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なぜカーティス・ジョーンズに期待できないのか〜プレスにおける判断の重要性〜


リバプール出身で、リバプールのアカデミーで育ち、リバプールのトップチームで現在活躍しているカーティス・ジョーンズ。2001年1月生まれの彼は、リバプールの将来を担うべき重要な存在である。

今季(22-23)の前半はエリオットやバイチェティッチの台頭もあって、カーティスの出場機会はほとんどなかった。しかし、シーズン終盤に採用されているアーノルドを偽SBとしてプレーさせる3-2-2-3の新システムではIHとして継続して先発起用されている。そして、アシストや得点によって結果を残している。

それでも、現時点でのカーティスに期待をすることは非常に難しい。今回は私がそう考える理由について、リバプールの核であるプレスを中心に考察してみる。

①無闇矢鱈なプレスの危険性

カーティスのプレーを観察すると、彼が勢いよくプレスにいく場面がしばしば見られる。それはまるでハイプレスによって成功を収めてきたリバプールを象徴しているようにも見える。

「流石リバプール育ち」

「これこそクロップリバプールの哲学」

一見すると、カーティスのプレーをこのようにポジティブに捉えてしまう。

しかし、プレスの主な目的は相手の攻撃の制限である。ハイプレスをしかけるということは、背後のスペースを相手に与えるというリスクを負う必要があることを意味している。そのため、リターン>リスクという結果を得るために、どこに相手を誘導し、どこでボールを回収するのかを明確化することが求められる。

ハイプレスのリスクとリターンを考えた時、カーティスのプレーは軽率な場合が少なくない。IHとしての持ち場を離れてプレスにいくだけでなく、味方の立ち位置が良くない状況でも頻繁に単騎突撃をしかけてしまう。それでも、誰かがプレスにいったのであれば、周囲は連動せざるをえない。その結果、対応が後手に回り、プレス回避から相手に決定機を作られてしまうのである。

②プレスにおけるポジショニングの重要性

リバプールのハイプレスの方向性は大きく分けて2つある。

①中から外に相手を誘導し、攻撃を制限する。
②外から中に入ったボールを奪い、ショートカウンターを狙う。

簡単に言えば①は守るためのもので②は攻めるためのものである。そして、①と②は密接に結びついており、IHはどちらにも対応できるようなポジションをとる必要がある。①では中から外にスライドしてボールホルダーに対して素早く圧力をかける。②では相手のパスコースを消しながら的確に距離を詰める。非常に難易度の高いタスクではあるが、IHの能力によって試合展開は大きく変わってしまうのである。

とにもかくにもポジショニングが重要である。
FWの動きに連動できるだけでなく、DFのサポートもすぐに行える位置をとり続ける必要がある。そのためには、IHとしての持ち場を離れず、中を締めることが基本となってくる。

だからこそ、カーティスの猪突猛進なプレスはリスク過多になりやすい。相手からすれば、カーティスが空けたスペースを活用することで容易にプレス回避できる。仮にカーティスが持ち場を離れてまでプレスにいかないといけないような状況が頻発しているのであれば、それはチーム全体の問題であり、カーティスが自身の役割を放棄してまでするべきではない。


③失われるトランジションでの優位性

フットボールにおいて味方の位置と距離感が重要であることは言うまでもない。適切な位置と距離感を保つことができれば、”何かがあった時"に相手よりも上手に対応できる可能性が高まる。つまり、攻撃と守備の局面が入れ替わるトランジションで優位に立つには味方との距離感を意識する必要がある。

4-3-3であれ、3-2-2-3であれ、その原則は変わらない。FWの選手はCBの位置には来ないし、そしてその逆も然り。

果たして、カーティスの執拗なプレス(軽率なプレス)は理にかなっていると言えるのだろうか。FWが監視するべき選手に対してIHのカーティスがプレスにいくべきなのか。右サイドにまで、左IHのカーティスがプレスにいくべきなのか。例外はあるにしろ、あくまでも基本に則るとカーティスの判断は正しくないことが多々ある。

即興性が増せば増すほど、歪みが生じやすくなり、味方の負担にも繋がる。スペースが広大化すれば、その分対応が難しくなり、イエローカード(レッドカード)のリスクも高まる。そうなれば強度の高いプレスを選択することは困難になり、試合展開に悪影響を及ぼしてしまう。カーティスはそのことを踏まえた上で今後プレーする必要があるだろう。

④おわりに

カーティスに対する否定的な意見を綴ったが、彼に可能性がないとは全く思っていない。少しずつ保持の局面での積極的な関与が見られるようになってきたことは評価に値する。

それでも、リバプールを担うべき存在であるかどうかという基準で考えた時、現時点でのカーティスは物足りない。プレスを中心としたプレー選択の質と判断の速度の向上を期待したい。

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