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「いかなる花の咲くやらん」第10章第6話 「兄弟のいでたち」


亀若の手紙を読んだ兄弟は急ぎ、菊鶴の番傘のある宿を探した。
この時の十郎の出で立ちは、白い布の褌を締め、白いわきの深く開いた帷子に黄色の大口場窯の裾を何か所も裂いて、下には大磯の永遠が着替えた綾乃小袖を着て、その上に母から貰った群千鳥の模様のついた直垂に襷をかけ、一寸斑の烏帽子間の尾を強く締め、赤銅作りの眺めの太刀に箱根の別当からもらった黒鞘巻きを差していた。
五郎も同じく白い布で褌を締め、白い脇の深く開いた帷子に白い大口袴を何か所も裂き、下には浅黄の小袖を着て、上には母から貰った賽布の直垂に蝶々を所々に描いたのをすっきりと着こなし、襷をかけ、遠雁金の模様の着いた紺の袴の括り緒を結び、これも一寸斑の烏帽子懸けの緒を強く結び締め、箱根の別当から頂戴した兵庫鎖の太刀に、祐経から与えられた赤木の柄に銅金を施した刺刀を差していた。




参考文献 小学館「曽我物語」新編日本古典文学全集53

吾妻鏡には兄弟が母親から借りた衣装には千鳥も蝶も書かれていませんが、後に歌舞伎になった時にそのように書かれたようです。やはり、歌舞伎には華やかさが必要だったのでしょうか。山梨県立博物館に所蔵されている屏風絵にも千鳥と蝶の柄の着物の姿で兄弟が描かれています。


次回 いかなる花の咲くやらん第10章第7話「音止めの滝」に続く

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次回は箱根聖地巡りをお送りします。


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