MAD MAID WARRIORS/打ち解ける

「アイリーンと、お呼びしてもよろしいでしょうか?気に入ってしまいましたので」
「いいですよ」
この人は、委ねられる。信じられると思いました。
でなきゃ、こんなに綺麗な眼をしていませんから。
少なくとも、私はそう思います。
でも、それを伝えても変な子だと思われないか。
いや、大丈夫だと思います。なので
「あの、言いたいのですが」
「なんですの?」
「私、ケイリィさんともっと一緒にいたいです。こんなにわかってくれて、寄り添ってくれますし、私を・・・受け入れてくれた人ですから」
い、言っちゃった・・・
それでもケイリィさんは表情を変えることなく、
「奇遇ですわね。私もご一緒させて頂きたいと思っていた所ですのよ。素直で可愛くて従順な娘は好みですわ。それに、教え甲斐がありますもの」
そう言いながら私の隣に座ります。いい匂いが凄いです。
「アイリーンなら、私の事を理解してくださると勝手ながら感じましたわ」
「はい。よかったら、これから先もずっと、何十年も過ごしていたいです」
「それは嬉しいお言葉ですわ・・・永遠に朽ちない身体ですもの」
「?」
「なんでもありませんわ」
今、気になる言葉が聞こえたような気がしますが・・・
「?・・・それで、話しってなんですか?」
「私の生い立ちには興味がおありでしょうか」
「過去・・・知りたいです」
素直に言ったつもりですが、ケイリィさんは曇った顔をして
「あまりいい話ではありませんわ・・・それでもいいと言うなら、多少の覚悟はしておいてくださいませ」
ケイリィさんは言いました。私が裏切る人間とは思えず、この場所で天命に気付く予感がするから私の光が失われる前に「預言者」が言う最も魂が共鳴した者に託す、と。
何のことかはわからない箇所もありましたが、私はこの人が嘘を言うようにはどうしても見えませんでした。
語られるのは物語の中のような不思議な話で、実感がわかりません。現実の事なのか不安になりますが、ケイリィさんが真剣に打ち明けてくれているのに悪いので、私は理解しようと頑張ります。

「私は、優秀な科学者の娘でした。両親は優しく慎ましく私を育ててくださり不自由のない生活をしていました。
ですが、研究所が放火され父の研究結果と貴重な資料、多くの財産が失われました。
放火した犯人は勝手な逆恨みの果てに罪を犯したようです。
そこから、私は父を失い、母は奴隷として海外に売られました。私は犯人に「お前の親父が残したもんだ」と薬を飲まされました。
そこから、歳を取らなくなりました。
期せずして得てしまった不老の性質上、政府の極秘機関による多くの人体実験を耐えてきました。
その間に故郷と家族と愛する人がすべて消えていました。
私は死ぬことは無くなりました。望まない形で。
誰かに殺されないかと思いましたが、皆私だけを残して死んでいってしまうのです。
ここでは、今だけはそれを忘れさせてください。
父の研究は、苦しむ人々を助けたい。生きられない人に希望を与えたい。そう言っていましたから。
自殺はできません。怖いんです。自分自身にナイフを向けても、刺せなかったんです。
怖くて、怖くて・・・そうしていたら、知っている人が、好きな人が、全員死んでいました」
「・・・・・・」
何も、言えません。想像できない事ばかりです。
「昔、あなたに似た女の子がいました。その娘は嫌がらせのために公開処刑されました。私は思ったんです。
この国は、駄目だなと」
「・・・ケイリィさん?」
「だから私は、ケリーウェスト様にお仕えすることになったのです。純粋な正義の心を持つ方に」
この人は、耐えられないような、辛いなんて言葉では表し切れない過去がありました。
本当に・・・だから、私は決めました。
「決めました。一緒にいて、忘れられるならずっと側にいます。何があってもです」
「ありがとうございます・・・救われてしまいましたね」
ケイリィさんの身体に顔を埋めて、夜中まで離れませんでした。

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