小説『失われた情報を求めて』

注:すべてフィクションで現実の人物出来事とは関係ありません。
  暇つぶしに書いた小説です。


 小説家は小説を夢見る。
 医師は病気の治癒を夢見る。
 はずだった。
 20xx年、すでに人のからだについての知識は捻じ曲げられ、虚構の衒学と化していた。
 小説家は現実を作り出し、医者は病気を作り出した。
 医者兼小説家のKは、政府の生体管理部門の代表として、都合のよい現実を作り、人々の病気を治す虚構を作った。
「モロー博士の島よりも、この日本のほうが実験場所として素晴らしいと思わないか?」
 彼が書いた小説「アフター・モロー」は虚構を示すことで現実を隠した。
人々はまさか小説のようなことが現実で行われているとは考えられないようだった。
 しかし、世界に流行した微妙に危険という情報のウイルスに対して、人々の理解できない危険性を持ったワクチンで大量の死者重篤者が出た疑いが出た時、一部の人々は医師Kに疑いを持った。
 そんな疑いを持つ人々に医師Kは言った。
「世界とは不条理なものです。人が朝起きると虫になるぐらい簡単に人は突然死するのです。」
 それから大多数の人は突然死が増えたことを疑わなくなった。
 一部の真実を追求する者だけが、突然死の原因をワクチンに求めた。
 
 検察官、オメガはこの突然死を犯罪と認識し、捜査を始めた。
 検察官は医師Kを聴取に呼んだ。
 医師Kは検察庁にきて検察官オメガの聴取を受ける。

オメガ「あなたが先導して人々に投与したワクチンはたくさんの人を殺したのではないですか?少なくとも私にはかなりの確度で死因として推定される。」
K「あなたは、少し疑いすぎだ。この国は城のように不条理な城塞に守られた機密を持っている。あなたの疑いはその城塞に入った途端に消える定めだ。」
オメガ「私は大きなシステムを信じない。目の前にある人々の死を私は信じている。」
K[あなたは何を見ているのです?超過死亡はウイルスによりもたらされているのですよ。ワクチンでそれが防がれているのです。」
オメガ「もはやウイルスは弱毒化している。すべての死はワクチンなのだ。」
K[あなたが何を現実だと思っても、すべてのデータと情報は書き換えられている。ここは小説よりも陳腐な世界でしかないのです。」
オメガ「馬鹿野郎」
(Kを殴りつける)
オメガ「この痛みはお前にとって現実だ。」

そして聴取は終わった。

それから月日は流れ、書き換えられたデータは人々の心と思考をむしばんだ。
度重なるワクチンの接種により人々の体はボロボロになっていたが、それに気がつけるものはまれだった。

オメガは今でも犯罪の端緒となる情報を追っている。
すべての現実は目の前にある。しかし、それが犯罪の端緒になることはない。
あたかも巨大な城の城門が閉じられているようだ。

テレビに医師Kが映る。
「遺伝子を書き換えて病気を予防することは人類の医学の到達点です。」
思考力を失った人々はそれを鵜呑みにする。

オメガはしかしそれを聞き逃さなかった。
遺伝子の勝手な改変は、20xx年の刑法では犯罪である。
ーやっとKを捕まえられる。

オメガはKに逮捕状を発しようとした。
しかし、逮捕状には許可が下りなかった。
「遺伝子が書き換えられた証拠がない。」
という理由だった。

人類の遺伝子の情報まで最初から書き換わってしまっていた。

だが、オメガは世界で唯一残されたワクチン非接種者だった。
彼のDNAを解析したことで、人類には本来おこりえないDNA変化が世界規模で起こっていることが確認された。
失われし情報は見出された。
だが、人類はやがて突然死するだろう。
その理由も書きかえられたままで

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