フリーランス薬剤師レポート3 ~フリーランス薬剤師の仲間たち~

はじめに


目に留めていただきありがとうございます。おおくぼみおです。前回のフリーランス薬剤師レポート2ではフリーランス薬剤師として実際どのように運用してきたかお伝えしました。興味を持って読んでくださった方から多くの声をいただき大変嬉しく思います。予想以上に反響がありましたので、続編として今回はフリーランス薬剤師仲間を紹介したいと思います。


はじめに
おおくぼの場合
Iさんの場合
Sさんの場合
Kさんの場合
これからフリーランス薬剤師をしたいと思っている薬剤師の皆様へ
これからフリーランス薬剤師を活用したいと思っている薬局様へ
おわりに


【おおくぼの場合】


まず私のフリーランス薬剤師の経歴についてまとめたものが以下になります


おおくぼ(30代・女性)
事業形態:法人(合同会社)
フリーランス薬剤師歴:約2年(2018.4~2020.2)
フリーランス薬剤師と並行して行っていた活動:オリジナル薬膳茶の販売、薬膳講師
現在の活動:漢方薬局の経営(保険調剤なし)、フリーランス薬剤師普及活動
職歴:北里大学薬学部卒、病院、調剤薬局(OTC併設)、漢方薬局、調剤薬局(新規店舗立上げ)、起業
フリーランス薬剤師を始めたきっかけ:
自由で身軽な人生を送る方法を模索するため起業してしまい、フリーランス薬剤師に行き着きました。雇われず自由に生きたいけど、困っている薬局はたくさんあって助けたい、それが自社の利益になれば会社は存続し自由に生き続けることができる。また、薬局経営も視野に資金を貯めたい、派遣だと個人の所得になるけど会社の利益になる方法はないか、派遣より柔軟に、コスパよくできる方法はないか?などと考え業務委託を始めました。
時給単価:3000~4500円(税別)
月売上:60~70万

フリーランス薬剤師エピソード:
1週間のうち、毎日違う薬局(6つの薬局)に行ったり、1日で2つの薬局をはしごしたりしました。今思うと働き者だったなと思います(笑)
会社の人には話しにくく、しかも家族や友達には理解してもらいにくい現場の悩みなど相談されたりしました。(もちろん他言しません)内情を知っている第三者的な立場というのは珍しいのかも。
色々な薬局の良いとこ取りができます。薬局経営の準備をしながらヘルプに入っていたので、取引先の社長に教えてもらったり器具や機械を色々使わせてもらって吟味できました。薬局の改装費用が予定よりかかってしまい、資金調達のためにフリーランス薬剤師を延期しました。それまでは仕事をもらえて当たり前のような状況が続いていたのですが、お金に困ったおかげで仕事をもらえるってありがたいなと初心に帰ることができました。延長したにもかかわらず取引先も喜んでいただけてよかったです。


お伝えしたいことなど:
会社員だったら不測の事態でスケジュールがずれ込んでも退職時期を変更するのは難しいと思うので開局したい方などはおすすめの働き方かと思います。


次はいよいよフリーランス薬剤師仲間を紹介します。


【Iさんの場合】


まずはIさんです。全国を股にかけるベテランフリーランス薬剤師と言っても過言ではありません。Iさんは私がフリーランス薬剤師をしていて初めて知り合った同業者です。私が2018年4月から薬剤師の業務委託を始めて約3か月、仕事も軌道に乗り落ち着いてきた頃、自分ってもしかしてフリーランス薬剤師なのでは?と思いPC検索しました。そしたらIさんのサイトが出てきたので登録してみました。夜遅かったにもかかわらず、当日中に返信が来ました(この日岩手県花巻でヘルプの帰り途中だったそうです)。その後交流会でお会いし、Sさんを紹介してくれました。


Iさん(50代・男性)
事業形態:法人(株式会社)
フリーランス薬剤師歴:約8年(2012年~現在)
フリーランス薬剤師と並行して行っていた活動:3年くらい前までは、薬学生、薬剤師向けのイベント、交流会などを主催していましたが、今はメインでフリーランス薬剤師をしています。
職歴:城西大学薬学部卒、外資系製薬会社、品質管理、調剤薬局(3社)

フリーランス薬剤師を始めたきっかけ:
3社目の調剤薬局で、できることは何でも引き受けていたら、通勤が車で1時間以上、365日9時~24時の店舗の薬局長になってしまいました。ほぼ毎日、夜勤に入っていたため、帰宅は午前1時過ぎ、次の日は朝から出勤することも…。体力の限界を感じ、このままでは事故または病気で死ぬのでは?と思ったのと、忙しさで家族ともスタッフとも患者さんともゆっくり時間を取れていないなと感じ、薬学生、薬剤師向けのイベントをやりながら、バイトで薬剤師をやろうと思ったのが最初です。はじめは、パートや派遣薬剤師としても働いていましたが、紹介料などの中間マージンを取られるのは、もったいない(笑)という考えから直接、契約するようになりました。
時給単価:4000円(5時間未満の場合は、5000円)
月売上:フリーランス薬剤師事業 50万円~

フリーランス薬剤師エピソード:
1週間単位で、いろいろな薬局のお手伝いに行かせていただいたのは、思い出に残っています。秋田、岩手、大阪、滋賀、三重、宮崎、北九州などに行きました。静岡県の浜松に1ヶ月単位で来てほしいと依頼があったのですが、他の仕事の関係で行けなかったのは、とても残念な思い出です…。
それと、知り合いに頼まれて行った薬局のお手伝いでしたが、大学の大先輩が薬剤師さんで奥さまが事務をやっていてという薬局だったのですが、急にご主人が亡くなって、何度かお手伝いに行っていたのですが、薬局をやめることになったということになり…、薬局最後の日にお手伝いに行かせていただいたのは感慨深かったです。実は、別の薬局でも薬局最後の日に立ちあったことがあり、薬局最後の日を2回経験している人はあまりいないかなと思います。


おおくぼさんと知り合ったきっかけ:
おおくぼさんが「フリー薬剤師」で検索して、自身が運営しているサイトに登録してくれたのがきっかけで、Facebook などでもつながり、情報交換などはしていました。そのサイトをきっかけに(Sさん含め)何人かの東北の薬剤師さんと知り合いになったので、仙台で交流会をしようということになり、お会いしたのはその時がはじめてです。2回交流会をしましたが、2回とも青森から参加してくださいました。フリー薬剤師をやっていたかと思ったら、いつの間にか薬局を開いていて、次は何をしてくれるのかといつも目が離せない存在です(笑)


コロナ禍で仕事が増えた・減った・キャンセルになった・急遽依頼が来たなど状況が変わったことや印象:
仕事には全く影響はありませんでした。予定通りの仕事をやりましたよ。不謹慎かもしれませんが、ちょっと自粛したかったです(笑)電車での移動や県をまたいで仕事に行っていたので、感染対策には注意していましたが、普段から風邪やインフルエンザに罹らないように、水分、食事、睡眠はしっかり取るなどしていたので、マスクをしていたこと以外は特別なことをやっているという感じでもありませんでした。


お伝えしたいことなど:
自分のやりたいことや強みを明確にして、自立(自律)した薬剤師が増えたらいいなと思います。


全国ひっぱりだこのIさんのフリー薬剤師の心得は、遅れず休まずきちんと行く、全力でお手伝い、分からないことは聞く、みんなと仲良く、人任せにせず責任をもってやる(自立=自律する)ことで、コロナ禍でも仕事の影響はなく、どんな時も信用してお仕事を頼める方なんだな、と改めて思いました。Iさん、ありがとうございました。これからもご活躍を期待しております。


【Sさんの場合】


次はSさんです。SさんとはIさん経由で知り合いました。Sさんと私はちょうど同じ頃にフリーランス薬剤師を始めていて、ちょうど同じ頃にIさんのサイトを検索しIさんとコンタクトを取っていて、交流会をすることになり知り合いました。フリーランス薬剤師はこれからこの業界に必要になるから広げていく糸口があればいいなと思っていた矢先のことでした。


Sさん(30代・男性)
事業形態:個人事業主
フリーランス薬剤師歴:約1年半(2018.6~)
フリーランス薬剤師と並行して行っていた活動:もともと開局に向けてM&Aの案件を探していたけれど仲介だと高いので、 薬局と直で知り合いになれるフリーランス薬剤師をしながら探せばいいと思っていた。新しいビジネスモデルの模索も行っていた。
現在の活動:きょうりょく薬剤師の運営、オフィス薬局経営
職歴:東北薬科大学卒、中小薬局、派遣薬剤師も考えたけど(フリーランス薬剤師の取引先になってくれそうな)薬局知り合いにつばをつけてたのですぐ独立
フリーランス薬剤師を始めたきっかけ:
(最初は派遣薬剤師も考えたけど)派遣の相場を知り、初めて薬局側の支払いを知った。派遣仲介の仕事を色々聞いてみたら大したことしてないじゃん、それで利益あげる構造ってどうなの?と疑問を持った。もともといろんな薬局の社長と仲よかったので、それなら単純に直で繋いだら、winwin(派遣薬剤師より報酬多くもらえて薬局側の支払いが少なく済む)じゃない? しかも単発の依頼って派遣できないらしいので自分がやるしかないと思い、もともと勤めていた会社にも意向を話して独立、取引先としても契約。
時給単価:¥4000
月売上:60万〜

フリーランス薬剤師エピソード:
初めての現場は人間関係含め神経使う。紙薬歴はなるべく受けないようにしていた、すいません笑。スケジュール管理が大変、人脈めっちゃ大事、この業界は横のつながりが強いため、信用があれば逆にどんどん紹介してくれる。

Iさんと知り合ったきっかけ:
フリー薬剤師でサイト検索しIさんを見つけコンタクトを取った。フリーランスの仲間が広がれば地域の薬局の痒いところに手が届くと思って交流会を複数回開催。そこで同時期にフリーランスとして働いていたおおくぼさんと繋がり現在につながる。


お伝えしたいことなど:
何をするにしても共通して言えることは、自分の人生は自分で決めましょう 自律しましょう


Sさんの考えを聞けば聞くほど同じ意見で、しかも地元も一緒でした(笑)そしてちょうど同じ頃にフリーランス薬剤師を終了して薬局経営をしていました。お互い特に示し合わせたわけではないのに気が付けば同じ時期に同じようなことをしています。しかし私はどちらかというと個人プレイヤーでSさんはチームプレイも得意としている印象です。Sさんは仙台を拠点としてフリーランス薬剤師をしていましたが、仙台市に複数名フリーランス仲間がいて、その仲間と一緒にきょうりょく薬剤師の原型となるスモールモデルを確立しており、それが現在の形に進化していきました。新しい働き方として話題になりつつあり、今後の発展が楽しみです。Sさんありがとうございました。


【Kさんの場合】


ラストはKさんです。KさんはSさん経由で知り合いました。KさんとSさんは数か月前に知り合ったそうです。二人で飲みに行ったときに意気投合し、Sさんが運営していたきょうりょく薬剤師を応用していけそうとKさんが加わりました。そんなことになっていたとは全く知らなかった私が自由気ままに1回目のフリーランス薬剤師レポートをnoteに投稿したところ、SさんがKさんにシェアしてくれて、タイミングや思いが合致していて何かしらつながれそうということで紹介してくださいました。


Kさん(30代・男性)
事業形態:法人(株式会社)
現在の活動:フリーランス薬剤師、人材紹介
フリーランス薬剤師歴:数か月(2019.9~現在)
フリーランス薬剤師と並行して行っていた活動:色々な薬剤師にインタビューする(働き方発信)、きょうりょく薬剤師の運営
職歴:東邦大学、ドラッグストア、CRO、起業
フリーランス薬剤師を始めたきっかけ:派遣薬剤師をやろうとしていたところ、Iさんから業務委託という働き方があることを聞き、報酬を会社の利益にしたいと思ってたので始めた、最初はこれがフリーランス薬剤師だと思っていなかった。
時給単価:4500円(税込)、日給ベースで契約することもあり¥25000~30000(税別)
月売上:70~80万

フリーランス薬剤師エピソード:薬歴変わるのは大変(紙とか)だけど、色んなところに行けるのは楽しく、特に大きなトラブルはなかった。

Iさん、Sさんと知り合ったきっかけ:薬剤師のキャリアについて色々な薬剤師にインタビューをしていて、面白いことをやっている薬剤師をTwitterで見つけお話しすることになり、その際に自分のやりたいことを話したら、似たようなことをやっている人がいるということで紹介してくださることになりそれがIさんです。Sさんとは交流会で知り合い、薬剤師のインタビューをお願いしたところ、きょうりょく薬剤師をやっていることを聞き、事業を始めたのがきっかけです。

フリーランス薬剤師はずっと続ける予定で始めたのか:会社が軌道に乗ってきたら、または別の事業立ち上げたらやめるつもりだった。

便利なツールを教えてください:ライフベアというカレンダーアプリを使い、薬局ごとに色分けしていました。

お伝えしたいことなど:フリーランス薬剤師は、必ずしも法人化したり、個人事業主として開業届を出さなくても副業として行うこともできるので、まずやってみて!


私がKさんと知り合ったのは緊急事態宣言真っただ中の今年4月で、何度かオンライン会議やメッセージのやり取りをしていますがまだ直接お会いできていません。その後バージョンアップしたきょうりょく薬剤師のサービスをリリースし本格始動、薬局も薬剤師も登録数が増え大忙しのKさんですが、どうにか直接お会いしたいなと思っています。色々な薬剤師のキャリアについてインタビューしていたことが今の事業にかなり生きているように感じます。Kさんありがとうございました。


【これからフリーランス薬剤師をしたいと思っている薬剤師の皆様へ】


実際にフリーランス薬剤師をしている仲間に聞いたところ、取引先は知り合いだったり、知り合いの紹介だったりがほとんどのようです。どんな人なのか分かっていて、取引先側の状況や要望も理解してくれているから信用できる、もしくは信用している人が紹介してくれる人だから安心して頼める、つまりコミュニケーションが大事なので全くの新規飛び込みは簡単ではないのかなと思っています。事前にコミュニケーションをとる機会があればいいと思います。また、元々の信用に加えて、約束を守る、人間関係を大事にするなど一緒に働いてからの信用というのも大事になってきますので心得ておきましょう。


【これからフリーランス薬剤師を活用したいと思っている薬局様へ】


安心して気持ちよく働ける環境が整っているとフリーランス薬剤師が行きたい薬局になります。最初にしっかり仕事内容の説明があるとか、機器やシステムが新しくて初めてでも使いやすい、安全対策のための設備通し、来たばかりの人に仕事を丸投げにしない(意外といる、笑)など周りのスタッフのサポート体制も重要です。インタビュー内容にもありましたが紙薬歴、不評です。紙薬歴からスムーズに移行できる電子薬歴もあるようですので、紙薬歴の薬局様はこれを機に見直してみてはいかがでしょうか。そして、Vマス分包機(小児科短期処方だと便利だけどがっつり施設処方には不向きかも)やグラシン分包紙(監査しにくい)を利用している場合は次回買替えの際見直しお願いしたいです。


おわりに


3人のフリーランス薬剤師仲間を紹介しましたが、やり方はそれぞれでも自立(自律)を意識し、どこかに所属して店の看板を背負っていない分、自分自身で信用を作っていくしかないという意気込みを感じました。この記事が、これから挑戦してみたいと思っている薬剤師の背中を一押しできれば嬉しく思います。


*文中でも紹介しましたが下記にも掲載しておきます。是非登録&ご活用ください。


フリーランス薬剤師と人手が足りない薬局をつなぐプラットフォーム
「きょうりょく薬剤師」


サービスについて https://freelance.pharmacist-career.com/service
(薬剤師用)https://lin.ee/8ZSgBES
(薬局用)https://lin.ee/vBy8tWo7

フリーランス薬剤師普及活動に役立てたいと思いますので、参考になった、続編を期待、などの場合はサポートよろしくお願いします