【茶番学概論】第3回ニコ生マザシCチームのディディーコングレーシングが「ああ」なるまで 後編~「ああ」するまで~

ご機嫌麗しゅう皆の衆。

ちょっと魔王軍でストレスため込んでたら気づけば前回投稿から1ヶ月くらい経ってしまった。

というわけで後編です。もうみんな忘却の彼方かもしれないけど、ああこんなことあったなぁくらいに思い出してもらえたら。

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「走者」と「配信者」

さて、記録はまぁなんとかなりそうだ。じゃあ次はニコ生マザーシップタイトルRTAリレー(以下「ニコ生マザシ」)という大会を盛り上げる準備をしなくては。盛り上げるといえば聞こえはいいが、結局のところ、「目立っときたい」という意味でもある。

ニコ生マザシといえば、年に1回開かれる、1万人以上が見るニコ生最大級のRTAリレー企画。それに走者として出させてもらう以上、ただ自分の番を淡々と走って見てもらって終わり、ではもったいない、と「配信者」としての自分は思う。「配信者」である以上、多くの人に見てもらいたいというのは至極自然な感情だと考える。いや、「配信者」に限らず承認欲求なんて誰にでもあるものだ。

RTA配信者は「走者」である人と「配信者」である人に分けられると思う。前者はただ自身の記録を突き詰めていき、かつそれの証拠を残すために配信をしているタイプ。そのため、「多くの人に見てもらいたい」というのは「配信」ではなく「記録」であることが多い。後者は配信そのものに人を呼び込みたいという意図も込めてRTA配信を行うタイプ。配信のコンテンツとして「RTA」を据えているため、「記録」よりも「配信」を見てほしい傾向がある(記録を蔑ろにしていいとかそういう意図はない)。

RTA配信としてのこの2つに優劣はなく、ただただ考え方の違いだと思う。記録が見たい人は前者の配信に行くし、ただ配信を楽しみたい人は後者の配信を見ればいい。自分自身はといえば人と楽しくわいわいやりたいタイプの人間なのでやるにしても見るにしても後者のようなスタイルが好きだ。

なので、ここからは「配信者」としての考え方を書いていきたいと思う。「走者」としての考え方もあるにはあるが、茶番学とかいうわけのわからない看板を持ったままそんな高尚なことは語れない。

「配信者」と「茶番」

さて、「配信者」の考えの基礎は「多くの人に配信を見てもらいたい」である。ニコ生マザシに限った話でもないが、多くの人の目に留まる機会をみすみす逃すのはこういう人種にとってはチャンスを逃すのに他ならない。「多くの人が見る場所から、自分の展開する場所へと人を引き込む」。これが大会で何かをする時、全ての基礎になる。そのためには、周りと同じことだけをしては確実に埋もれる。ゲームプレイの技術、走り方で魅せるのもいいだろう。ただ、大技は失敗するリスクもあれば、周りがもっと速い場合だって往々にしてある。なら、「人が真似できないこと」をしよう。そうやって辿り着いたのが、自分の場合「茶番」だった。念のため記載しておくと、ここでいう茶番とは客のために茶を立てる役とかそういうのではなく、「RTA中、操作の無い暇な場面等に画像や映像や音声等を差し込んで、自他ともに楽しむこと」を指す。

土壌はあった。2017年4月のカービィシリーズ25周年記念リレー。同じチームだった後頭部さんや青色青子さん(当時出場者名)がゲームの進行に合わせて次々面白い茶番を展開していく。それでいてプレイも速い。企画を邪魔することもなく、自分のやりたいこともできている。そしてそれを受け入れてくれる視聴者層、カービィRTA配信の雰囲気は、既に「そういうもの」を受け入れてくれる環境があったのだった。

そんな環境だったからこそ、日常的に「茶番」をすることが楽しかったし、それを受け入れてもらっていた。過去の大会でもそういうことをやってたし、「次はどんな仕掛けが出てくるんだ」と某笑いのニューウェーブみたいな期待もちょっぴり感じたりもしていた。ただ、そちら側ばかりに需要が行ってしまい、「走者」としての自分が不満を感じてたりすることもあるのだがそれはまた別のお話。

あとは大会という特別な場でもいつもやってることをやるだけだった。

大会の特性と茶番の分類

ニコ生のリレー大会は基本的に3チームに分かれて行われることが多い。つまり、最も人の多い本部ミラーでは3つのゲーム画面を同時に見て、音声はその中の1つから聞こえることになる。これは非常に重要である。状況によっては機能しない茶番が出てくるからである。

一括りに「茶番」と言っても形態は様々だ。BGMを差し替えたり、自らの喋りで場を盛り上げる「音声系」、コラ画像のようにゲーム画面に画像を重ねる「画像系」、画像系の発展で動画やgif画像を差し込む「映像系」など多岐にわたる。大会の場では前述のとおり本部ミラーで音声が聞かれる確率は単純に3分の1なため、音声系の茶番は不発に終わることが多い。

そのため、大会においては視覚に訴える画像系や映像系の茶番が有効である。視覚だけでは飽きが発生するため、序盤に視覚で注目を集め、自身の配信に人を呼び込んでから音声系を混ぜ込んでいく手法は非常に有効といえる。

自分の場合は、BGMを軽く差し替えたりSEを差し込む音声系の茶番が多い傾向があるため、実は大会での茶番は苦手だったりする。

実際に作ってみた

大会では視覚に訴えるものが強い、この前提に立っていろいろ作ってみよう。今回のディディーコングレーシングのRTAチャートに沿っていろいろ考える。幸い、ディディーコングレーシングはゾーンによって分かれているため区別して考えやすい。

1.オープニングの風船集め

2.ザウルスゾーン

3.スノーゾーン

4.トロピカルゾーン

5.スノーゾーン2回目

6.トロピカルゾーン2回目

7.ドラゴンゾーン

8.フューチャーゾーン

このように分けられてしまえば、あとはそれぞれにテーマを作ってそれに沿ったものを入れていくだけ。1つ1つ考えていこう。

1.オープニングの風船集め

とにかくオープニングのタージ(通称「米兵」)登場演出が長い。リセゲーの度に「ベイヘーイ」とか聞かされるとどうにかなりそうになる。このオープニングがだいたい1分程度。1分程度動かせない長いもの、日頃自分の配信を見てくれている人はピンときているかもしれない。

画像1

マツケンサンバⅡ(イントロ67秒)である。この区間のラップタイムとマツケンサンバⅡを比較すると、だいたいサビ6~8秒くらい前には抜けられることがわかった。前に少し演出を入れればちょうどサビを抜けられるかどうかくらいのタイミングにはできそうだ。その演出は、サビ開始までにできるかどうかの瀬戸際=時間制限あり、という点ですぐに閃いた。

ミッションにしてしまおう。

記憶に、エヴァのミッションモードがあったため、それを少し加工してやれば、

画像2

こうなる。この時点で、「今回はこういうミッション系を入れていく形にしよう」という方針が固まる。

あとは成功した時と失敗した時のマルチエンドにしておけばよい。マツケンサンバⅡは別に音声だけでいいのだが、前述の「視覚に訴える」ためにPVとしている。昨今権利問題が厳しいので透明度はかなり上げている。たぶんそういう問題ではない。

2.ザウルスゾーン

このあたりからレースゲーム感が出てくる。つまるところ操作が忙しくいろいろ入れる余裕がない。最初は全コース何かしら入れてやろうと思ったがそんなに面白いのができなかった。(例えば「ゆうやけキャニオン」の夕日に「デーモン夕暮(B-RAPハイスクールに出演していたデーモン閣下のパロ)」を出す案があったが驚くほどしっくりこなかった)

まぁ最初だしとりあえずどういうゲームか見せるためにも普通に走ればいいかということで特に仕込みはなし。壁抜けや不正登山バグもあるので十分走りで魅せることも可能だろう。ゲームとしての見せ場に茶番を混ぜてしまうと情報量が多すぎて逆効果になることはままある。

とはいえ、何もしないのももったいないので、不正登山の勝利演出の作成(カリィさんありがとう)とここでしか聞けない米兵のありがたい言葉のセリフとミニゲームステージのキャラ画像はとりあえず差し替えておいた。手元に太夫の画像が5つくらいあったので適当に3つ選別して合わせたら案外しっくり来たので早々に決まった。ミニゲームでの差し込み方も決まった瞬間だった。

3.スノーゾーン

ザウルスゾーンがバグだらけだった一方でここからは淡々と走ることになるため、仕込みが重要になってくる。仕込む上で、「視聴者を巻き込む形にしたい」、「ミラーしか見ていなくても巻き込めるようにしたい」という発想でいろいろ考えた結果、「クイズ大会をしよう」という着想を得る。

どんなクイズにするか考えていたところ、ふと、「スーパー谷繁元信クイズ」を思い出した。正解は全て谷繫元信であるという前振りをした上でクイズを出すというものである。これなら作りやすいしネタも仕込みやすい。

画像3

「スーパーコウメ太夫クイズ」の誕生である。スノーゾーン名物と銘打ったため、2回目もやることが決定した。

問題は基本Wikipediaの情報から考えていたが、真顔でコウメ太夫のWikipediaを見ながらクイズを考えるRTA走者は果たして他にいるのだろうか。本家も最後の回答は谷繁元信ではないため、とりあえずコウメ太夫以外の回答を探した結果、ああなった。画像見た目のインパクト重視だった。好きではある。

4.トロピカルゾーン

超難産ゾーンだった。ほとんどの思考時間をここに充てていた。クイズからの小休止という意味合いもあるため、そこまで大きいものは組み込めない。茶番は緩急が重要である。何もしないというのも考えたが、やはりもったいない。とりあえず南の島ゾーンであることから新宝島でも作るかと考えたが技術が追いつかない。結局何も思い浮かばず、モルフさん(WCS元世界チャンピオンのエーフィ狂の人、レベル1ドーブルといえば分かる人もいるだろうか)に本番直前に無理言ってい新宝島コラを作ってもらった。完成したのが出番20分前。本当にありがとうございました。

5.スノーゾーン2回目

トロフィーレースはゲームとしての見せ場なので通常通り。ミニゲームは1分以上のロスが出る可能性があるため画像差し替えにとどめる。ここまでは決定事項。問題は自分で恒例行事にしたあのクイズ大会。同じ題材はくどいし冷める。何にしようか考えてたら先にボス戦のネタが浮かんできた。

残りのボス戦ミッションにしてしまおう。

ボス戦のタイムは大きくブレないのでオープニングの応用が利く。あとは何かと競う必要があるが残りのゾーンのボスにも流用させたい。と考えた時に出てきたのが、ミスターSASUKEだった。

そういえば2019年のカービィリレーで青色さんがミスターSASUKEでクイズ大会やってたなぁ、あれも今回のコンセプトみたいなやつだしパク・・・リスペクトさせてもらおう、ということで、ボス戦とコースそれぞれがいっぺんに決まったのだった。

ミスターサスケと勝負するならSASUKEで勝負するしかねえということで急いでSASUKEのコースを作って、途中そり立つ壁が出現する演出を思いついた時は俺天才なんじゃないかと自画自賛してた記憶がある。というかそう思わないとやってられない。ギャグマンガ作家ってすごいんだなぁ。

SASUKEといえば古館実況なので、前回古館実況素材を作ってもらった紺空さんに、「あの時の素材ってどこで集めたんですか?」って聞いたら、「『古館実況 スターターパック』で調べたり、SASUKEの動画から必要な部分を録音したりしてました(原文ママ)」との回答が。スターターパック・・・?と半信半疑になりながら検索したらマジであった。早速スターターパックをダウンロードするも、その容量なんと240MB。スタートのハードル高すぎるだろ。欲しい実況音声はだいたいあったけどミスターSASUKE関連はあまり充実していなかったので自分で探しに行ってブースターパックも作った。

6.トロピカルゾーン2回目

思いつかなかったのもあるがここは小休止。ボス戦だけやりたいことは決まっていたので、適当に枠取ってリスナーとああでもないこうでもないと会議しながら作成。古館実況の音量調整一部ミスっていたけど、作りたかったものはしっかりと作れたので一番満足している部分かもしれない。

7.ドラゴンゾーン

ここは乱数次第でボスを倒すタイミングや攻略順が変わるのでパターン化したものは作れない。必然的にクイズ大会のようなコースの茶番は作れない。ミニゲーム側に全力を出すことにした。練習配信をしていると、ちょうど数日前に某ワニが死んでいたので、もう1回死んでもらうことにした。

桜吹雪の素材および最後に吹っ飛ばす映像はまたモルフさんに紹介してもらったり作ってもらったりした。改めて感謝。LINEトーク画像は自分で作ったけどいろんな可能性を感じるツールだった。

ボスはやっぱりミスターSASUKEに登場してもらった。正直そろそろくどいし意図していないとはいえ誹謗中傷とかその辺で怒られるんじゃないかと思って入れるのをギリギリまでためらってたけど、ニコ生マザシ主催のTAKENさんが「主催命令 やれ。」とリプくれたから吹っ切れた。

今回はもともと負けるつもりで作っていて、最後は失格になる、というオチが早々に浮かんでいたので簡単だった。日和って実況をあまり入れられなかったのは心残り。

8.フューチャーゾーン

いよいよラストだ。まずはウィズピッグ1回目。雨がめっちゃ降ってる=ああ、ちくわ降らせとけばいいわ、で5秒で解決した。

宇宙に飛んでいくところは悩んでいたけど「あるらじ」の会議をしているときE.Tの話をしていて思いついた。ミクロンさんいろんな意味でありがとう。操作キャラT.Tじゃんこれ!ってなって、あとはE.Tの画像に合わせてT.Tを入れるだけ。そんな画力はないので、公募をしたらしろうなぎさんが作ってくれた。クオリティ高くてお気に入りの画像。まさか本番であんなことになるとは。

画像4

画像5

いろいろ話した結果2パターン作ってもらった。うめえなあ。

フューチャーゾーンは壁抜け5連発とかあるのでゲーム自体で魅せる方向にシフトした。

問題は最後の最後。

リレー企画は、閉会式で「ED動画」が流されることが多い。大会によっては各走者のハイライトシーンが流れるが、ニコ生マザシクラスに参加者の多い大会の場合は各走者のタイマーストップシーンが流れることが多い。つまり走ってる段階で仕込んでおけば閉会式でもう一華咲かせることが可能なのだ。ここはゴール直前に音声と画像でED動画向けのメッセージを残しておくだけでOKだった。


おわりに

後半は自分の話に終始してしまったが、いかがだっただろうか。「配信者」として自身の配信を盛り上げる一助になれば幸いである。

茶番は基本的には、こういう場面だから、こういう見せ方をしたいから、というコンセプトを決めて、それに当てはまるものを選んでいくことになる。昨今、出すだけで盛り上がる茶番素材が増えていることから、茶番を先に作ってから入る場所を探す手法がかなり多くなっているが、本来はゲーム、RTAがあってそこに乗るものなので、ゲームやRTAに沿った形のものを考えて差し込むのが、茶番の本来あるべき姿であると考える。

適当にコラ画像のようなものを作ってその辺に終始置いておく茶番が一時期流行っていたが、一過性のインパクトしか残せないように感じる。

結局は、「いかにして人を呼び込むか」になるので、タイミングに応じて用法容量を守って正しく使うのが重要なのではないだろうか。

実際に今回やってみてどうだったかは、「おまけ」として当日の感想という形で書く予定。

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