは
多少の語弊を生む

いつも君のそばにいたいという
僕の気持ちは
決して一杯に充たされることのない
コップの水のようなもので
どれだけの経験と技術を駆使しても
辿りつけるものではない
僕には生命を与えることなど
到底できないからだ

君は今もまだ
意味のわからない呪文を唱えながら
僕の帰りを待っている
冷たくなった地面のなかで

この絵が完成する頃には
暖かくなるのだろうか
春が来るのと同じように
穏やかな眠りが僕にも訪れるのか
君に会える日も近くなっていく

死というものがピリオドなのか
僕にはまだわからない
君との新しい生活が始まるなら
なにも怖くないのに

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