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Moanin’

最近、知って自分の節穴ぶりを改めて痛感したのだが、僕は今までこの曲の綴りを”Mornin’”だとばかり思っていた。

今になって思えば、同じ朝という単語がつく名曲、”Softly as the morning sun”と比べるとどこか重苦しい曲と思っていた。なんなら、朝がやってくる気だるさと、1日の始まりに対する漠然とした期待を表現した曲くらいに考えて、友達からジャズのおすすめを聞かれた際には鼻高々と、まずは”mornin’”聴いとけよ、と答えていた。

一体、それではMoanin’とは一体どういう意味か。 
これは呻くという意味のMoanの現在進行形である。唸る、嘆く、愚痴る、不平を言うその他にも多彩な使い方ができる。
Art Blakeyのジャズマンとしての歩みを表すにふさわしい言葉で、この人の代名詞とも言える
曲がこの曲であるのは、きっとこの人の人生が滲み出ているからだと思わずにいられない。

元々、彼はピアノマンだった。
ある日、元締めのギャングの連れてきたピアノマンの演奏が彼よりもうまく、それに怒りを覚え、下手くそは太鼓でも叩いてろと言われたのがドラマーになったきっかけだ。
ただ、彼はそこでへこたれはしなかった、友人のDizzyが彼を支えてドラムの練習に付き合ったと言う。

きっと彼は、ピアノマンを諦めてドラマーに転身したときに、Moanしたに違い。そこには彼の怒りも、不平も、不安も、やってやると歯を食いしばる思いも含んだ呻き、人生の重みが詰まったビート。だから名演ではなく名盤なのだ。ジャズに名曲はない?笑わせなさんな。
彼のドラムを聴いたら、そんなことは言えないよ。

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