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窓からそっと手を出して

「フジファブリックの陽炎をラジオで聴いた。名曲だね」と母がLINEをくれた。

大粒の雨が垣根を叩いている様子や、おでこの脂が雨を弾いている感覚、15:45、コンクリートから昇る水蒸気の匂い、(おそらく日本人の)五感に迫りくるこの曲は、私も名曲だと思っている。

かつての自分も隣のノッポにバットを借りたような気がするし、何なら自分が男の子だった気もしてくる。ウエストがゴムの半ズボンにTシャツをしまっている。

訃報があった際、私は大学生だった。朝霞台のセブンの前を歩いていたところで、まず地元の友達からメールが来た。それとほぼ同時に、サークルの男友達から電話が来た。「私ちゃん大丈夫かなと思って、あと俺も誰かに話したかったし」折りたたみ式のガラケー越しに、優しいその人が、そう言ってくれたのを覚えている。

当時から私はフジファが好きで、20才になって最初に聴いた曲が「Sugar!!」だった。ハタチの貴重さは今ほど分かっておらず、世間のこともこれっぽっちも知らなかったけれど、きっとこのタイミングで聴く曲は記憶に残ると思った。その上でiPodをくるくる回し、「でもきっと、悪くはない!」そう唄っている曲を意図的に選んだ。

「真夏のピーク」
8月後半になると、毎年決まってこのフレーズがトレンドに入る。志村さん知ってんのかな。10年以上も前のフレーズが、令和の時代も(そうそう、年号変わったんですよ)なお響いていること。どうですか。

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