サブスクと花

2020年11月〜2021年10月まで、葬儀社にいた。

まだ3年目の葬儀社で、私が居た生花部は部署が出来て2年目だった。

変わった葬儀社で、一般的な菊ばかりの祭壇ではなく、顧客と専属デザイナーが打ち合わせをしてデザインを決めていく。

生花部メンバーは私を含めて8人。私は将来的にいけばな祭壇を考えているとのことから入社することになった。

私が主に担当したのは自宅葬だった。華道家として、その場で余った花材や花束を花瓶に飾り直すことが出来るため、自宅葬が入ると私が行くことが多かった。

葬儀の祭壇制作は大変だったが、楽しかった。

朝の3時に起き、大田花卉市場に行く。8時にアトリエに戻って制作し、12時までに仕上げる。軽く食事をして、14時30分には斎場に着く。斎場は基本的に15時に開く。お客さんが見に来るのが17時なので、2時間で設営しなければならない。お客さんに花の説明をして、19時前にアトリエに戻り、ハイエースの清掃をして終わりだ。これが週3である。市場に行かない日は9時〜18時。

私はサブスクプロジェクトのリーダーと、句会に出ているとの理由から過去の祭壇のまでのコピーライト、またインスタグラムの広告を担当しており、車内でも常にiPadと向き合っていた。休む暇はない。

私の入社以前は母の日ギフトなども販売していたが、社長と直談判して辞めさせた。祭壇が最低10万円、母の日ギフトが1個あたり5千円。利益率を考えると母の日ギフトを30個売っても、一回葬儀やった方が断絶儲かる。

その代わり提案したのが花のサブスクだった。自宅葬を担当していたことで、サブスクの需要が意外と高いことに気づいた。会社でプラットフォームを用意すれば、仲卸業者に発送まで頼むだけでいい。生花部の負担は無くなる。

まずはブルーミー、ヒトハナ、日比谷花壇など既にサブスクを展開している企業を調査し、仲卸業者三社の代表とアポを取って話を聞いた。

そこでどの業者も仲卸が7割、花屋が3割の分配だと知る。しかもその3割の取り分から箱代を出さなくてはならない。そのうえ配送費がかかる。サブスク1回を2千円とすれば、取り分は600円。そして箱代等を出せば1個あたり500円。2千個売ってようやく100万円だ。

次にヤマト運輸の営業所に電話し、アポを取った。ここで知ったのはヤマト運輸が営業所ごとの独立採算であること。つまり、価格を営業所ごとに決められる。交渉の末、配送費をかなり抑えることに成功した(諸事情で価格は言えないが)。

これにより微量とはいえ生花部の利益を上げ、何より負担を減らすことに成功した私は、続いていけばな祭壇のプロジェクトに取り組んだ。

これもウケた。インスタグラムにいけばなを載せたこと、俳句で身につけた季語をテーマにした祭壇デザインと広告、すべて身を結んだ。

しかし、わずか1年に満たずに退社した。月に8日の休みも得られなくなり、会社に買い取ってもらうことも増えた。激務のために身体を壊してしまった。何より、自分で表現をしていきたい欲求が強くなってきた。

その話はまた後日。


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