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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション前章 レビュー

これほどレビューしたくない作品もなかなか無い

ネタバレしようがないけれど

 劇場で観たって全部は分からないんです。だって前章なんですもん。でもそれ以上に内容が分からないんですよ。

 分からなさが心地良いことってあるんだと思うんです。

 それでも本編についての言及はしますので、視聴を検討している方は是非読まないでいただきたい。

声優が絶妙すぎる

 上映時間が多分120分ぐらいなんですけど、正直言って最初の60分は何見せられてるんだろう・・・って思いながら見てました。

 幾田りらさんもあのちゃんも声をキャラクターに当てるのは想像以上には上手いなと思いつつも、このシーンはシュールギャグとしてやりきっているのか、本気で笑かそうとしてきているのか、そういう区別が分かりづらい部分は結構ありました。

 それが演出によって為されているのか、ただ単に演技が下手なのかが微妙なラインなんです。

構成がヤバすぎる

 お話を通してみて一番最初に出た感想がこれ。構成がヤバい、無論いい意味で。

冒頭

 地球がクソやばい事を我々に伝える導入。これはクソやばそうと期待が高まります。

序盤

 と思いきや、いきなりクソやばい状況から3年後に飛び、クソやばい状況を人類(特に日本人)が受け入れながら生活しているという、それはそれでクソやばい状況を見せられるんです。
 淡々と日常生活が進みます。

 ただその間も、何だかきな臭い状況が続きます。何かにつけて悪いインターネッツを凝縮したような演出や人物が登場するんです。

・ネットでみんな言ってる!と陰謀論めいた事を声高に叫んじゃう子
・米軍の新型ミサイルによる汚染を怖がる毒親
・就任して間もないのにクソやばい状況になり責任逃れしたくなってる総理大臣
・違法献金疑惑からの体調不良で入院する大臣
・東京をトンキン呼ばわりする地方民

 世間を皮肉ってるような造りで、最初はふふっと思えていましたが、あまりにも散見されすぎてだんだん食傷気味に。

 でもきっとこれも狙い通りだったのでしょうね。

中盤

 物語が動き出した。主要人物が死んだ。でも思っている以上に登場人物たちは過剰に悲しみすぎない。非常事態だから仕方がない。そうして全てを諦め、受け入れているかのように映る。

終盤

 ここからが本作の真骨頂。というか、ここをしっかり描き切るために冒頭~中盤までご丁寧に非常事態下での日常生活を私達に見せ続けさせたのだと、そう思わされました。

 だからそう、構成に天晴というのはそういうところを言いたいのです。

 上映90分間使って我々視聴者に、思ってたほどクソやばくない日常を感じさせ、残りの30分間でやっぱりこの世界クソやばいじゃねえか!!!って思わせてしまう。
 そのクソやばい状況を後章まで指くわえて待ってな坊っちゃん。と言わんばかりの構成。

 完全に製作者側の掌の上で踊らされている感覚。

 そして少女時代にうつってから、りらさんとあのちゃんの演技が変わってきます。こっちの時代は神がかっています。

脚 本 吉 田 玲 子

 エンドロールを見て更に納得させられた。脚本を担当なさっているのがまた吉田女史か!

 本作に監督という人間は配置されていないが、アニメーションディレクターという肩書の人がそれに相当する人なのだろう。

 黒川智之さん。うーん、この方も存じ上げている。PSYCHO-PASSやらウマ娘でちょくちょくお名前を拝見する。

 なるほどこの2人がタッグ組んでたらそら強いわ。

 エンドロールはそれほど雄弁に我々に語りかけてくれる。


 本作の評価は後章を見終わってからでないと出来ないと思います。だって分からない事が多すぎるんですもん。
 でも後章までの期待感の煽り度で言えば、100点満点中100点付けていい。

 そういうレベルでした。クソやばいから皆も見ろ。

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