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舞洲工場のデザインに対するフンデルトヴァッサーのメッセージ

 焼却工場と煙突は一体のものです。大きく攻撃的で冷たい表情を持つ建物は、人間おのおのが持っている創造性を活かすことにより、人間らしさを取り戻すことができます。建物の外観は中で何が行われているかを表現しています。立ちのぼる赤と黄色のストライプは焼却行程の炎をあらわします。屋根の緑化は自然と調和した人間生態系(エコロジー)なコンセプトを象徴するものです。この緑化は単に象徴だけにとどまらず、実際に大阪の人たち、特にここで働く人のために空気を浄化します。

 建物は高いほど醜いものは遠くまで見え、最悪の環境公害となるので、建築家は一層環境に対して注意を払わねばなりません。人間が不法に占拠してきた自然の領土をもう一度自然にかえしてやるべきで、そのために森のような緑化を行う必要があるのです。どんな煙突が自然なのか、自然にどんな影響を与えるのかを考える場合、人々の夢との調和を考えねばなりません。そういうわけで、私は遠くの人にも近くの人にも楽しめ、同時に高層ビルの工業化した醜さと好対照となりうる芸術としてこの煙突をつくろうと試みました。

 建築物における悲惨とも言える非人間的な不快さは、直線と画一性、無感情な冷たさ、攻撃的で無感動かつ心の通わぬ残酷さ、芸術性のなさ、砂漠のような均一性、殺人的不毛性と想像力の欠如というもので表現されています。絶対的な合理主義の時代は終わろうとしています。これからの新しい価値観は、より高度な生活水準を求めるよりも、ロマンチシズムへの憧れ、個性化、創造性の重視、自然との調和された生活などの普及がより重要になってきます。

 この煙突はこれから1000年に芽生えてくる新しい生命のシンボルとなるものです。大阪の舞洲工場は、技術、エコロジー、芸術の融合を表現したひとつのシンボルなのです。

自然と調和して生きよう。

私たちが自然の調和を乱してまで所有したものを自然にかえそう。

そして私たち人間として伸びやかに生きる夢を取り戻そう。

命あるものが、調和できない偽りの美しい世界を切望することなく。

                      (舞洲工場資料より)

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