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ドリンクバー新時代

 バーにはほとんど行ったことがないけれど、ドリンクバーについてはヘタすりゃ週に十回くらい利用している時があります。

 最近になって気づいたことはルールの変化です。猫も杓子も感染対策の世、ドリンクバーも例外ではありません。というか、飲食関係のものだから、そりゃあ対策は必至です。

 で、その新しいルールとは、グラスやカップを毎回新しいものに替えてください、というもの。ベタベタ触って口もつけたグラスなりカップなりを、みんなの使うドリンク抽出マシンに再びセッティングするのは衛生的に問題ありですぜという次第なわけです。間接キッスになっちゃうよと。お店にもよりますけど、ファミレス系のドリンクバーなら今、だいたいそういう注意書きがしれっと掲げてあります。

 そのルール自体は別に悪いとは思わない。対策できることならするにこしたことはないでしょう。ただ、我らにはこれまで培ってきた常識というものがあるわけです。

 コロナとやらが天文用語かビールか車かの三択で済んでいた時代。その時代からドリンクバーはあった。そして、その頃は飲み干したグラスやカップを平気で何度も利用していたと思うのです。だからこそ今はわざわざ注意書きをして、注意を喚起してるわけ。

 逆になんで前は同じグラスやカップに何度も注いでいたかといえば、毎回替えることの方が否とされていたからでしょう。グラスやカップには限りがあり、のちに洗って再び使うもの。一人の人間が、おかわりするたびに新しいグラスやカップに交換していれば、当然その手間も増えていきます。あるいは、数人で来て一人だけがドリンクバーを頼んだのに、こっそり全員に供給するといったせこい事態も起こしやすくなります。お店側にとって、毎回新しいグラスやカップを持っていかれることは合理的でなかったのです。

 それが今は、まったく逆のルールを店側からお願いされているわけです。もちろん理屈ではわかっているものの、以前の常識がまだちょっと邪魔をしてきます。

 一杯のコーヒーを飲み干し、おかわりをしようと思った時、私の頭の中の令和な部分は新しいカップを使おうと指示を出しますが、一方で、まだ脳に居座っている平成が、新しいカップを使うのは傍若無人な振る舞いではないかと訴え、なんとなく躊躇してしまうのです。

 結果として、どちらの行為もはばかられ、あんまり飲まなくなります。飲まなければ波風は立たない。何杯飲んでもいいドリンクバーだというのにもったいない。
 
 まだしばらくは、そんなどっちつかずの思考で損をしてしまいそうだな。ドリンクバーに限らず。