目を開けてみる夢 -プロローグに参戦 4-

シニアに上りたての頃、体力がなくてフリープログラムを滑り切るのが厳しかった彼の姿はもうそこにはありませんでした。
次々とプログラムを一人でこなす姿を見ながら、正直なところ、体力は大丈夫?と思ったのも事実ですが、この日のために準備してきたと本人が言うくらいに後半になってもそのらしさが消えない滑りを見せてくれました。

「今が一番上手い」と言う彼の言葉に納得したりもしていました。
最近の演技はうまいと言うより神々しい。
何かに捧げるかのような舞のようなものなんじゃないかと思うようにもなっています。

「いつか終わる夢」にはそんな儚さと、柔らかさと、温もりとそして静かに迎える最後の時間が織り込まれてるように思えましたし、最後に全てを浄化したのは「春よこい」だったと、自分の中では思っています。

このアイスショーで何をやりたかったかは彼自身が言葉で語っているので、そっか、そう言う気持ちだったのね、と受け止めましたが。
私にとっては今までの彼との時間を振り返り、区切りをつけ、新しい羽生結弦に出会うための準備の時間だったんだなと。
ゆっくりとそれを考える贅沢な時間を最高の演技と共にプレゼントしてくれたのかと思った時に、もう、涙を止める術を思いつきませんでした。

10年に及ぶジェットコースターのような日々。
羽生結弦を知らない人生でなくて良かったと心から彼の演技を見ながら思っていました。彼がいたから出会えた人たち、彼がいたから知ることのできた世界、全てが私の宝物です。

大袈裟でしょう。
でもね、彼の存在が私にもたらしたのは「大袈裟」な言葉でも語り尽くせないくらいのものでした。

キラキラした真っ直ぐな目をして、「先輩、負けないっすよ」とにっこりと笑った青年が欲しいものをほぼ手にし、次の物語を紡いでいくことが嬉しくもあり、寂しくもあったので、「パリの散歩道」を見ながら、この時間が終わってほしくないな、もう少し浸っていたいと感じていました。

ただ、もう、ありがとうでした。
羽生結弦に出会えた人生にしてくれてありがとう。
こんなにも応援してくれる人を大事にしているアスリートに出会えた奇跡に感謝しかありません。

次に会う彼はまた新しい違う表情を見せてくれるのでしょうね。
そういう夢を見せてくれるところはきっと変わらずそのままなんだと思ってます。

また、斜め上すぎて驚くことも想定の範囲内。

そしてこの瞬間に立ち合わせてくれたくじ運にも感謝して、この一連の感想を締めくくろうと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。


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