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LK-99常温常圧超伝導を語る(2023/8/2)

今日は世紀の大発見・・・かもしれない物質LK-99について科学に詳しくない一般人向けに解説していきます。
表紙の画像の引用元:Science Cast


LK-99とは?

LK-99は2023年7月22日、韓国の研究機関がarXivに発表した人類が夢にまで見た常温常圧超伝導物質です。

常温常圧超伝導って凄いの?

凄いってものじゃないです!
常温常圧超伝導は火や電気、半導体やAIの発明と同じく人類の歴史を変えかねないものです。
漫画やアニメで例えると?
ドラゴンボールが7つ揃ったのと同じぐらいヤバいです。

室温超伝導がもし本当なら電気や磁気を使う分野すべてに影響が出ます。

常温常圧超伝導が与える影響

日本では原子力発電所1つ分の送電ロスがなくなります。
送電ロスをゼロにする超電導線材|環境エネルギー|事業成果|国立研究開発法人 科学技術振興機構 (jst.go.jp)

さらに、電気抵抗と発熱の問題に苦しむ集積回路、CPUやGPUの限界がなくなる上に省エネ化を実現出来ます。
「NVIDIA RTX 4090 Ti」は発熱しすぎて融解する問題で当分出回らないとのウワサ - GIGAZINE

リニアモーターカーを普通の電車を通す感覚で設置出来たり、
大病院しかない脳梗塞やがんの診断に必須のMRIなどの高度な診断機械を普通のクリニックに置けたりします。

常温超伝導が与える影響は電子工学や医学、地政学だけじゃない

金融の世界では既に電力会社株で既に株価の急騰が起きています。

レアメタルや金が超伝導物質に置き換わると、これらの価格が下落し、世界的な金融バランスが変わってしまうかもしれません。

ノーベル賞間違いなし。本物ならば・・・

実はこのLK-99、現時点ではいくつか問題があります。

arXivの問題

一つはこの論文が発表されたarXivです。
arXiv.org e-Print archive
ここはプレプリントと言って査読、つまり中身が本物かチェックされていない論文が乗るところです。
極論すれば捏造やデータを勘違いした論文も載ってしまいます。
なぜそんな飛ばし記事が許されのかと言うと、昔は新しい大発見の論文に対して悪い査読者が文句をつけて、時間を稼いでいる間に身内の研究者に同じ研究をさせて先に発表させるなんて言う不正が横行していました。
査読者が査読対象を 盗用 − 「著者にとって最悪の悪夢」 (enago.jp)

そういうことを防ぐために半ば飛ばし記事でもarXivに投稿しておくことで、特にノーベル賞などの受賞が見込まれる論文の剽窃を防ぐという手法が出てきました。
つまり、arXivには実体の伴わない飛ばし記事か、凄い大発見だから査読を受ける前に先に投稿したのか分からない論文が玉石混交状態となっています。

単に強力な反磁性体である可能性

第二にLK-99が常温超伝導ではなく単に強力な反磁性体である可能性です。
鉄などの強磁性体は磁石を近づけると引っ付くけど、高偏向グラファイトなどの物質は磁石を近づけるとそれに反発する磁力を発揮します。
室温超伝導?!室温で磁石に浮く反磁性体【固体量子】【VRアカデミア】 - YouTube

だから、LK-99が磁石に浮いたからといって必ずしも超伝導とは言えません。
超伝導物質には磁石に浮くマイスナー効果の他に、ピン止め効果という磁力を弾く反磁性体では説明がつかない磁束閉じ込め効果がありますが、今のところLK-99がこちらの効果を発揮したと言う報告はありません。
超伝導‐ピン止め効果による磁気浮上‐ - YouTube

現状分かっていること

この記事を作っている間も各国では検証が進められていて、動画配信サイトで実況中継されたり、Twitter・・・おっとXなどのSNSでもリアルタイムで研究者が意見を交換し合っています。
LK-99验证_哔哩哔哩_bilibili
まるでお祭り状態ですね。
これまでの流れを纏めると、

超伝導かどうかは分からないけれど、少なくともこれまでの理論では説明がつかない強い反磁性体である。

と言うことです。合成の難しさはいずれ解決されるだろうし、少なくとも新しい反磁性体という意味では既に十分な発見ではある。

実際のところどうなのか?

LK-99、本物か?と言われると何とも言えません。研究チームが投稿した動画では一般的な超伝導体とはやや異なる挙動にも見えます。

超伝導自体は電子がペアを作る素粒子レベルのミクロの振る舞いが、マクロの世界に出てくると言う量子力学的な現象で、
BCS理論 - Wikipedia

これまで超低温や超高圧などの過酷な環境でしか実現できていない繊細な現象です。超伝導に必要な電子のペアは熱に非常に弱いと言うのがこれまでの「常識」でした。
しかし、科学の世界ではAIを劇的に賢くしたTransformerなど、従来の理論では説明できないブレイクスルーが起きることがままあります。
2002.05202.pdf (arxiv.org)

既に投機筋では大きな潮流を作り出しているLK-99ですが、令和のStap細胞になるか、AIに続く新時代の担い手となるかは注視していく必要がありそうです。

動画化しました

【分かんない人向け】ずんだもんが語るLK-99【常温常圧超伝導】
https://sp.nicovideo.jp/watch/sm42593447?ref=my_video



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