見出し画像

【女湯事件ボ02】風呂の帰りに、旦那と買った鈴廣。

年の瀬の銭湯。

どこの銭湯でも、コロナへの嘆きと
かすかな来年への希望とで溢れている。
いつも程おしゃべりできなかった、女湯の脱衣場。
この日は、久しぶりに賑やかな時間に遭遇した。

鈴廣のかまぼこ_銭湯OLやすこ


お客:これから●●スーパーに、かまぼこを見に行くのよ。
女将:あなたの住所だと、××スーパーの方が近いんじゃない?
お客:毎年”鈴廣のかまぼこ”が、そろそろに半額になるのよ。
女将:”鈴廣”の!それはいいわね。高いやつ?
お客:ピンキリだけどね。昨日はまだ半額じゃなかったの。
女将:”鈴廣”なら、いいわよ。
お客:毎年ね。見に行ってたのよ。
女将:ああ。
お客:ここの帰りにもさ、行って。
   別に、普段は思い出さないんだけどね。
   「あの人」とかまぼこの値段、見に行ったなーって思い出してね。


そう言って、お客さんは派手めに笑った。
どうやら話から察すると、お客さんは最近 旦那様を亡くされた様だ。
私を挟んでおしゃべりしすぎじゃん?って思って、ごめんなさい。

鈴廣のかまぼこ02_銭湯OLやすこ


きっと銭湯に来る道中でも、
”鈴廣”の事を思い出しながら 来たんじゃないかな。
「あの人」がいない年末。
買い物話を持ち掛けた様で、旦那さんとの思い出話だった。

常連さんの話を反芻して、女将さんはそっと話を聞いていた。

私はそっと「ありがとうございました」と会釈をして、2人の間を抜けた。
「よいお年を」と言われ、あわてて「よいお年を」と返した。
そうか今は年の瀬。

常連さんが鈴廣が半額で買える季節。


@新宿区のとある銭湯
やすこ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?