Turn it into love 〜愛が止まらない〜

街の輪郭が ぶどう色に変わる前に あなたに本気を移したい


「なぜ、誘ったの?」という言葉を飲み込んだ。
夕方のハイウェイを海に向かって走るキミの横顔をもう少し見ていたかったから。
孝太郎のiPodから聞こえてくる曲は切ない曲ばかりだ。
目を閉じたら無条件で泣けてきそうなそんな曲。

「晶子、もうだめかもしれない」
「え?」
「アイツ、俺以外にだれかいるみたいなんだ」
「そうなの?」

ズルい、と言えない言葉を頭の中で繰り返す。
こいつはいつもそうだ。
私の淡い恋心に気づいてか、気付かずか、こうして恋の悩みばかり相談してくる。
今度は、浮気。
だから、言ったのに、彼女はやめておけと。

「だから言ったじゃない、あの子でいいの?って」
「そうだったな」

心の声が叫ぶ。
だから、私を選んでって。
私なら孝太郎を泣かせたりしない。
寂しい思いもさせない。

こんな風に突然、さらわれても、そばにいるのに。

苦しそうな顔を見ながら、私はドキドキしていた。
今度こそ、今度こそ、私を見てくれるかと。

鈍いオレンジ色の空は夜の帳に飲み込まれぶどう色に変わっていく。
サイドブレーキを止めた手に私はそっと自分の手を重ねた。

「私じゃダメなの?」

驚いて、私の顔を見た孝太郎の瞳に私が映る。
このまま本気が移ればいいのにと願いながら、瞳を閉じた。

Turn it into love 愛が止まらない - Wink

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