MAD MAID WARRIORS/すべてを終わらせるための

今は好きな音楽を聴きながら心地よく寝ている。
木漏れ日が差し込む暖かいベッドで。
妹が私に手を添えて・・・

目を覚ました。私は戦場にいる。あの曲が流れる中で、兵士たちが肉弾戦を繰り広げている。敵兵を拳で、スコップで殴りつけている。
私はなにをすればいいのか。私は・・・

畑に囲まれた小さな家に私は生まれた。優しい母に育てられ成長してきた。父は軍人なので会える機会は少ない。
私はあまり不自由なく過ごしていた。裕福な暮らしでは無いが、幸せに満ちていた。
だが、ある日軍の偉い人かなにかだろうか。彼は優秀な兵士の娘を見定めに来たと言う。母は「悪い影響を及ぼさないように」と言い友人との待ち合わせに向かった。
その人物は、極秘裏に研究を進めている事案がありその成果を試したいという。不安が大きく断ろうとしたが、悪影響はでないと保証すると何度も言われ根負けする形で一時的に従った。暑い夏の昼下がりだった。

やってきた軍人は、異界からの使者と言い張る。強力な魔術で私に吸血鬼の遺伝子を定着させる事ができると。
それに意味があるのだろうかと私は尋ねた。「あぁあるよ。君が戦いに身を投じ、ご家族を守れる」
私には考えがあった。
軍人とは危険と隣り合わせ。いつ死んでしまうかわからない。父はそんな仕事を続けている。父がいなくなってしまうのがとても怖かった。命を落とすとしたら、必ず私も側にいたい。母に言ったときは強かな娘に育って嬉しいと言ってもらえた。
その意思を汲み取ったというのか。彼は。
異界やら吸血鬼やらとは物語上の存在だと思っていたが、彼を見ると納得がいく。今は信じさせてもらおう。

「いい答えだ」私がやると言ったら彼は大きく頷いた。
母は別れを悲しんだが、快く送り出してくれた。
「辛くなったら帰っておいで。いつでも待っているよ」餞別に母が付けている首飾りを貰った。
「話は済んだかい?では行こうか」
軍人に連れられ生まれ育った地を離れる。寂しさと同時に、家族を守りに行ける不思議な高揚感も確かにあった。

1914年8月3日。
この日を境に私の運命は変わった。
祖国と故郷は隣国に宣戦布告された。
だから私は、違う色の服を着た見ず知らずの人を殺す日常を選んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?