![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119371794/rectangle_large_type_2_0446aabe52228efb8f64c330bef7e8c0.jpg?width=800)
【リバプール徹底解剖】期待値爆増"サラーゾーン"の活用について
*選手の詳細な説明を省略しています。
モハメド・サラーは加入初年度から毎シーズン圧巻のパフォーマンスを維持し続けている。怪我による離脱がほとんどなく、稼働率と得点への貢献は異常なほどに高い。フィルミーノとマネがいなくなり、新戦力が入ってきても変わらずチームの得点に貢献し続けているのだから文句の付け所がない。
最重要エリア”サラーゾーン”
サラーは4-3-3の右WGとしてプレーしており、本人も自身はWGの選手であると語っていたが、能力的には純粋なWGとは言い難い。確かにフィジカル能力を活かした推進力がサラーの魅力の1つだが、右サイドラインに張った状態で違いを生み出すことはあまり多くない。むしろ、ゴールの近くでボールを持った時に彼の創造性が最大限発揮される。相手守備者が後手の対応を迫られる状況であれば、サラーはドリブル突破、ラストパス、シュートの中から最善手を選択し、個の力で得点を生み出すことができる。
サラーはWGとしての能力を持ち合わせながら、WGに求められるよりも遥かに多くの得点関与ができる点で稀有な存在である。サラーが個の力で違いを生み出し、得点の期待値が跳ね上がるエリアを「サラーゾーン」と命名し、リバプールにおけるサラーゾーンの活用法について考察する。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117055381/picture_pc_3bf757ebdd00ee54913729c8b885de55.png?width=800)
サラーゾーンの範囲を明確化することは難しいが、サイドラインではなく、ペナルティエリアの角よりも内側のエリアでサラーをプレーさせることが重要であることは間違いない。
しかし、4-3-3の基本陣形では両WGが基本的にサイドで幅を取る必要がある。右WGがサイドで幅を取るため、サラーはサラーゾーンから離れてしまう。そこでリバプールが採用したのが両SBの積極的な攻撃参加である。右SBのトレント・アレクサンダー=アーノルドを攻撃時に右サイドの高い位置に押し上げることで、サラーは立ち位置を中に移すことが可能となった。両SBの攻撃参加には偽9番としてバランスの取れるフィルミーノの貢献が必要ではあったが、サラーゾーンの活用には最適であった。
アシスト性能の高い両SBがサイドで幅を取り、3FWがゴール近くに立ち位置を取ることで、サラーはサラーゾーンでより多くの選択肢の中から最適な判断をすることができた。この両SB+3FWの実質的な5トップはリバプールに数多の得点をもたらした。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117055969/picture_pc_03dda779c5f07dbd28b1eda9eab98483.png?width=800)
新システム3-2-2-3による変化
4-3-3による超攻撃的5トップはリバプールに栄光をもたらしたが、主力の高齢化やリバプール対策の浸透、リーグレベルの向上などの様々な要因によって少しずつ低迷していった。18-19シーズンあたりでは積極的にサイドを駆け上がったアーノルドも、チーム状況の変化も相まって次第に幅を取らなくなった。主力CBが軒並み離脱した20-21からは顕著に立ち位置を内側に移すことが多くなった。その結果、5トップで導き出したサラーゾーンの活用法に対して、新たなアプローチをする必要が出てきた。
4-3-3の低迷を受けて、22-23シーズン後半から採用され始めた新システムはサラーゾーンの運用に大きな影響を与えた。「トレンチシステム」とも呼ばれる3-2-2-3の可変システムは、ボール保持時に右SBのアーノルドがMF(ボランチ)の位置に入る。中央に多くの選手を配置する陣形によって、サイドで幅を取ることのできる選手がWGに限定されてしまった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117056250/picture_pc_d6eb613421bb6f7d5e45fa7fe3eec9ff.png?width=800)
3-2-2-3の可変システムはアーノルドの守備力の低さがもたらすリスクを軽減しつつ、彼の卓越した展開能力を活かすためものである。これによって、22-23シーズンは大躍進を遂げることができたが、その一方でサラーゾーンの活用が構造的に難しくなってしまった。
サラーゾーンでプレーさせるためにサラーを内側に配置してしまうと、右サイドで幅を取る選手がいなくなり、パスコースがなくなってしまう。しかし、サラーに幅を取らせることを重視しすぎると、サラーゾーンでのプレーが困難になる。3-2-2-3は攻守のバランスを改善した一方で、サラーの能力を最大限引き出すことが難しくなるというジレンマを抱えている。
それでも、流石と言うべきかサラーは3-2-2-3が主軸となった23-24シーズンでも以前と変わらず得点に関与し続けている。
![](https://assets.st-note.com/img/1696821009689-pFBU9glBs9.png?width=800)
サラーは23-24シーズンの開幕から6戦連続で得点に関与した。(7節でもディアスのゴールをアシストしたが、審判の情報共有に不備があり認められなかった)。ゴールはセットプレー(PK含む)が中心だが、アシストはペナ角よりも内側から生まれたものが多い。ゴール近くでのプレーが得点に繋がりやすいため当然ともいえるが、得点にならなかった場面でもサラーゾーンから数々の決定機を創出している。今季のデータを見ても、サラーゾーンの活用がリバプールの得点力の核であることに疑いの余地はない。
23-24シーズンの注目ポイント
新システム3-2-2-3の導入によって、サラーゾーンの活用は難しくなったが、今季加入した新戦力を中心にその問題を解決できる可能性がある。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?