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1 アオハルを駆け抜けろ

僕は喜多川〇〇。
都内の私立高校に通っている高校2年生。
自分でいうのもなんだけど、僕はいわゆる脇役タイプで決して物語の主人公になるようなイケメンでもなければ、頭脳明晰でもないし、運動神経が抜群にいいわけでもない。

どこにでもいる、ありふれた男子高校生。
それが僕のプロフィール。



美月「ちょっと、〇〇。なにボーっとしてるの?」


気がつくと目の前の席の山下美月のかわいい顔がすぐ目の前にあって思わず変な声で驚いた。



○○「うおわっ!?」


美月「ちょっ! いきなり変な声出さないでしょ! ビックリするでしょ!!」



美月と僕は生まれた時からのいわゆる幼馴染というやつで、幼稚園から高校2年生にいたる今まで全く同じ道を歩んできた。
ついでに言うとクラスもほとんど一緒でいままで違うクラスだったのは中学2年のときの1年間だけだった。

もうほんと腐れ縁とはこのことである。


まあ、仲がいいことは間違いないんだけど、別に付き合っているってわけでもないから、いわゆる友達以上恋人未満って関係。

美波「相変わらず仲いいねあんたたち」



僕と美月がいつもの感じでふざけていると、クラスメイトの梅澤美波がブレザーのポケットに手を突っ込んだまま歩てきて、近くの開いていた椅子を引きずって近づけて足を組みながら座った。



ミニというわけではないけど、通常よりも短い美波のスカートから見える太ももが絶妙にエロい。


いや、いちおう弁解しておくけど、健全な男子高校生としては正常な反応ですよ。


美月「仲良くないよ。私と○○は腐れ縁なだけ。ね、○○?」


○○「まったくもってその通りだね」


美波「幼馴染で同じクラス、しかも毎日一緒に登下校してるくせに何ってんのよww」


美波はそういいながらクスクスと笑った。


美波は中学時代からの友達で、中学三年生のときにはじめて同じクラスになったことがきっかけで仲良くなった。

クールな感じだけど、情にもろかったりさみしがり屋だったりする。

高校入学の時のクラス発表の時、同じ中学からこの高校に来たのは僕たちのほかは知らないやつらばっかだったんだけど、たまたま僕と美月が同じクラスだったのに、美波だけ別のクラスになって泣き出しちゃったのもいまになってはいい思い出である。

それから1年の間は休み時間になると俺たちの教室に来てたっけ。

2年になるときのクラス発表で神に祈りながら見た結果、僕たちは同じクラスになって、美波のやつ、うれしさのあまり抱き着いてくるもんだから周りから変な目で見られたのを覚えてる。

まあ、悪い奴じゃない。ちょっと人見知りなだけ。

美月と美波それに僕。いつもたいていこの三人で一緒につるんでる。


何をするのもたいてい一緒。
遊ぶのだって、宿題するのだってそう。
買い物に行くのもいつもこの三人であーだこーだいいながらお互いをコーディネートしてたりするし、じゃんけんで負けたやつがカフェをおごることだってある。

そう、男女の友情はここでは成立するもんだって、本気で思っていたんだ。






学校から帰り、家でお気に入りの音楽をかけながら、それに合わせてギターを弾く。

無趣味な僕の唯一の趣味といってもいい。別に習っていたわけでもなく完全なる我流だけど好きな音楽を自分で奏でられるのが何とも言えず心地よかった。

もうどれくらいそんな時間を過ごしたんだろう。
それでも時間なんか気にしていなかったときだった。


美波「おーい! 〇〇!!」


〇〇「うおっ!?」


ギュイーーーン
部屋のドアがいつの間にか開いていて、美波が大声で僕を読んだので驚いてギターを変な弾き方してしまった。

音楽を止めてギターを台に置いてから美波に向き直った。


○○「お前な~、ビックリするだろ」


美波「インターホンだって押したし、ノックだってしたのに気付かない〇〇が悪い」


そういう美波は部屋に入ってくるなり僕の勉強机の椅子に腰かけて身体を伸ばした。

バイトから直接うちに来たんだろう。

学校の時とかわらない制服姿のままの彼女はリラックスした感じで慣れたようにスマホの充電器を取り出し僕の机の開いているコンセントに差し込んで当たり前のように充電をはじめた。

美波「あれ、美月は?」

○○「まだ来てないよ」


美波「あれ、さっきLINEしたときはもう行くって言ってたんだけどな~?」


そんな話をしていると、部屋の窓が開いてショートパンツにタンクトップのような完全部屋着姿の美月が入ってきた。

はたから見たら不法侵入だけど、これが僕たちの日常。
美月の家は僕の家のすぐ隣で、屋根伝いに移動すれば窓から入ることができる。
いつからかは覚えていないけど、気が付いたら美月が僕の家に来るときはたいていこうしてくるようになっていた。


美月「やっほ~」


美波「美月遅いよ~、○○と二人っきりで退屈だったんだから~」


○○「おいこら」


美波が冗談っぽくいたずら的な笑みを見せながらそういったのにしっかりと突っ込んでおいた。

それから美波も定位置のベッドの上に寝転がるような体制でリラックスし始めて、僕はベッドに寄りかかるように床のマットの上で座った。


ようやくいつもの状態になった。


美月は昔からだけど、美波も去年の高校1年のころから僕の家に来るようになって、今ではこんな感じ。

集まって何をするわけでもないんだけど、ただ集まってくだらない話をして過ごす。


そんな何でもない瞬間が心地よかった。


アオハル。

そんな言葉はむず痒いけど、そんな時間をあの頃の僕たちは駆け抜けていたんだ。






つづく


この物語はフィクションです
実在する人物などとは一切関係ございません


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