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◇特集【肉食と菜食で異なる身体の反応】

食べるということに伴う 好き嫌い の感情や
主義主張は、自分に合った食生活をする上で
災いとなる作用が働きます

 100年前の日本では、男性の平均寿命が43歳、女性が42歳に近いものでした。それは、大正10年頃のことで、食べ物と平均寿命には深い関係があると思う人は、当時の平均的な食生活はどのようなものであったかを知りたいことでしょう。

 人間の命は、食べ物だけで長くなったり、短くなったりすることはないので、天寿を全うするには、そのような見方は改めることが賢明です。

 ひと頃、日本では肉食が良いとされた時期があります。大抵の人は、その気になったと思われるほどの肉食ブームでした。それは、昭和55年(1980年)以降のことでした。子どもたちは、カレーライスに入っている肉が増えたと言って喜んだものです。

 その時期から40年ほど過ぎた現在、肉食を礼賛するのは、肉を食べてもらわないと困る肉食業界の会社や団体です。言っていることは、
・スタミナがついて元気になります
・ダイエットに欠かせない栄養素が含まれています
・肉を摂ったほうが長生きします

 どれも医師の話として言われていることで、嘘、偽りはないものです。しかし、胃腸の弱い人は肉食を続けると、体調を崩す人が出てくることでしょう。右の3つの事は、栄養学に基づく一般論で、食べる人の体質は一人ひとり異なることまで考慮されていません。しかも、一般論の根拠が欧米での研究に基づくものであれば、なお逆の結果になる場合もあります。欧米人と日本人とでは、胃腸の消化器の働き方、吸収能力に違いがあるからです。

 肉食が良いと思う人は、1週間、肉料理を続けて食べてみてください。大抵の人は、身体が不調になるのではないかと思います。不調だけで済めばよいのですが、日本人が肉食をするようになってから胃ガン、腸ガンが6倍から7倍多くなっています。そのことを、どのように受け止めるかです。

 肉食とガン発生の因果関係は、医学的にも説明できにくいことではないかと思います。ガン発生の原因は、食べ物だけにあることではないからですが、昔の人が言った「君子危うきに近寄らず」は至言で、食べ物についても言えることを覚えておきたいものです。

バーベキュー

主義主張による 食べ方に見られる癖

 肉食が好きな人がいる一方、肉は摂らないと決めているベジタリアン(菜食主義者)がいます。自分で決めたことであり、他人がとやかく言うことではありませんが、菜食を主にした食生活をする場合、気をつけたいことがあります。

 野菜なら何でも良いということではなく、清潔で新鮮な物を選びます。新鮮ということでは、農薬栽培の有無も確かめます。野菜料理は、他の料理のように味付けをしなければアッサリし過ぎて、味気なく思うことですが、食べ物の味わいは、口だけで決まるものではなく、眼で見ることも関係します。食器や盛り付け方を疎かにすると、本来美味しいものでも不味く感じてしまうものです。菜食をする人は、そのことも折り込んで続けたいものです。

 それから、野菜は生で味わうか、薄味にして食することが好ましいものですが、冷え性体質の人は、生野菜が良いからということで、続ければ、逆に体調を崩してしまうことになります。それと、初めに主義主張ありきでは、精神的な面で身体を傷つける可能性があるということです。

 食べてみる前に、こうあらねばならない、こうしなければならないということでは、好き嫌いということ以前に、身体によくない影響が出るということです。

 人間の身体(肉体+精神)は、理論や栄養学の通りには行きません。現代では自分の身体の動きをよく知らないまま、栄養学を基準にして食べる、食べないと決めているところがあります。自分の身体が喜んで受け入れる食べ物か、悲しんで拒否しているかという感性を退化させてしまったのかも知れません。

 消化器系の性質からすると、菜食を主にした食生活が肉体的にも精神的にもよさそうですが、それにしても自分で食べてみて、胃腸がどのように働くかを確かめたいことです。

 日本人の体質の特徴に便秘があります。それは、たまたまのことではなく、腸の働きと関係していることです。一度の肉食で便秘になる人もいます。

 便秘のことは、肉眼では見えない腸の働きを自覚するには、よい機会です。心身ともに、それなりに快調さを維持するには、腸の働きを良好にすることが秘訣だと言われるようになりました。

 時に消化のよくない物を食べることがあっても、通常はそうでない物を食べるようにし、分量もできる範囲で少なくし、自分の胃腸を労わるという気遣いをする食生活でありたいものです。

 わが子には、「肉食だからダメ」「菜食だからヨイ」ということではなく、まずは食べさせてみて、自分の身体がどのように反応するか確かめさせることです。身体とは肉体+精神のことであることは言うまでもありません。                         (本誌特集班)

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