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もし君が人生においてつぎのものよりも善いことを見出すなら

「もし君が人生においてつぎのものよりも善いことを見出すならば、―――すなわち正義、真理、節制、雄々しさ、要するに君の心が君にまっすぐな理性にかなったことをさせてくれるごとに自分自身にたいしておぼえる満足や、自ら選ぶことなしに割りあてられた事柄について運命に満足していることなど―――さよう、もし以上のことよりも何か善いものが発見できるならば、全心をもってそれに向かい、君の見つけた最善のものを享受するがよい。
 しかしもし君の内に座を占めているダイモーンよりも善いものはないように思われるならば、―――そのダイモーンは個人的な衝動をすべて自分の配下におき、もろもろの思念を検討し、ソークラテースのいったように、感覚的な誘惑をのがれて、神々の支配の下に身をおき、人類のためにつくすものであるが―――もし他のあらゆるものはダイモーンよりも小さく価値のないものに思われるならば、それ以外の何ものにも余地を与えるな。」(中略)
 「だから私はいうのだ、君は単純に、自由に、より善きものをえらび取り、これをしっかり守れ。『しかしより善いものとは有利なもののことだ。』もしそれが理性的存在としての自己に有利ならば、それを守るがよい。しかしもしそれが動物的存在としての自己に有利ならば、それをはっきりと表明して、思いあがることなく自分の判断を固守せよ。但しこの検討をあやまりなくおこなう注意が肝要である。」(マルクス・アウレーリウス(121-180)『自省録』第三巻、六、pp.40-42、[神谷美恵子・2007])

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