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【第六回聴き湯会】お店に貢献する入浴所作 (風呂デューサー 毎川直也さん)

今回お話し聞いた方

毎川直也さん
法政大学で温泉の卒論を執筆。約10年、4ヵ所のお風呂屋で働く。並行して風呂デューサーとして記事執筆、イベント企画等行う。元改正湯番頭。

■Instagram
毎川直也(@furoducer) • Instagram写真と動画


これまで各銭湯の魅力や銭湯経営者の声を届けてきた聴き湯会ですが、今回は少し特別編「お店に貢献する入浴方法=入浴所作について」です。

銭湯や旅館の裏側を知ってるからこそ話せる、風呂デューサーの毎川さんにお話を伺いました。

一人一人が意識して、お店への負担を減らすことができたら銭湯への貢献になるはず。
入浴所作を身に付けて、銭湯・温泉ファンとしてのレベルを上げましょう!

入浴所作とは?

毎川さん
銭湯には「お店→お客さん」へ守ってもらいたい最低限のルールがあり、その上でお客さん同士が気持ちよく入れるように「お客さん同士」の入浴マナーがあります。

今回ご紹介する「入浴所作」は「お客さん→お店」への手助けのような意味合いをイメージしていただけたらと思います。

サウナブームではじめて銭湯に来た人などは、ルールがわからず、周りの人を真似して入浴することもあると思います。個人個人が入浴所作を意識することで、周りの人にも良い影響を広げることができるのではないでしょうか。

「お店に貢献する入浴方法」=「入浴所作」という視点でお伝えできたらと思います。

※今回お伝えすることはあくまでお店に貢献するための「提案」であり、お客さんとしていらっしゃる皆様に実施していただくようお願いするものではありません。

お風呂屋での {入浴所作  十三箇条}

其の一 1万円札は使わない!

毎川さん
入浴料金が500円として、1万円札を出されると9500円をお返しすることになりますが、一気に1000円札が出て行くことになります。

番台に大金を置いておくのも危ないので、足りなくなると裏に取りに行くのですが、その間番台を空けることになります。安全面でも次に来るお客さんのためにもできるだけそのような事がない方が望ましいです。

<ここでできる入浴所作>
例えば友達と銭湯に行く際には、
「あ、俺今日1万円しか持ってきてなかったからちょっとジュース買って崩してくるわ」という行為をさりげなく見せられると一万円札を使わない、というイメージを持ってくれるかも!

其の二 故障・破損・トラブルをすぐに伝える!

毎川さん
例えば、湯船がぬるかった時など、お客さんに言ってもらわないとわからない時があります。教えてもらえたらすぐ対応できるので、他のお客さんにも迷惑がかかる前に回避できます。

「何かあれば教えてね」と言うことをお客さんに周知できれば、それだけで不満の原因は減らせると思います。

倒れているわけではないけど、ちょっと具合悪そうにしてるとか、そういう時も一言声かけてもらえると気にできるので助かります。

故障や破損を見つけた際も同様です。場合によっては怪我につながることもあるので教えてもらえるとありがたいです。

<ここでできる入浴所作>
お店の人へ気づいたことを伝えるのは少し緊張しますよね。
浴室でのトラブルを見つけたら「あの人大丈夫かな?」「お湯がいつもよりぬるく感じたかも?」みたいに疑問形で気軽にお店の人へ伝えてみましょう。

其の三 みんなと同じ列のカランを使う!

毎川さん
例えば、お客さんが少ない時、使っている人がいる列のカランといない列のカランがあるとします。

誰かが既に使っていたカランの列の配管にはお湯が届いていますが、しばらく誰も使っていなかったカランの列の管は冷えて水になっている可能性があります。その列のカランを使おうとするとお湯が出るまで時間がかかるためその間に出た水は捨ててしまう。

小さなことではありますが、誰かが座っている列のカランを使うことで、結果お店の光熱費の削減につながります。

<ここでできる入浴所作>
他の人が使っている列のカランを利用する。

其の四 イスを使わない!

毎川さん
椅子を使わず、地べたに直接座る。

椅子は細かい傷がついて、どうしてもそういうところに汚れが溜まってしまう。そういうのを洗い落とすのもお風呂屋さんの仕事の一つではあるんですけれど、なるべく溜めないようにという視点で考えると、地べたに直接座って泡を流せば椅子は汚れないですよね。

銭湯って屈み仕事が多いので、腰痛持ちが多いです。なので、屈んだ分だけ健康寿命が縮まっていると考えると、使わないことによって椅子を洗うときの力を込める力量が減れば、若干腰の方への負担も減るのかなと思います。

これは私個人の感想なんですけど・・・
椅子に座ってる人より、地面に座って体洗ってる人の方がなんか"通"っぽくてかっこよくないですか?という提案でもあります。

<ここでできる入浴所作>
地べたに座って、通っぽく身体を洗おう。

其の五 桶は洗って戻す!

毎川さん
体をこすったタオルを桶で洗って、水の表面に浮いてくる垢や洗剤をさっと流しただけで所定の場所に戻すみたいな方が結構多いと思うんですけど、できれば水面と桶が接してるヘリの部分をこすって、残った垢を次の人に残さないようにしてもらえるいいと思います。

それを、お店が掃除してないって思うのか、他のお客さんがガッツリ体洗った人だったねぐらいに捉えるのかは、人それぞれだと思うんですけど・・・自分が使った後はヘリの部分をこすって次の人がその垢の肌触りを感じないように綺麗にして戻してもらえたら非常にお店に貢献できると思います。

<ここでできる入浴所作>
お借りしたものは全て、洗って戻そう!

其の六 利用した後は、カラン周辺の床を流す!

毎川さん
カラン周辺が泡だらけでなかったとしても、最後にざっとカラン周辺を流してあげると周りの人への気配りとして「あの粋な風呂の入り方ってイイ!」という風に思うかもしれませんね。
他のお客さんがそれを見て真似れば、そのお店の治安が良くなり、お客さんの質も上がり、気持ちよく入浴できるようになるかもしれません。

<ここでできる入浴所作>
自分が利用したカランだけでなく、隣の分まで洗い流してあげよう!

其の七 手荷物はすぐ奥へ!

毎川さん
脱衣場の使い方の所作です。持ち物や服を脱いだ順にロッカーの奥に入れていく。要は下着が一番手前に来るように置いて、持ってきた手荷物やリュックサックとかを一番奥に突っ込んでおくっていうことですね。

銭湯の脱衣場のロッカーはだいたい3つぐらい縦に並んでるケースが多く、特に混んでるお店でそこの前に陣取って着替えてしまうと周辺のロッカーを使ってる人が使えなくなるし、気を遣いますよね。

脱いだ順に奥に入れていくということは、つまり着る順に手前から並んでいるということ。入浴後にささっと着替えることができます。
手前に服が入っていると、ざっと服だけとってよそで着替えたりしやすいので、ロッカー前の混雑を軽減できます。

<ここでできる入浴所作>
脱いだ服を奥から順に詰めて、手前から順に着ていく。無駄のない着替えは、カッコイイ大人の入り方の一つですね!

其の八 混雑の時間帯は避ける!

毎川さん
混雑しやすい時間帯はだいたい決まっていて、19時〜20時とかの夕飯時は割と空いてるケースが多いです。あと、平日の閉店間際は空いてるイメージですね。逆に開店間際は割と混んでるというイメージでいてもらえると良いと思います。

もしそのお店の混雑時間帯を把握しているのであればなるべく避けてもらえると、非常に助かります。

もちろん混んでるから来るなってことではないです。ただ、混んでない時間帯に入浴する方が、よりリラックスできる入浴タイムになると思います。

<ここでできる入浴所作>
GoogleMapの「混雑状況」なども活用して、空いた時間に余裕をもって入ろう!

其の九 固形物は流さない!

毎川さん
銭湯には「排湯熱交換器」というものがあります。冷たい上水を少しでも温めてから釜で沸かした方がエネルギーの節約になるので、排水の熱を活用して上水を温めています。
なので、排水は直接下水に流れるわけではなく、排湯を溜めておくタンクに一旦ためて、その中を取っている上水が通る配管に熱を伝えています。固形のものがそのタンクに入ってしまうとタンクが汚れて、熱の交換の効率が悪くなったり、つまりの原因になるかもしれません。

<ここでできる入浴所作>
知り合いに見かけたら、側溝に固形物を流さないように伝えてあげよう。

其の十 痰や唾を吐かない

毎川さん
それを見た他の人はどう思うかというところで、当然そんないい気はしないですよね。さらに、お客さんが多いと水を下水に送りきれなくてちょっと逆流してる時もありますよね。そういう時、痰や唾が洗い場に流れていると思うと、ちょっと嫌じゃないですか?

<ここでできる入浴所作>
どうしてもしたい時は口に手を添えたり、排水口があるところでして最後に水で流す!

其の十一 カギを無くさない!

毎川さん
下足札やロッカーのカギを失くしてしまうケースは結構頻繁にあります。
だいたいは手首に巻いたままでしたとか、こっちのポケットに入ってましたとか、お客さん自身で解決できるケースが多いんですけど、たまに本当にない時もあるんですよね。

気の短い人はそれで怒っちゃったりする人もいて・・・

<ここでできる入浴所作>
自分がいつも入れるポケット決めておく!
そういうふうにしてるんだという話を他の人にもしてあげられるとトラブルも減る!

其の十二 浴室にはタオルを持って入る!

毎川さん
基本的なことだと思うんですけど、そもそもタオルを持ってこない、持ってきてもロッカーにしまったままで、濡れたまま脱衣所に上がる人が結構います。

タオルを持っていない時は番台で買ってくれればいいんですけど、手ぶらで来てタオルについて何も触れない人もいて、この人あがるとき、体拭かないよなみたいな・・・
お店の人が濡れた脱衣所を拭きにいかなければいけないし、それを見た他のお客さんもまあ別にそれでいいんだったら手間減るしいいやみたいな人も出てきてしまうかもしれない。脱衣所が濡れていると滑って怪我したり、靴下が濡れたりとトラブルも発生します。

自前のタオルを持ってくる、なければ買う、という姿勢で入浴していただけると助かります。

<ここでできる入浴所作>
どの銭湯でも「手ぶらセット」の販売をしているので、教えてあげよう!

其の十三 撮影厳禁!

毎川さん
お風呂の撮影をしたい方もいると思うんですけど、基本的に撮影はNGです。

特に、営業中の撮影は絶対厳禁で、お客さん誰もいないから撮らせてと言われても、断るようにしてました。お店を開けたらお客さんが入って汚れたり、桶や椅子が乱れたりして、万全な状態じゃありません。もし勝手に写真を撮ってSNSにアップして、何か問題があり、それを他の人が見てこのお店ってこんななの、と思われて行かなくなる、という可能性はゼロじゃないんですよね。

どうしても撮影したい時は、事前に電話なり連絡してもらって、店開けする前に入って撮るっていうのがこちらとしては一番安心。「写真撮りたいから店が終わる間際に行こう」とかそういう行為はすべきではないと思っています。

許可を取って写真を撮る時にも、SNSに載せるっていう旨も伝えてもらって、さらに「お店に許可をもらい撮影しました」という文言を掲載しましょう。

<ここでできる入浴所作>
事前に許可と目的をしっかりと伝えてから撮影を行う!

番外編! 温泉旅館での{所作 三箇条}

旅館でも働いていた経験から、旅館利用の所作もお伝えできればと思います。

其の一 遅刻連絡は必ずする!

毎川さん
夕飯の時間を過ぎて到着することが分かった時点で、宿に連絡を入れてください。

決められた夕飯の時間に合わせて調理してるんですね。その時間に1番美味しい状態で提供できるように作ってます。 連絡がなくて冷めてしまうと、美味しくなくなってしまうのはもちろんですが、何よりすごい心配します。事故があったのかな?もしかして電話受けた時に日にち間違っちゃって受けたのかな?みたいな。そういう不安を解消するためにも、電話で連絡を入れてあげてください。

<温泉旅館での所作>
到着予定時間の1時間前までには一度連絡を入れよう!

其の二 部屋の荷物を広げたままにしない!

毎川さん
部屋に到着した後、使うものをワッーと出したいという人もいると思うんですけど、旅館の人が各部屋を回って布団敷くところだと、物が散らかってると荷物の片付けから始めといけないんですよね。

1箇所1箇所での片付けはそこまで時間かからなかったとしても、全体で見るとすごい時間がかかってしまいます。

腰痛持ちのお風呂関係者は多くて、特に布団の上げ下げってすごく腰に来るんですよ 。なのでそれプラス荷物片付けるために屈む回数が増えるとなると、従業員の健康寿命を縮めることにつながるわけで、永くその旅館が存続していくためにも実は重要です。

間違って踏んづけてお客さんの荷物を壊しちゃった、などのトラブルも避けられるので、物を広げっぱなしにするのはやめましょう。

<温泉旅館での所作>
荷物は、1 箇所にまとめておく!
同行者の荷物も端にまとめてもらおう!

其の三 臭いのキツイものは食べない!つけない!

毎川さん
これは私の実体験なんですけど、旅館で働いてた時に友達が来てくれて酒盛りをしたんですね。そしたら次の日、部屋が酒臭くなっちゃってて・・・食べ物のニオイって部屋に残るんだなって思った経験があったんですよ。

ニオイって簡単に取れないんです。次の日にその部屋に入るお客さんがいるとなると確実に迷惑がかかってしまいます。 ニオイのきついものを部屋で食べないようにしてもらえると宿としては助かります。

<温泉旅館での所作>
大広間やBarで適切に飲んだり、食べたりをしよう!


編集後記

今回毎川さんより伺った入浴所作は、「お店に貢献する」という考えを軸として「他人に強要する」のではなく、「自分が手本となる行動をして広めていこうという」行為です。

所作を、知っているか・知らないか、だけでも大きく違いが出ると思います。少しずつでもできるようになれば、銭湯ファンとしてのレベルが上がると感じました。

あくまでお店への貢献の仕方の一つですので、各々がやりたい入浴所作を実践していき、所作を見た人たちの心を晴れやかにするキッカケになれば良いと思います。

昨今のサウナブームで銭湯への来客が増え、入浴の仕方をよく知らない人も増えている今だからこそ、銭湯ファンの私たちが率先してカッコイイ入り方を実践するときだと感じました。

<銭湯再興プロジェクトとは>

銭湯ファンの私たちがどうやって銭湯に貢献できるかを考えて活動中。
銭湯に初めて行く人、銭湯に通っている人、銭湯で働く人、銭湯を守ってきた人……そんな人々のココロほてらす活動をしていきたいと考えています。

メンバー募集中です!



風呂デューサー毎川さんと銭湯再興メンバー



開催日:2023年1月22日
執筆・編集:安井、みむちゃん
バナーデザイン:みむちゃん

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