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RESONARK 4 ELVES Pt.2 制作後記

ご無沙汰しております、septem47です!
もはや新しいワールドを出したときにしか書かないnoteになってしまいました…。

今回、RESONARKシリーズの最新作「RESONARK 4 Part.2 Raylight」をリリースしたので、そちらの制作後記をまとめられればと思います。

最初にRESONARKシリーズの制作体制から軽く説明すると、私が主宰を行う個人サークル「sep-neko-ya」が開発・運営を行っています。
今作での私の担当としては、企画に加えてサークル的に人員が足りないところを全部やるという形です。

そのため、今回は企画を中心に全体の制作を振り返っていければと思っています。

最初からPart.2のネタバレをしていくので、ワールド未プレイの方はクリアしてから読んでいただけるとより内容がわかるかなと思います。

一応、去年投稿した Part.1 の制作後記の続きでもあります。


Part.2の企画立案

3部作構成を2部作構成へ

運営レターアバター公開直前インタビューでの記載にあるように、もともとRESONARK 4 シリーズは3部作かつ1アバター (ホノカのみ) の公開で進める予定でした。

Part.1開発当時の企画書を見てみると下記のサブタイトルで行く!と書いてありました。

  • Part.1 Moonlight

  • Part.2 Daylight

  • Part.3 Twilight

当時の内容をざっくりとまとめてみました。


Part.1 Moonlight:
歩華が旅の途中廃坑に迷い込む。
(歩華は、アバター「ホノカ」の RESONARK 4 世界の存在)
ケーブルから音楽が変換できること、変換した音楽がピアノ曲になる頻度が高いことに気づく。
過去の思い出がちらつくが、最終的に今の歩華だから表現できるピアノ曲の作曲を行う。

Part.2 Daylight:
夜が明けて晴れた空の下で演奏を進めながら、徐々に歩華の過去を明かしていく。歩華は異世界にメッセージを送る決意をする。

Part.3 Twilight:
夕方になってハッチが開き、海岸に出てメッセージを送る。
そこでエンディング。


ただ、Part.1 を作り切ったあと、下記のような問題が見えてきて、私やスタッフの間で3部作で行くのは難しくないか?という話が行われました。

  • RESONARK 4のケーブルシステムは暗いところで映えるので、全編真昼のワールドでルックが持つのか?

  • そもそもVRChat界隈の変化が激しいので、Part.2を出して運用、Part.3を出して運用ではプロジェクト全体期間が長くなりすぎるのではないか?
    (さらに、運用が長くなるにつれ最後のシナリオを出したときに作品としてのインパクトが弱くなってしまっている恐れが発生する)

このような懸念もある一方、Part.1 完成時点で多くの人が携わっており、プロジェクトに勢いがあったため、勢いに乗って「Part.2 にこれまで企画していたすべてを入れて完結編にする!」ということにしました。

舞台はルックを担保するために真昼ではなくケーブルの光が映えるように曇天、さらに地面をに水たまりを作って情緒を出せるように雨の中としています。

また、最終的にPart.2のサブタイトルはエンディングで送るメッセージの比喩で 光芒 (Raylight) にしています。

「Raylight」というサブタイトルが決まったことで、ホノカ新衣装の名前も「Elves’ Ladder」としています。
これは「Angel’s Ladder (天使の梯子)」を発想のきっかけとしています。

シナリオ設計

Part.2 のシナリオ構成も、開発開始から色々な変化がありました。

3部作構想時代は、まだ登場人物が歩華のみでした。

そのため、端末のログは全部歩華の独白になる予定で、自身の心の中でこれまで持っていたピアノへの恐れを克服していき、廃坑の謎に気づいて異世界にメッセージを送るという構成でした。
Part.1のLucent Coord作曲イベントはその過程のひとつです。

ただ、それだと自己完結的なシナリオになるので「いっそ歩華の過去のライバルを廃坑に呼んでしまおう!」という結論になり、詞杏 (シアン) が現れることになりました。

過去のライバルを登場させ、2人に直接話してもらうことで歩華の決意~エンディングまでの流れを作ることにしました。

シナリオ全体の方針も変化がありました。
Part.1時点ではシナリオを言外で伝えようとしすぎて、完全に考察できていた方が少なかったように感じたので、文章の形でもっと表に出すことにしました。

エンディングでは、3部作時代から下記の展開を行いたいと決めていました。

  • 海岸に出てエンディングを迎える

  • 演奏場所をPart.1で出てきた広場に加えてもう1つ増やす

2部作に構成を変更した後の初の打ち合わせをするときに、具体的にどうやって実現しようという話をすると「そしたらデータ送信用の桟橋を作って、そこで演奏とエンディングを同時に行えばいいのでは」というアイデアが出て今に至ります。

このような経緯もあり、RESONARK 4 シリーズは Part.1 / Part.2とは言っていますが、実際には別の世界の出来事として描いている形になります。

ちなみにPart.2のChapterも完全に時系列ではないですね (最後の隠し楽曲を解禁した方であれば何となく伝わるかなと思いますが、プレイヤーがChapter 3 の後の歩華と詞杏の写真をChapter 1 (クリア後) で発見することになるためです)

現地取材

舞台設定が決まったところで、今回の舞台となる廃坑のディティール (実在感) を上げるために、現実で参考にできる場所はないか見て回ることにしました。

もちろんすべて現実通りにしようというわけではないですが、私は取材先の空気を感じることがゲーム制作に寄与すると信じています。
例えば、今回のプロジェクトではチームで自由に閲覧できる場所に置いておいたらモデラーさんが参考に見てくれるなど、制作上役に立つことがありました。

以下、記念に数枚取材先で撮影した写真を貼っておこうと思います。

山形県東置賜郡
千葉県富津市
長崎県五島市
長崎県長崎市 (旧国際海底ケーブル陸揚庫)

こうしてシナリオや背景制作の方針が立ち、作業を進行していくことになりました。

アバター / 衣装制作

新アバター「シアン」

おおまかなゲームデザイン、舞台の骨子が整ったところで、アバターデザイン & モデリングを担当する有坂みとさんたちとアバターを制作できるようになりました。

私の思想として、VRSNSのアバターを作っていくにあたって、過度にキャラクター性を付与したりゲームとの関連性を主張したりしてしまうと、結果的にアバターの寿命を縮めてしまうことにつながると考えています。

「アバター」に対して「ゲームのキャラクター」の側面を強くを意識させてしまうと、仮にユーザーさんにお迎えいただけたとしてもアバターとしての自己表現には使えないのでは?と考えられてしまい、長く使っていただけない原因になると思っています。

そのため、今回のプロジェクトとしての要件は提示しつつも、アバターとして普段使いをしやすいデザインにまとめる必要が出てきます。
結果的にPart.1~Part.2を通して下記のような作り方をしました。

  1. septem47 (ディレクション):
    ゲームの世界観・展開などを考え、アバターをゲーム世界に登場させる上で「最低限デザインとして備えていてほしい要素」をまとめる

  2. 有坂みとさん (キャラクターデザイン):
    キャラクターデザイン担当のが上記デザインを受け、アバターとして普段使いしやすいようにチューニングしつつデザインを起こす

  3. septem47 & 有坂みとさん:
    上がってきたデザインのチェック、修正、モデル化進行

実際にこのフローで制作する上では、どのくらいキャラクターデザインを自由にしていただくかのさじ加減が難しく、特にホノカの時は試行錯誤を繰り返しました。

Part.2 のときのシアンでは、制作に慣れてきたのもあって、有坂みとさんにもっと自由にキャラクターデザインをしてもらいたいなと考えました。
そこで、本当に最低限の要件だけを提示してデザインを行っていただきました。

必須要件で提示したのは下記くらいだったと思います。
・けもみみとけもしっぽを備える
 → MRで乗せている設定で、着脱可
・ワールドには「歩華」のかつてのライバルで近い年代の「詞杏」が登場
・ホノカと同じ世界を生きているように見せたい (SF感の塩梅など)

「シアン」の名前については、ホノカがマゼンタ系の髪の色だったので、もう1人アバターをリリースするにあたって「シアン」という名前はどうかなという提案をした覚えがあります。

「シアン」デザイン初稿 (イラスト: 有坂みとさん)

結果的に、有坂みとさんには名前である「シアン」(水色) 要素もキャラクターデザインに乗っていないほどに自由にデザインしていただけたので、とても良かったと思っています。

新衣装「Elves’ Ladder」

衣装のほうは、アバターと少し違った思想で作っています。

アバター側では先述した通り、普段使いできるようにするため、敢えてRESONARK世界から距離を離すように設計しています。

一方、衣装ではRESONARK世界観をもっとプッシュしてもよいというレギュレーションにしました。

例えば「RSN. (RESONARKの略) ロゴ」はアバター側のデフォルト衣装に入れるとしたらNGになったでしょう。
過剰なRESONARK世界観とアバターとの結び付けになってしまい、ユーザーさんの利用を縛ってしまう恐れがあるためです。

しかし、衣装のほうに入れるのはOKとしています。
複数アバター対応で汎用的に使えるようにしつつ、もっとRESONARK世界観に寄りたい!というニーズを衣装側で受けようとしています。

「Elves’ Ladder」オリジナルデザイン (イラスト: 有坂みとさん)

結果的に、オリジナルデザインを担当した有坂みとさんに、シナリオの「雨天を晴天に」という展開や「祈り」のキーワードを拾っていただき、このようなデザインになりました。

余談ですが…
Part.2の企画中にコミケの出展が決まったので、ワールドリリース半年前にリアルグッズで伏線を貼っていたらおもしろいのではないか… ということで、有坂みとさんにはリアルグッズ向けに「Elves’ Ladder」の絵を描きおろしていただきました。

ワールド制作

体験設計

ここまでで「世界観とシナリオ」「ワールド背景」「アバター」「衣装」が固まりました。

これからは、ワールドを構成するために必要な各要素はそろってきたので、これらの要素をどう1作品としてまとめるかが課題となります。

作品としてまとめるために、「想定プレイ時間」などを加味していき、最終的には RESONARK 4 Part.2 ワールドで下記のような展開を作ることにしました。


  1. プレイヤーはワールドに配置されている情報端末を使って、ストーリーの導入を読み、楽曲を解放していく。
    シナリオもテキスト & スチルベースでやんわりと伝えて、徐々に物語世界のほうに入ってきてもらう。

  2. 物語の転換点となるRay of the Lightの演奏以降、主体性をもって本格的に物語に入れるようにする。
    ※ アイテムを探さないと進めない場所などを設ける。

  3. シナリオ上最大の難所として「うまく演奏ができないと突破不可能なイベント」を用意する。イベントをクリアすると、サブタイトル回収で空が晴れる。

  4. 前段階でテンションが上がった状態なので、いったんハッチ内の移動を移動させて気持ちを落ち着けてもらう。

  5. 桟橋到着後の最後の演奏では、1回きりの特殊演出を大量に出して、テンションを最高にしつつ、エンディングにつなげる。


【レベルデザインについて】
ゲーム設計的には、3. で適度な難しさを感じつつ、しかし詰むことなくクリアしてもらう必要があります。
そのためには、1-2の段階でプレイヤー側にある程度腕前を上げてもらわなければなりません。そのため「最低6曲自由に遊ぶ」「任意の疎通試験を1つクリア(= 最低でも譜面Lv.6に挑戦できる実力に到達する)」「All Perfectを1回経験する (= 簡単な譜面でもいいので、このゲーム独特のスライドノーツ / クラップノーツ処理の成功体験を積んでもらう)」といったミッションを設定しています。

一部の方はPart.2の初期譜面は、傾向が似ていることにお気づきかもしれません。3. で挑戦する楽曲「Gate of Cumulonimbus」の譜面の構成要素を散らして「シナリオ進行上通りそうな楽曲」に配置しておくことで、あらかじめ耐性を得てもらおうとしました。

各要素の作成、統合

大枠の体験フローが定まったところで「TA (Technical Art) / VFXチーム」「譜面チーム」などに分かれて各要素を作っていきます。

最後に私のほうで各種パーツをワールドに実装し、全部を通しで確認できるようにしました。
制作チームを中心にテストプレイを行い、接続の悪い部分があれば適宜ブラッシュアップしつつ完成まで持っていきました。

といってもこのパートは作業が多岐にわたるので、アバター制作や広報などと並行して進めていく必要があります。

デバッグ~公開

体験が固まった後には、ワールドが正常に動作した場合に加え、想定外の動作をされた場合にもワールドが壊れないか … などといった検証 (デバッグ) を行います。

今回はシナリオ進行要素もあり、プレイヤーのJOINタイミングや場所移動のパターンなどに不備があると即進行不能につながってしまうので、音楽ゲームのシステム以外の部分でも入念なチェックが必要となりました。

不具合を直していき、リリースに耐えきれそうだと判断ができたら公開となります。

広報

これまででワールドとアバターの企画・制作についてはまとめられたと思うので、ここからは広報部分に関してまとめていきます。

新アバター「シアン」の広報

今回はワールドに物語をつけることもあって、特にシアンをワールドと同時リリースしてしまうと「結局ゲームキャラクターをアバターとしてリリースしているだけなのでは?」と誤解されてしまう懸念がありました。

もちろんシナリオ上で「アバターが先で、その可能性のひとつとしてゲームに登場するキャラクターがいる」と表現はしますが、外から見るとどうしてもキャラクターありきだと誤解されてしまうリスクがあります。

そのため、シアンはワールドの1ヶ月前リリースとし「アバターであること」を正しくお伝えするための各種施策を行いました。

  • 1ヶ月程度かけてWIPの形で進捗を公開する

    • ゲームキャラだと、モデル自体の制作過程をプッシュしないと思うので、それ自体がアバターを制作していることの表現になる

  • アバターの利用シーンが想像できるような写真を投稿する

  • アバター自体のShort PVを制作する

  • 対応衣装の募集をし、許諾をいただいたものについては試着会で展示する

特に最後の展示については、ワールド制作の追い込み時期だったのもあって並行開発はきついかとも思ったのですが、意外といける (?) ことが判明したので勢いで進めました。

リズムゲームの「楽曲データベース」をうまく流用すると「衣装データベース」も作れることがわかったためです。
入稿側でGoogleFormで入力していだいた情報をGAS(Google Apps Script), Pythonなどで整形し、可能な限り楽にUnityに流し込めるようにすると管理がはかどります。
最終的には (人力ですが) ある程度少ないコストで3日ごとに下見ワールドの更新を行うことができました。

結果的にシアンリリース後、アバターとして暖かくお迎えいただいている方の様子を見ることができて本当によかったと思っています。

ワールドの広報

ワールドの広報では、ゲーム自体の制作とは別で映像制作チームを作り、ワールドのPVを2つ作成することにしました。

今回はワールドにシナリオ要素を追加しているため、ホノカとシアンの見せ場を作りつつも、実際にワールドを訪れてのシナリオ体験を期待していただけるような作りとしています。

さいごに

今回の制作で、私が当初RESONARKシリーズを始めた時に表現したかったシナリオを表に見える形で表現できたのではないかと思っています。

制作中も色々な方のお世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

個人的には新規のコンテンツ開発をしているのが楽しいと思うので、今後も機会があれば継続していけたらと思っています。

Part.2 が新規開発かは議論の余地があるところですが、期間としてはPart.1と同じくらいかかっていて新規機能なども多くあるので半分以上は新規開発と言っていいのではないかな…?! と思います。

それでは機会があればまたどこかでお会いしましょう。
引き続きよろしくお願いいたします!