キ に な る おじさま

我が家のトイレには 扉を開けた向かって正面に 小柄な窓がある。
寒い地方なので小柄でもしっかりと二重窓になっていて、その上 内側の方は磨り硝子になっているから窓を開けても半分は隠れてしまって小さな窓がさらにコンパクトになる。

右半分からはモザイクの光が
左半分からは たとえば今日とゆう1日を一枚の折り紙の上に乗せて格子状にハサミで切りとったうちの一枚、のような景色が見える。
その四角い一枚は時間ごとに変化する。



この家に引っ越してきた最初の日の朝
わたしは見慣れない天井に自分の居場所を思い出しながら、トイレに入った。

二月に入って間もなかったので窓はしっかりと閉めてあり、どちらもモザイクの硝子に遠くの朝焼けの光を映していた。
けれど、それ以外にも「 気配 」があった。
振り返って窓を見ても姿は見えないけれど 確かにある「 気配 」
それは真っ直ぐに じっと 見ている。

そうはいっても極寒なので その日は「 いる 」なあと想いながらも、引越しの荷解きに勤しんだ。


翌日。
また、だ。 確かに「 いる 」「 気配 」。
またこちらを真っ直ぐに見ている。

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