フォートナイト/初陣

記憶が、無い。
私はこの地に降り立ってから一切の記憶がなくなってしまっている。何故かはわからない。
どうしてだ。一体・・・
否、考えている暇は無いに等しい。脳内に埋め込まれている一つの意識。「他者を退け、生き残れ」と。
「おい・・・おい、どうした。時間だぞ。準備を怠るなよ」金髪の男が話しかけてくる。
そうだ。そうだった。私は今、戦場へと向かう特別なバスに乗っている。普通のバスに気球を取り付け改造したみんなが言うバトルバスに。
ポケットから地図を取り出す。島の全体像が描かれている。
行路を確認し、だいたいの目安を決める。
「じゃあ、俺は先に行く。頑張れよ!・・・ジョーンズだ!戻ってきたらお前の名前を教えてくれよ!」
私は彼を追いかけようとしたが、待つことにした。
このバスから飛び降り、戦場に足を踏み入れれば、その瞬間に全員が「敵」になってしまうのだから。
だが、空を征くのは慣れている。何故かこれだけは覚えている。走り、眩い光の中、雲を突っ切り降下していく。
頬に冷たい風が走り抜けていく。
ここから、戦いが始まるのだ。

「いやぁ、こっぴどくやられちまったなぁ」ジョーンズと名乗った男が私の背中を叩く。
着地に成功し、武器を調達。町に向かおうとしたが、急襲に会い倒されてしまった。
島での戦いが終わると、戦っていた者は、倒された者も怪我が治り元通りになる。
そこから、それぞれの拠点「バトルロイヤルロビー」という個人スペースに戻ることになるのだが、先ほどやられた悔しさはある。しかし相手の動きからも学ぶ所があると思い話しかけようとしたが、「下手くそが調子に乗んな」不良のような捨て台詞を吐いて行ってしまった。ジョーンズは、「気にするなよ。あんなのいくらでもいるおめでたい連中だ」と言ってくれた。
そんな人もいるのかと不思議な感情に浸っていると、目の前を女性が通り過ぎて行った。見覚えのある。あれは、誰かに似ていた。誰だっただろうか?・・・思い出せない。

まぁ、とにかく最初はそんなものだ、とジョーンズは慰めてくれた。これも何かの縁だと言わんばかりにファストフード店に2人で向かった。

適当に選んだ料理が来る間、少し外で待っていたら、ガスマスクを付けたスーツの人物に話しかけられた。
「君が新しい戦士かい。ようこそ、この島へ。こちらは目立たないように情報収集に注力する。君たちは存分に戦ってくれ」
そう言って去って行った。
戻ってきたら料理が並んでいて、それを食べながらジョーンズに先ほどの不可思議な人物に心当たりがないか聞いてみると知らないらしく・・・
あの人物は、何者なんだ。
謎だらけの世界に、また一つ謎が増えていて、私はこの世界に興味が湧いてきた。

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