サンタの靴下

この時期になると、思い出すものがある。
皆さんは、サンタの靴下に入ったプレゼントを貰ったことはあるだろうか?
あの大きくて、赤くて、安そうな化学繊維の別珍のような生地で作られたアレである。
私は、かつて一度だけ、それを手にしたことを覚えている。

アレは3歳くらいの時だろうか?
もう四半世紀も前のことになるので、記憶が定かではないが、亡くなった父方の祖父からそれを受け取った。
祖父は、父の家系にしてはとても良くできた人で、酒も飲まなければ、タバコも吸わず、賭け事だって一切しない人であった。他人に対しても、非常に優しく心配りのできる人で、少し垂れ下がった眉をしていて優しそうに笑う人だった。

そんな祖父が、私も物心ついて来たと思ったのか、用意してくれたのが、この例の靴下である。
中には何が入っていたのか、覚えてはいないが、きっとお菓子か何某か入っていたのだろう。

私の優しさの原点は間違いなく、この祖父である。私が暴れて駄々をこねた時も粗相をして泣きじゃくった時も、時には子供ながらに暴言じみた言葉を言うことだって有ったろう。それでもこの好々爺は初孫ということもあったろうが、私へ無償の愛を注いでくれた。この経験が今の私の土台になっている事は紛れもない事実だ。

そんな祖父も唯一と言っての弱点は、学がなかったことだろうか。まあ、昭和の初期に生まれて、かの大戦の大禍の中で勉学に励めなかったから、当然の事実ではある。それでも、技師として腕一本で家族を支えて来たのは、孫としても誇らしいことだ。そんな祖父だが、どうやら私の名前を決める際に漢字をしくじったらしく、次に生まれた弟には、人生知恵と知識が全てと、”知”の字を当てた。

どうやら、私のユーモアの原点もこの祖父のようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?