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アニメーション撮影の基本処理
先日Twitterでアニメーションの撮影に使用するとあるソフトウエアを紹介したのですが、思った以上に反応がありました。
AfterEffectsのセルアニメ用プラグイン「KW_Effects」がアップデート。ついにM1プロセッサに対応!
— yoichi senzui@ナイス害 (@sen_cha) February 21, 2023
これでやっとM1のハイスペックでアニメ撮影が可能になるよ。https://t.co/SnCEqaclgI
After Effects動作確認: 2023
動作確認環境: M1プロセッサ Mac
動作確認OS: macOS13.2 Ventura
まず普通の人は使う機会の無いものですが、それなりに反応があったので、今回はアニメの撮影技術について少し書いてみようと思います。
紹介したソフトウエアはKW_Effectsというアニメーション撮影を行う上で最も基本になる機能をもったAdobe社のAfter Effects上で動作するプラグインソフトウエアです。
After EffectsはAdobe社が発売している画像合成やモーショングラフィックス、ビジュアルエフェクトを作成するアプリケーションです。現在日本の商業アニメーションではジブリ以外の会社ではほぼこのソフトウエアで最終的な撮影作業(コンポジット)を行っています。
撮影作業はAfter Effectsにセル、背景、CGなどの素材を読み込んで重ね合わせ、その上から各種の特殊効果を加えていきますが(ジブリでも特殊効果の制作には使用しています)これらの作業を効率的に行うためにサードパーティや個人開発者の作成したプラグインソフトウエアが多数存在します。また最近は各スタジオ独自に開発したプラグインも使われています。これらは番組最後のスタッフクレジットで確認することもできます。
そして今回取り上げたKW_Effectsもそのようなプラグインの一つなのですが、なぜ今回わざわざツイートまでしたかというとMac版が発表されたからです。
そもそもアニメ業界ではWindowsがメインで使用されていますし、自分自身もスタジオでの作業はWindowsを使用していますが、自宅ではずっとMacで作業しており、個人で受ける仕事も基本的にMacで行っています。アニメーションの撮影では基本となるセルを加工する必要があるのですが、AppleがArmプロセッサに移行したこともあり、ネイティブ対応するプラグインが無く、今まで使用していたプラグインもエミュレーションで使う事は可能でしたが本来のパフォーマンスを発揮できなかったのです。ということでKW_EffectsのM1対応は自分的には朗報で、ついTweetしてしまいました。結果、意外ににまだMac派も存在しているということを知ることにもなりました。
以下、KW_Effectsについて説明しておきます。
「KW_Effects」は、アニメーション制作専用のAfter Effects用画像エフェクトプラグイン集です。 日本におけるアニメ産業のワークフローに合わせて、2値化された画像に対する処理最適化を行い、 表現の幅を広げるために制作しました。これまで「夏目友人帳」「狼と香辛料」「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版 破」といった 著名なアニメ作品での活用実績があります。また、当プラグインは個人・商用ともに無償での利用が可能です。
KW_Effectsはご覧の通りアニメ制作に特化したツールセットでTVや劇場作品でも使用されています。
この中で特に重要なのは「2値化された画像に対する処理最適化」です。
2値化とは画像を構成する画像のピクセルの値をある閾値を堺に白と黒の2色のみの階調の無い画像に変換する処理のことです。昔のパソコン画面に表示されるような文字やドット絵のゲームの画面を想像してもらえればわかりやすいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1677377308314-CcgZjIls3a.png)
アニメーションで使用されるキャラクターなどのセル画像は基本このように2値化された画像を使用しています。これはセル画がデジタル化され画像として扱うようになった時にデジタルでのペイント(彩色)作業を効率的に行うために採用された仕様です。現在では2値化せずとも彩色が可能なツールもありますが、今も基本この形式の画像で作業されています。実際には色の塗り分けのために赤青緑の線も使用されされていますが階調は無く境界部分は上図のようなドット状態になっています。
しかしこのまま撮影したのでは画面で見たときに絵がジャギジャギの状態になってしまいます。そのために最適化処理をかけ、線を滑らかにする必要があります。そのためにアンチエイリアシングと呼ばれる処理を画像にかけます。一般的にスムージングとも呼ばれますが絵のエッジ部分を滑らかにする事ができます。KW_EffectsにもKW_Smoothingというプラグインがあり、このスムージング機能を提供しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1677378676873-lTx6ignk69.png?width=800)
以上のようにこのスムージング処理が無いと撮影そのものができないという最も基本になる機能なのです。これがやっと自分のネイティブ環境で使用できるようになったというのは業務上、本当に重要でした。OpenToonzなど他のツールでスムージングする方法もあるにはありますし、実際何度かその方法で作業をしたこともありますが通常のアニメ作品の作業をするにはやはりプラグインがあると助かります。
以上今回はアニメ撮影の基本中の基本、2値化処理のスムージングとKW_Effectsについて簡単に紹介しました。2値化処理に関しては昨今の表現の広がりから、いつまでもこれでいいのかといった声や、彩色に使用しているソフトのサポート終了による耐用限界など問題も指摘されていて、書きたいネタもあるのですが、そのあたりはまた別の機会があれば紹介したいと思います。
追記:2023/2/27
スムージングのプラグインはKW_Effect以外にも使われているものがあります。以下によく使われているものを紹介しておきます。
PSOFT anti-aliasing for Adobe After Effects
業界でよく使われている代表的なプラグインです。この他にもアニメーション制作に特化したプラグインのセットを販売しています。またセルルック3Dの制作でオブジェクトの境界線を描く専用のプラグインなども開発販売しています
OLM Smoother
ポケモンや妖怪ウオッチの制作をしているOLMも自社開発したプラグインを無償公開しています。こちらでもスムーザーの他にもアニメーション制作に特化したプラグインを公開しています。
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