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遅ればせながら「We Margiela」観てきました

金沢のシネモンドで「We Margiela マルジェラと私たち」始まった(2019/3/30)と思ったら気付いたら最終日(2019/4/12)で慌てて観に言ってきました。

ブランド立ち上げからディーゼル(OTB社)売却までの時期に焦点を当てた関係者の後日談って感じで、オールドファンは「STREET MAGAZINE MAISON MARTIN MARGIELA SPECIAL VOLUMES 1& 2」の20年越しの補足資料的な楽しみ方出来るんじゃないかな?と思いました。(逆に最近のMaison Margielaが好きな人がどう感じたのか気になります)

以下ざっくりした感想です。(記憶力と集中力が人一倍無いので変なところあったらすみません🙏)

想像してたより作家性の強いデザイナーだった

映画の序盤は当時の関係者の語るジェニー・メイレンス(共同創設者)とマルタン・マルジェラのエピソード。

マルジェラの視点の斬新さ・カリスマ性、ジェニーのヴィジョンと胆力、ポジティブなエピソードが当時の関係者から語られる感じ。昔憧れたマルジェラそのものだなと思いながら観てました。(ただ、その熱量は僕がMartin Margielaを知った1997年頃には既に疲弊し始めていたんだろうなとも思いました)

意外だったのはマルジェラが想像よりも遥かに職人気質で芸術家肌のデザイナーだったこと。マルジェラは数字も見ない、インタビューも(ある時期から)応じないで、ひたすらコレクションの制作に専念していて、当時感じていた知的でミステリアスなイメージはジェニーをはじめとしたスタッフ(=We)が結果的に作り上げていた。

映画を観るまで思ってたイメージは逆で、コンセプトメイキングとイメージ作りの上手い、アトリエワークはチームで(どっちにしろ当然なんだけど関与する比率として)、みたいなクレバーなタイプだと思ってました。

ブランド立ち上げに必要なもの

・強いヴィジョン(ビジネスとクリエーションで)
・ハードワークできる熱量
・キャッシュフローに向き合う胆力

ブランドを成功させるには色々必要なことがあるとは思うんですけど、この映画ではこの3つを特に感じました。

マルジェラは衣服に対する考察と女性像で、マルジェラの才能を確信したジェニーは「強いクリエーションは強いビジネスを作る」というヴィジョンを持って、お互いがそれを確信してハードワークを続けることができた結果が、ブランドの最初のフェーズでの成功の要因だったんだろうなと。

あと、意外だったのはキャッシュフロー。ベルギーでセレクトショップで成功していたジェニーが全てを畳んでスタートしたブランドだったので、もう少し余裕あると思ってました。(字幕で2回くらい破産寸前って出てませんでしたっけ?)

ただ、売却までの十数年で、インディペンデントであの規模にするには相当のリスクがあるんだなというのが伝わりました。(利益は次のシーズンに全部投資する感じが)(御社はAmazonかと)

拡大と疲弊とプライベート

で、映画は終盤にかけて内容が暗い感じになってくるんですけど(それもドラマティックにじゃなくて淡々としているところが、Martin Margielaっぽくていいなと思いました)、ブランド規模が拡大するにつれて様々なタスクが増えていく中で、Maison Martin Margiela(=We)として、マルジェラはコレクションの製作に、ジェニーはブランドの強化に没頭する中で、マルジェラとジェニーの自分たちのブランドに対しての認識のギャップが徐々にお互いのモチベーションを擦り減らす結果になったんだと思います。

そのタイミングでのジェニー(当時58歳)の家庭の事情もあって、売却の選択をするに十分だった。(売却の結果、マルジェラもようやく自分のブランドの価値を知ることになるというのが良かったのか悪かったのか)

家庭の事情って多くの人がビジネスでの壁や分岐点になる部分じゃないかなと思っていて、24時間365日仕事にフルコミットできる環境って難しくて、自身の年齢的な要素もあったりで、もしジェニーがあと10歳若かったらまた違うMartin Margielaが見れたんじゃないかなとも思いました。

最後の旧来型のファッションデザイナー(だったのかも)

多分ジェニーはサンローランとピエール・ベルジェの関係性を目指してたんだと思います。才能のあるデザイナーと経営者がお互いにクリエーションとビジネスに没頭することで、ファッションビジネスを成功させたかった。

それは半分成功で半分失敗だったんだと思います(なんか特に最後のシーンでそんな印象を強く受けました)。サンローランとは時代が違った。特に2000年頃を起点に「強いクリエーションは強いビジネスを作る」から「ビジネスがファッションの行方を決める」時代に完全にシフトチェンジしてしまった、その時点で2人のMartin Margielaとしてのプロジェクトは終わった、と。

マルジェラはひたすらにファッションデザイナーであり続けて、一貫性を持った強いコンセプトと女性像、それをプロダクトとして表現することに打ち込んだ。

だから、ジェニーがいなかったら、多分90年代までに居た数多くの才能のあるデザイナーと同じ様に消えてしまっていたと思います。そういう意味でマルジェラはある意味では最後の純粋なファッションデザイナーだったのかもしれないなと思いました。

おわりに

「We Margiela」は同じドキュメンタリーでも「サイン・シャネル」みたいな華やかさもなく「ディオールと私」みたいなドラマティックさもなくて(全部好きです)、淡々と進んでいくし、仕事って辛いよねーみたいな感想にもなるし、そもそも今のMaison Margielaと雰囲気違うし、どういった捉え方になるんだろうかと若干の不安も覚えつつ、これからデザイナーとして自分のブランドをやりたいって思ってる人に見て欲しいなと思いました。

そのうえで、デザイナーになるか、やめとくか、これからの時代の方法論を模索するか、考えるきっかけになるかもしれません。(ならないかもしれません)

僕はもうちょっとだけ模索してみたいです。

おわりです。

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