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量より質。

2022年も残り1週間ほどで終わってしまうので、ぼちぼち今年を振り返ってきます。

まずは今年のNo.1映画にして、マイお守り映画ベスト5に堂々入りした映画

「CODA あいのうた」

について

クチコミでの評判を耳にして、今年の春先、映画館へ観に行った。

もう、めちゃくちゃに泣いた。

良い映画を観た後の帰り道って、なんて恍惚感に包まれて足取りが軽いんでしょうか。

耳の聞こえない家族の元に一人健常者として生まれたルビーは、家族の通訳をしながら家業を支え暮らしているが、高校で合唱部に入り歌の才能に目覚めていく。だが、”音楽”が分からない家族に対して自分が見つけた本当にやりたいことを、どう理解してもらうのかを描く、家族愛に溢れた青春映画だった。

内容はもちろんのこと、特にすばらしかったのが音楽。

ジョニ・ミチェルの「Both Sides Now」

デヴィッド・ボウイの「Starman」

2曲とも名曲なのでメロディーは聞いたことはあったけれど、映画の中で歌われるエミリアジョーンズの歌声と相まって、電撃に打たれたように心底惚れてしまった。
映画のサントラversionと原曲を繰り返し何度も、骨の髄まで浸透するほどに聴いた。

聴きすぎて自分で奏でたという思いに至り、ギターも購入してしまった。

間違いなく今年の私に多大なる影響を与えた曲たち。

良い映画には良い音楽がつきものですね。

そして最近アマプラでも観れるようになったので2回目の鑑賞。
はたまためちゃくちゃ泣いた。

良い映画には良い音楽と、そして心に残り続ける宝物のようなシーンがある。
だからわたしはお守り映画と呼んでいる。

音楽を理解することができない家族だけれど、ルビーが発表会で周りのお客さんを感動させていることから、ルビーの才能に気づく。
無音になることで音楽が視えることを表現した演出に、心が震えた。

その後お父さんはルビーの歌声をどうしても聴きたいと、自分のためだけに歌ってほしいと、喉に触れながら、その歌声を振動で感じる。

そして、ルビーの才能を感じた家族はルビーの背中を押すことを決め、音楽学校のオーディションへと向かう。
試験で「Both sides now」を歌い始めるが、家族がこっそり観ていることに気づいたルビーは、手話を用いながら歌い試験に臨む。

一番近しい家族に理解してもらえなくても、伝えたいという思いと、歩み寄るその姿勢から感じる家族の大きな愛と絆に、涙が止まらなかった。

耳が聞こえるとか聞こえないとか関係ない。

伝えたいという強い思い、それを受取ろうとする双方の思いがあれば、通じ合えるのだという希望を感じた。

ルビーの母はルビーが生まれたときに、自分と同じで耳が聞こえない子であって欲しいと祈ったと言う。分かり合えないと思うから。

障害の垣根を完全に取り除くことなんてできないし、当人の苦しみは当人にしかわからないけれど、違いを理解して、相手に合わせたコミュニケーションで歩み寄れるかが大事なのだと思った。

言葉がすべてではないということ。

私たちは言葉に頼りすぎているから時にそんなシンプルなことも忘れてしまう。

言葉で伝えられるのにすれ違ったり、言葉を狂気にして傷つけてしまうこともある。
せっかく言葉で通じ合えるのだから、言葉を大事にしようと戒めのように思った。

今期のドラマ「silent」でもそのようなテーマを扱っているけれど、
もし自分が難聴者になり無音の世界で生きることになったらとか、反対に身近な人が耳が聞こえなくなったらどう関わっていくべきなのかとか、自分事で考えて想像してみる。

障害のあるなしに関わらず、他人の全てを理解できないことを理解し、違いを受け入れた上でどれだけ歩み寄れるか。
そんな優しさの余白を与え、豊かにしてくれる作品だった。


映画を一本でも多く見なければ、と、焦りみたいなものもあったけれど、

自分がほんとうに良いと思う映画を、節々でなんどでも観ることのほうが、価値があるのではないかと思うようになった。


映画は、出汁のように味が出続ける。

観るたびに、感想が変わる。

自分の経験値や環境によって

多面的で変化するもの。

一本の作品に、自分が反映される、
時間芸術だと思うから。


今年観た映画は数こそ少ないけれど、最高の一本に出会えた2022年でした。


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