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未来へ続く道 -ひとりぼっちの卒業式-

春の歌 愛と希望より前に響く
聞こえるか?遠い空に映る君にも

「春の歌」by スピッツ

藍くんが日体大を卒業したというニュースを見て、彼もまたひとりぼっちの卒業式を過ごした一人になったなと思っていました。推し活を始めてから、こうしたアスリートたちの一人の卒業式を見てきました。

バレーボール界でいえば、石川祐希さんもそのひとり。

インカレ・インタビューに答える祐希さん


2017年12月、インカレが終わってすぐ彼は日本をたち当時のLatinaというチームに合流しました。怪我の影響もあってコートに立てる時間は長くはありませんでしたが、彼は卒業する前からバレーボールの世界で生きて行くことを決めていたからの選択だったのだと思いました。
彼が迷いもなくその道を選んだことはただただ強くなりたいと願う気持ちからだったのでしょうか?

Latinaでの祐希さん

2024年2月に🇮🇹で祐希さん、藍くんの対決、それぞれの試合をホームもアウェーも見に行きましたが、どこでもふたりはたくさんのファンに囲まれていました。どこでプレーをしても、日本人だけでなく現地の人からも大事にされる選手たちなんだなと再認識しました。最初に私が祐希くんを見に行った時、彼を待っていたのは私と友人だけだったのに。強くなる過程でたくさんの人に愛されるプレイヤーに育ってきたんですよね、きっと。

卒業式という人生の区切りを体感することなく、ひとりイタリアでその瞬間を迎えた彼にとってはその儀式にあまり重い意味はなかったのかもしれません。私もそうですが、普通に大学を卒業する人々はまだ何者になるか分からないまま社会に出て、さまざまな経験をしてもなお、まだ自分が何をすべきなのかが見え出すまで多くの時間を費やすことも多いのですが。

祐希さんも藍くんも大学在学中から自分がバレーボールで生きて行くことを決め、大学から離れ、イタリアでプレーすることを決めて、見るたびに成長した姿を見せてくれる頼もしいアスリートになっています。アスリートに早熟な人が多いのはそういう人生の決断を若い頃から迫られるからかもしれません。

アジア選手権での藍くん

特に藍くんは東京オリンピックの後、秋リーグとインカレで日体大のユニフォームを着て戦って、あっという間にイタリアへ旅立ちました。その後、私たちが彼が日体大のユニフォームを着てコートに立つところは見ることができませんでした。コロナの影響もあって、日体大のユニフォームを着て戦う藍くんの姿を実際に見たのは本当に限られた人だけになりましたね。

それを残念だな、と思うことももちろんありました。
大学生らしい彼をもうちょっと見てみたかったと思うのは私だけではないかもしれません。その大学で過ごす日々と引き換えにイタリアで大きな武器を手にしました。

3シーズン目にしてイタリアリーグでチームの中心として戦う選手としてコートに立ち続けました。その成長のスピードは驚くべきものだったと私は思っています。東京オリンピックで感じた自分に足らないもの、自分がもしそれを持っていたら東京で違った結果を見ることができたかもしれないという思いが彼をイタリアに連れて行き、新しい扉を開くきっかけになったのでしょう

Monzaで戦う藍くん。チームメートと。

彼はいつも大変だったことをさらっと口にしますし、私たちがその話を聞くときは基本的に乗り越えた後で、笑顔で語られることも多くて、壁の乗り越え方を知ってるんだろうなと頼もしく感じます。

はじめて”髙橋藍”という選手を意識したのは高校生で春高を戦う彼でした。あっという間に駆け上がってきたという印象でしたが、彼が大学を卒業するということはそこから4年という月日が流れたということなんですよね。
時間が進むのが早すぎて、本当に驚くばかりです。

ひとりぼっちの卒業式は少し寂しい感じもしますが、彼にとってはもうそこは過去で、未来へ続く道を歩き始めているのでしょう。まっすぐと夢を形にする道を。

Monzaにて

それでも、やっぱり、卒業おめでとう。
18歳の新星として龍神NIPPONに現れた新人はもうチームの中核選手です。それを手に入れるための道のりをまるでお茶の間最前列でテレビドラマを見てるような感覚で見れたことはとってもエキサイティングでした。

普通のキャンパスライフではなかったかもしれないですが、「日体大の高橋藍」としてさまざまなキャリアを積んできたこともまた事実です。これからは「プロバレーボーラーの髙橋藍」を見せてくれるのでしょう。それもまた楽しみです。

仲間が、友達が、歌う卒業ソングやその思いが遠い空の下にいる君にもきっと届くはず。

「さよなら」は別れの言葉じゃなくて、再び会うまでの約束。

「セーラー服と機関銃」by 薬師丸ひろ子

Another Storyでキャンパスライフを堪能するランタカハシの物語も見てみたいな、とも思わなくないですが。卒業シーズンに私が毎年、聴く曲。藍くんのことを思い浮かべて、今年はちょっと違う音色で聞こえてきました。



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