RESONARK 4 ELVES Pt.1 制作後記
お久しぶりです、septem47です。
今回は、VRChatワールドとして動くリズムゲーム「RESONARK 4 ELVES」を1年数ヶ月かけて作成したので、そちらの制作後記として、自分が担当したことを中心に記事を書ければと思います。
だいたい下記について記録を残せればと思います。
コンセプト立案
世界観設定, Direction
プログラム
ツール開発
UIデザイン
初期リリース分のネタバレをしますので、未プレイの方はご注意ください。
ワールドと紹介映像は下記となります。
コンセプト立案
2020年のRESONARK 2の大会終わりごろに、ある程度「RESONARKシリーズの運用フロー」が固まってきたなと思える時期がありました。
私個人、趣味プロジェクトでそういう「安定運用」をするのがあまり好きではない性格でしたので、何かRESONARKシリーズで新しいこと (つまり、破壊) をやりたいな~と思っていました。
そこで、従来の作品はかなり「ゲームシステム重視」だったので
次の作品ではもっとビジュアル面とかに力を入れたりしよう... と思いました。
どうビジュアルを伸ばすかですが、
最近のコンシューマタイトル (特にJRPG) って、割とキャラを映えさせる方向に振ってると思っていて、そういう体験をVRでも実現できたらよさそう!と思ったので 「キャラ (つまりアバター) が映えるVRゲームを作る」 ことが企画コンセプトになっています。
ちなみにELVESは「Elf - 妖精」の複数形ですが、本作の開発資料では「奏者 (たち)」という風に意訳しています。
つまりサブタイを使って人に着目します!という意思を表明しています。
※ 一部お気づきの方もいらっしゃる通り、放電現象とのダブルミーニングではあります。
世界観設定, Direction
人に着目する、背景を頑張るというからには世界観設定がないとゲームの方針を制作メンバーに共有できないため、最初に1人で設定作りを行うことにしました。
プロトタイプの設定は、ステージ攻略型で色々なマップを探検するリズムゲームだったり、背景設定も今と全く異なっていたりと、全然違う感じでしたが、
そのうち下記要件を満たす方針で進めようとなりました。
【コンセプト実現要件】
暗めの廃坑チックな場所で、かわいいキャラが演奏している
(そのかわいいキャラには全ユーザーがいつでも成ることができる)演奏に呼応して様々なエフェクトが発生する
誰でも簡単にプレイ風景を録画・シェアできる
方針が固まったところで制作メンバーを呼ぶことができるようになり、初期段階で背景モデルのCap.さん、テクニカルアートのphiさん、キャラデザ&モデリングの有坂みとさんにお声掛けしました。
アバターの方針
背景はさておき、VRChatワールドとアバターを同時リリースするのは若干「思想が問われる」問題でした。
場合によっては「アバターではなくゲームキャラをリリースしているのでは?」と受け取られかねません。それは最も避けたい事態です。
アバターとしてのホノカは「自然に普段遣い可能なアバター」であって、ゲームキャラではないという認識の統一を図りつつ制作を進めました。
また、ワールドにおけるホノカの立ち位置って何?問題も悩みどころでした。
VRSNSに展開する作品という性質上、ワールド上ではだれもが主体にならなければいけないという制約があるためです。
ワールドは「どのアバターを使っていても100%楽しめる、ホノカを使っていたらさらに (200%~) 楽しめる」みたいな体験の塩梅を探して制作しました。
どうやったら「特定アバターでより楽しめるワールドになるの?」という話について。
ホノカ使用時には「より一体感を感じられる」ワールドを作るべく、その他ビジュアル面やサウンド面をホノカに全部寄せる、という思想で制作を進めています。
具体的には、収録楽曲のテイストは「ホノカに合うかどうか」で調整する、UIに「ホノカっぽい意匠」を入れるなどで対応しています。
(通知画面やローディング中に出てくる髪飾りの図形とかがそれです)
プログラム
R4以前のRESONARKシリーズのプログラムは、VRChatワールド「Clap Bound」(今の時代知ってる人どれくらいいるんや) のコアシステムをずっと引きずりまわしてきたので、2年にわたる増改築を経て、まあまあヤバいことになっていました。
「Clap Bound」のシステムを作ってる当時、運用に乗せるなど思ってなかったので、まあ仕方なしでは...? という言い訳はありますが...。
でもって新作を作るにあたり、コアシステムをどうやって改修しよう?という相談をphiさんにしたところ、
リファクタリングしましょう!(phiさん的には0から書き直すの意) という話になったので、過去作との互換性を全部切ってコアシステムを再構築することになりました。
0から書き直したため、開発に時間がかかったのはありますが、その分メリットがありました。
ユーザー体験的に一番大きそうなのはCPU負荷が大きく減ったことかなと思います。
処理に余裕が生まれた結果、音符の同時表示数は過去作より大きく増えていますし、Questでもレーンが回転するようになっています。(それでもUnity Profiler上では過去作よりCPU時間は短いです)
この辺はあらかじめシステムの仕様が全部わかっている上で書き直せたため、計画性を以て最適化をねじ込めたからかなと思います。
(演奏まわりのデータ構造も、メモリ負荷を上げる代わりにCPU負荷を下げる形でチューニングしています。これはVRChatの特性的にみんなメモリ積んでるし大丈夫ではなかろうか、という考えに基づきます)
ツール開発
Level Designツール開発は... 新しい譜面制作担当の人に従来までのツールを見せたら「もっと今風で良い感じのツールほしいです!」って言われたので、
Timelineでカメラや (phiさんの作った) ケーブルシステムを制御できるようなやつを作りました。
Level DesignツールはVRChat関連のSDKとは独立して動きます。
PlayableAsset (Timeline) から、中間形式として「なにか (現状ではScriptableObject)」をExportできるようにしており、
それをVRChat World Sceneの側でエディタ拡張を使って (U#で指定した) SerializeFieldに突っ込む、みたいなワークフローです。
Twitter動画に掲載しているTimelineの一番上のトラックは、よく見ると (よく見なくても) CinemachineTrackではないので、そこはおもしろポイントかな?とは思います。
制約, メモリ, パフォーマンスの兼ね合いもあってどのくらい演出を盛れるようにするかは難しいですね...。
この辺のツールは、現状全部Default Playablesのテンプレートから派生させています (それまでTimeline未経験でしたが、このアセットのおかげで大抵なんとかなりました)
ツール開発中は毎日「Default-Playablesさん、本日もありがとうございます😊」と唱えていました。
このあたりのツールを作った甲斐があって、カメラワークやワールド環境調整を試行錯誤するスピードが速くなり、色々試せるようになった… と新しい譜面制作の人が言っていました。
UIデザイン
Twitterとか見てる感じ、反響が見られるのがUIデザインかなと思います。
ただ、UIデザインの当初コンセプトは「スマホUIをそのままVRに持ってくる」だったので、今とかなり毛色が違いました。
(タブレットが目の前に出てきて、それを操作する… という旨のことを企画資料に書いてた)
初期案をたたき台に (チームメンバーでいろいろ議論があったのち) せっかくVRゲームなので、スマホとかではなく、VR空間を生かしたUI設計をしようとなって
3Dモデルをガッツリ動かすタイプのデザインに方向性がまとまりました。
これはある程度新しさのある取り組みだと思うので、プロトタイプにはある程度時間が掛かった気がします。
私の方で「UIデザインの思想をスケッチ」「Illustratorで2Dとして仮組」「Unityで仮組 (処理やアニメーション込み)」の順に行って、チームでのチェックを通してからCapさんに本番用UIモデルを作ってもらいました。
まとめ
という感じで、RESONARK 4 初期リリース分の制作後記を書いてみました。
書いてない分で何か気になることがあったらVRChatで会った時にでも聞いてください (?)
VRChatアバター & ワールドの集団制作は初めてでしたが、なんとか初期リリース (と第1回目のアップデート) を迎えられてよかったです。
制作メンバーとユーザーの皆様のおかげかなと思います。この場をお借りしてお礼申し上げます。
引き続きRESONARKシリーズとホノカをよろしくお願いします…!