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法に対する道徳の影響

制定法は(a)受けいれられた社会的道徳(b)広範な道徳的理想の双方から、多くの点で影響を受け、その安定性の一部を道徳に依存する。立法や司法過程、制定法を補填する原則など多様な方法で、法は道徳を反映する。(ハーバート・ハート(1907-1992))】
 「(ii)法に対する道徳の影響 あらゆる現代の国家の法は、受けいれられた社会的道徳および広範な道徳的理想の双方からの影響を、たいへん多くの点で受けていることを示している。こういった影響は、立法によって突然に公然と法に入ってくるか、あるいは司法過程を通じて静かに少しずつ法に入ってくるかである。合衆国のようないくつかの体系においては、法的妥当性の究極の基準のなかに、正義の原則あるいは実質的な道徳的価値が明らかに含まれている。最高の立法府の権限に関して、形式的な制約の存在しないイギリスのような他の体系においても、その立法は正義あるいは道徳に注意深く従っているといえよう。法が道徳を反映する仕方はさらに多様であり、その研究はまだ十分されてはいない。制定法は法的な外被にすぎず、道徳的原則の助けをかりて補填されるよう明文で要求するかもしれない。強行可能な契約の範囲が、道徳や公正の概念によって限定されるかもしれない。民事的、刑事的に不法な行為に対する責任が、道徳的責任に関する広く行きわたった見解に照らして調整されることがあるかもしれない。どのような「実証主義者」も、これらが事実であり、法体系の安定性が、部分的には道徳とのそのような一致に依存していることを否定できないであろう。法と道徳には必然的な関連があるということをこの意味にとるならば、両者にこのような関連のあることは認められなければならないであろう。」
(ハーバート・ハート(1907-1992),『法の概念』,第9章 法と道徳,第3節 法的妥当性と道徳的価値,p.222,みすず書房(1976),矢崎光圀(監訳),明坂満(訳))
(索引:法に対する道徳の影響,道徳,社会的道徳,道徳的理想,制定法)


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