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アナ雪2考察

さて、所感については前項で述べたとおりなので、こちらではわたしの感想と考察を主に述べる。

なぜエルサに魔法の力が宿っているのか、というキャッチコピーのようなこの謎については、わたしは「母からの遺伝」だったと考えている。
ノーサルドラの民は自然と生きる。そうであるならば自然と仲立ちをし導くものが存在してもおかしくない。
そしてその正体こそが第五の精霊なのではないだろうか。
「由緒正しい家系」という表現が不親切ながら、「村の祈祷師」とでも言い換えれば後の展開も含めてすんなりと納得できる。
しかしたぶん、エルサと違って歴代の彼らはそれほど力が強くなかったのでは?と思う。できるとして、精霊の声をきいたり多少の意思疎通ができたりというシャーマン的な能力しかなかったように感じる。
そうでなければ、もしエルサに同程度の能力しか遺伝していなかったなら、エルサ幼少期の頃に能力が強くなることに慌てたりアートハランに向かおうとしなかっただろう。

素養としては血筋によるものだが、アレンデールの裏切り事件に遭遇し、荒れ狂う精霊を目の当たりにしたノーサルドラ村祈祷師(仮)且つ第五の精霊の血筋である母はおそらく強く願った。
「人と人」「人と精霊」「どちらもの仲を取り持ちたい」と。
その願いが第五の精霊が覚醒する契機となり、覚醒した母が森ごと精霊を封印した。
可能であれば鎮めたかったのだろうけど、たぶん能力がそこまで追い付かなかったために封印するほかなかったのではないかと思う。(2でエルサがアレンデールを発つときのドワーフ長の「エルサの能力がそこまで敵うか」的な発言にも符合する)
そして能力の限界に至り、母の能力はおそらくここで失われた。もしも能力が残っていたならば、船の沈没から何とか免れる方法を模索しただろうから。

母の「血」が魔法を使える身体を与え、「願い」がその能力を強めた。つまり「母からの遺伝」だったのだろう。

だからこそ、母イドゥナはエルサの安寧を祈りつつ、魔法の川の子守唄を歌い、いつか真実にたどり着いてくれることを、遠回しに願った。それは多分、底しれぬ罪悪感を抱えた祈りだったのではないだろうか。

親が子に押し付けた荷物になるか、贈り物たるしるべとなるか。
受け継がれるもの。記憶や願い。信じて託すこと。
そんな「遺伝」が今作のキーワードになっていると考えている。


しかしそんなやや複雑な愛情を抱きつつ、母が父とともにアートハランに旅立ったのはなぜだったのだろう。
やはり前述のように母もそれより前の人もそこまで能力がなかったのだろう。
そしてどんどん強まっていく力を前に、もしや魔法の森に異変が起こっているのでは?あるいは封印が解け始めているのでは?と考え、確認のために魔法の森に赴き、さらにエルサの苦悩を取り払うべくアートハランへ能力を消し去る方法を探しに行ったのではないだろうか。
能力を肯定的にとらえられないエルサをみて、「つらい秘密」と「いつか真実に辿り着き魔法の森を開放してほしいという、叶わなかった願い」を抱えて生きていこうと決めたのではないか。
しかしその矢先海難事故にあい、自らの身に秘めておこうと決めた願いが解放され、アートハランに至り、呼び声となったのだろう。

ゆえにアートハランでエルサを呼んでいた声は、そんな母の記憶であり、そしてさらにその母と同化した「世界の願い」だと思う。
34年も封印され続けた森が解放されたがっているという世界の願いとが混ざり合い、反響しあい、エルサの中の「これでいいのか?」という疑念に共鳴する形で歌声が聞こえたのだと思う。
エルサはおそらく自己肯定感が著しく欠けていて、能力を持ちながら安穏と過ごしていること、人とは違うというどこかちいさく隙間の空いた心に小さな不安を抱いていたのだろう。なにしろ、1の時点では人々に恐怖されたこともある。いまはそうでも本当はどうか、という疑心暗鬼の念は無いとはいえない。
そして間接的に両親を殺してしまったという仄暗い罪悪感も抱えて今まで生きてきたはずだ。愛されていた幸せな記憶よりも、ずっと大きく。
アナの存在がそれを覆い隠して支えていたけれど、その下で湧き上がるこういった感情が「未知の旅」を求めたのではないか。

だからこそ、アートハランで母の記憶に触れ「自分を信じ、呼び続け、待っていてくれた」という事実に触れ、エルサは完全に第五の精霊として覚醒したのではないだろうか。
「親から愛されている/た自分」というのは、自己肯定感を得るためにはとても大きい要素になる。存在を許されることは、強い自己肯定の力だ。
それを、その愛を「見つけた」ないし、迷っていた自分が母の愛に「見つけられた」のだろう。
そしてエルサはここで「第五の精霊」に「なった」と考えている。
ここで着替える白い衣装は、わたしは母から贈られたものだと考えている。厳密にいえば顕現させたのはエルサなのだろうが、母の意志がここまで辿り着いたエルサへのご褒美を与えたと見たほうが自然ではないか。
母の声に導かれて、エルサが受け入れる。なんともカタルシスのあるシーンである。

もう一方の「世界の願い」といったことだが、これについては魔法の川の子守唄の「北風が海に~」という歌詞が重要だろう。「北風」はやはり「死」の意味合いが強いと思う。つまりアートハランに世界の記憶がすべて眠っているのは、北風が死者の記憶を運んでくるからではないか。(エルサの記憶はエルサ自信が持ち込んだものだから、その意味でアートハランに至った=アートハランに記憶が記録された=見つけられた、の意味かも。そこからアートハラン=世界の記憶と共鳴がはじまる)
そして、アートハランが凍っていたのはおそらく、34年前の「凍り付くような」事件の悲しい記憶のせいで、凍り付いてしまったのではないか。(森の封印とは別の理由のほうが自然だと思える。同質の封印なら森の封印同様、入口だけ霧で阻んで中まで凍らせる必要はないだろう)


真相に至るにつれてエルサが凍り付いていったのは、アートハランと共鳴をして、アートハランの記憶を自分の心に映したからではないか。
そして、それを成しえたのがエルサの強力な能力と、それと共存することを可能にした(1で学んだ)愛の両方を併せ持っていたからではないだろうか。
その二つ、冷たくて暖かい「氷の心」に鏡のように、沈んだ記憶を写したとしたら。
そこから侵食されて凍り付いてしまうのも当然だろう。
「氷の心」。美しく、強く、きらめき、反射する。その要素が第五の精霊に必要な要素なのではないか。人を写し、精霊も写す。すべてをありのままでとらえて、その強さで均衡を保つ。

その「氷の心」がないとアートハランにたどり着けない(あるいは、行ってもしょうがない)のだとしたら、道中でクリストフ、アナ、オラフが脱落していったのも納得がいく。
冒頭の、「ずっとかわらないもの」で暗示(もはや明示)した通り、みんな実際のところ心=考えていることはバラバラだったのだ。
クリストフは自分の求婚、オラフは自分の成長、アナは変わらない今。
エルサにとってのオラフはおそらくは思い出の象徴で、アナは現在の象徴ではないか。それらの欲を捨て去りながら来たということは、ある意味で自らをアセンションさせながら進んでいったともとれる。
(クリストフは勝手に迷子になって脱落した)


しかしエルサが凍り付き、真実を伝え、オラフも消え去り、アナにとって大切にしていたものがすべてなくなってしまったとき、いわば強制的に解脱させられたときについに彼女にも心の声が聞こえた(「わたしにできること」の歌に表される)。
そこで「できることをやろう」という声が聞こえたのは、これこそ彼女が「王たる父の子」であるゆえであろう。
この決意の後のアナは徹底的に、非情なまでに「アレンデール王」として描かれる。
自らの身を顧みずにアースジャイアントを煽り、ダムの決壊をさせたのは何もかも失って自暴自棄になったからではない。「アレンデール王として何をするのが正しいのか」という観点で行動しているからだ。
決壊直後、手を取ったのがクリストフ(つまり公私でいえば私の要素)ではなく、王家警備隊のマティアス中尉だったのが決定的だった。

そしてその「人の王としての行動」が「凍り付いた世界の記憶≒アートハラン」を溶かし、それを写していたエルサも溶かしたのではないか。
お互いがそばにいなくても、お互いが正しい行動をとり続ければ、いつか道は交わると。その後のアナとエルサが別離する展開にも納得を持たせている。


ダムが決壊したあと、半ば無理矢理感を溢れさせつつもエルサはアレンデール国を守りに行った。
これはご都合展開ととられがちだが、第五の精霊として、人と精霊(≒森やノーサルドラの民)の均衡を保つために絶対に外せない仕事だったと思う。
もしもアレンデールが壊れてしまえば、人々の遺恨は次世代にも残り続けることになる。
そうすればまたいずれ森は脅かされ、精霊の平穏も崩れ去ることになる。
そんなリスクを是が非でも止めに行った。それが正しい行動だから。


エルサが第五の精霊として覚醒し、同じようにアナもアレンデール王として覚醒した。
お互いの立場で、正しい行動をするためには、自然住む場所は別々になる。だけどそれで構わないのだ。
正しい行動をとり続けることこそが、二人が父母の力を受け継ぎ、世界を支えることや、お互いを助けることにつながっていく。


これらがわたしが考えたアナ雪2の考察であるが、あくまでも日本語版をベースにしているということと、1ないし派生作品はそこまで考察しておらず、あくまで2の要素のみでの前提となっている。
それでも2だけでもこれだけ考察の余地がある難解な展開のアナ雪2、是非劇場でご覧ください #PR

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