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河川堤防と地盤高との関係

河川堤防と地盤高の関係について説明します。地盤高は英語でGround Line(グラウンド・ライン)といい、地盤面の高さのことです。河川堤防で守られている側(堤内)の地盤高によって洪水発生時の影響が異なります。その理由を、用語等を説明しながら考えていきましょう。

河川の地盤改良 攪拌状況

河川や水防に関する用語

計画高水流量:堤防を築くなどの改修工事に際して、計画の基準となる流量。
計画高水位:計画高水流量を安全に流下させる河川の水位。
計画堤防余裕高:波浪や異常出水を予想し、計画高水位に適当な余裕を加えた高さ。流量が大きくなるほど余裕高を大きくとる必要がある。
河道:安全に流水を流下させるための、水の流れる部分。
堤外:堤防から見て、河川の水の流れている側。
堤内:堤防を隔てて堤外の反対側。
低水路:河道のうち水が常時流れている箇所。
高水敷:河道のうち洪水時だけ水が流れる箇所。
漏水:河川の水位が上昇して、堤防や堤防下方から河川の水がにじみ出る・ふき出るなどの状態。
洗掘:堤防の法面や低水路法面が欠けていくこと。
破堤:増水した河川において堤防に越水・洗掘・浸食・漏水などの作用が生じた結果、堤防が破壊されること。
掘込河道:河川のうち一定の区間を平均した結果、堤内の地盤高が計画高水位以上となる箇所。
水制:水や土砂の流れを遮断することで治水や土砂堆積対策に貢献する河川の制御工法物。木やコンクリート・石で作られているのが一般的。

河川堤防と地盤高

洪水時の水防活動等について特に注意が必要な箇所は重要水防箇所とされます。しかし、河道が掘込河道である場合、流下能力によっては重要水防箇所に指定されないことがあります。その理由を考えていきましょう。

掘込河道においては洪水が堤内に越流しても、堤防は決壊しません。また、冠水することはあるものの、河川の水位が低くなったら比較的早く水が引きます。

掘込河道とは逆に、堤内の地盤高が計画高水位より低い場所においてはどうでしょうか。こちらは、洪水が堤防を越えて流れてきた場合、堤内が洗掘され、堤防が決壊する危険があります。豪雨などの際に堤防の天端近くまで水位が上がったら既に危険な状態です。すぐに避難する必要があります。また、掘込河道と比較して冠水が長時間引かない傾向があります。

決壊のリスクは、堤防の天端と堤内の地盤高との高低差に左右されます。高低差が大きければ大きいほどリスクが高いといえます。

中小河川の掘込河道では、計画高水位をもし地盤高より低くしたら、計画の規模を上回る洪水が起こった際、下流の有堤区間の危険を大きくする可能性があります。このため、掘込河道の計画高水位を設定する際は、下流河川への負荷を小さく抑えるために、計画高水位は地盤高と同程度とされています。

河川堤防の構造に関する規定

河川堤防や堰、水門・樋門などの河川管理施設等の構造は、法律や条例で定められている内容を満たしていなければなりません。

河川堤防は、護岸や水制その他の施設と一体で、計画高水位以下の水位の流水による通常の作用に対して安全が確保できる構造が求められます。

河川堤防の材質は盛土が基本的ですが、特別な事情がある場合にはコンクリートや鋼矢板等で築くことが認められています。

堤防の高さや天端幅・法勾配などは条例で定められています。堤防を保護するなどの目的で護岸や水制を築くことができます。また、堤防には河川を管理するための通路を設けることとなっており、その幅員や建築限界についても定められています。

複数の河川が合流する地点の堤防など、波浪の影響を大きく受けることが予測される場合、表法面に護岸または護岸および波返工を築くことや、前面に消波工を築くなどの措置を行います。さらに暴風等でうち寄せた波が堤防を越える恐れがある場合は、天端と裏法面をコンクリート等で覆ったり、裏法尻に沿って排水路を設けたりすることができます。


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