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◇連載【明日を創る 日本を創る121】みんなで税金の使い方を考える場づくり

9月号明日を創る(顔写真) のコピー

・前川和治(まえかわ かずはる)氏
敦賀市議会議員。1977年福井県敦賀市生まれ。京都建築大学校卒業後、慶應義塾大学法学部に進学。1998年、中央興産株式会社(大阪)に就職、2年目に最優秀営業マンとして表彰される。2001年、滋賀県長浜市にてソフトクリーム店を起業。2004年、旅行会社に就職。2005年、「市議会議員と話そう!」を主宰。2007年、29歳で敦賀市議会議員選挙に立候補しトップ当選を果たす。現在4期目。2020年マニフェスト大賞受賞。

市議会議員と一人ずつファミレスへ

―― なぜ議員になろうと思ったのですか?
前川 敦賀市にUターン就職して、市内の公園を散歩していた時、電柱のような赤色のオブジェが目に入りました。市役所に問い合わせてみると、2005年の愛・地球博で展示していたものを、敦賀市が観光客を呼び込むために1800万円で購入したものだということが分かりました。

 私達の税金がこんな使われ方をしているのかと愕然とし、市議会議員さんを一人ずつファミレスに呼び出して、「なぜこんな税金の使い方を承認したのか?」と聞きました。すると、皆さん口を揃えて「市長が出してきた提案だから認めた」と答えました。市長に賛成するだけの議員に市の運営を任せておけないと思い、自分が代わりに議員になろうと思いました。

―― 議員は市長に反対しにくいものなのですか?
前川 自治体の予算は、市長が編成し(何にいくら使うかを決めて)、議会に提案します。議会は決定権を持っています。市長が編成した予算案に議会が承認できないと思った場合、議会は、予算の「組み替え動議*1」や「修正案*2」を提出して反対することができます。しかし、敦賀市議会では過去に一度もこれらを提出したことがありませんでした。

―― 前川さんは一期目から、何度もこれを提出して税金の使い方に異を唱えてきたのですよね。
前川 私と、同期で当選した渕上隆信(ふちがみ たかのぶ)さん(現敦賀市長)の二人でタッグを組んで、何回も予算の組み替え動議や修正案を出しましたが、賛同する議員はほとんどいませんでした。その案は議会の過半数を得なければ効力がないので、これでは何も変えられないと思い、「どちらかが市長になるしかない」と考え、渕上さんが2015年に敦賀市長になりました。お蔭で今は、組み替え動議や修正案以上のことができています。

*1…市長側に予算案を作り直して再提出を求めるもの。
*2…議会側が具体的な項目の増額・減額を提案し、新たな予算案として議決にかけるもの。

ふるさと納税は地方活性化の大きな可能性

―― 主催されている「みんなde議会」が、昨年の第15回マニフェスト大賞で優秀コミュニケーション戦略賞を受賞されました。
前川 赤いオブジェに衝撃を受けて、議員さん一人ひとりに話を聞いた後、もっと議員や政治のことを知りたいと思い、「市議会議員と話そう!」という会を立ち上げました。

「みんなde議会」は、その会とほぼ同じことを、今度は私が議員の立場となって開催している会です。ここでは、自分が納めた税金の使い道について話します。参加者のリピーターが多く、他自治体の議員さん達にもたくさん視察されています。

―― 参加者のリピーターが多い秘訣は何ですか?
前川 議会の定例会前に議員に配られた予算書を、即日市民の皆さんに公開して、議会で予算を検討する前に市民の皆さんと一緒に予算を検討しています。よくあるのは、議会が終わった後に、議員さんが市民に向けてその報告をする会ですが、それは予算の使い道が既に決まった後の事後報告です。

「みんなde議会」では、予算の使い道を決める前に市民が意見を出すことができ、その意見を私が市政に反映させています。この形は、皆さんやっていそうで実は誰もやっていなかったようです。

―― 市民の意見によってどんな案が市政に反映されましたか?
前川 大型豪華客船に乗って旅行に行く市民には、市が一人当たり6万円補助するという事業計画に対して、市民から「旅行に行くお金と時間がある人になぜ税金を使うのか」との意見が出ました。これを一般質問で述べ、事業は廃止となりました。

 また、ある芸能人の方に年間約50万円をお支払いして、敦賀市の観光大使をしてもらっていました。しかし、ある高校生の「芸能人に頼まなくても、自分達がPRする」との意見をきっかけに、市民全員参加型の観光大使事業が採択されました。これは、市に認定された市民は「観光大使」を名乗り、SNSなどで自由に敦賀市をPRすることができる制度です。敦賀市には現在600名の観光大使がいます。

―― 地方都市の活性化は全国的な課題ですが、前川さんが描く理想の地方都市はどういう街ですか?
前川 私は子や孫に囲まれて暮らすこと以上の幸せはあまりないと思っています。そのためには、地元に若者が働ける場が必要です。昨年、敦賀市のふるさと納税額は約30億円でした。その内、約15億円は市の税収になり、約10億円は返礼品を取り扱う業者の売り上げになります。ふるさと納税は地方活性化の大きな可能性です。観光業をもっと強くさせることと併せて、地場産業をどんどん伸ばしたいと思っています。

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