中の人が「平和」という言葉を積極的に使わない訳ー韓国の戒厳令の宣言と失敗からあらためて決意
2024年12月3日深夜、突然ネットが騒がしくなってきた。なんと、韓国でユン大統領が戒厳令を敷いたというのだ。「なんてこった!」が中の人の第一声でした。
情報を追跡していると国会周辺に大勢の市民が集まり、戦闘警察と軍が押し返されていることが分かってきました。そして国会議員が次々と登院。臨時国会を開き、戒厳令解除を決議。大統領もこれに従い、軍も引き上げました。戒厳令は不発に終わりました。
わたしは仕事でテレビもみておらず(だいたい、家にもテレビはないー価値がなくなったから)、新聞は夕刊がないので、もっぱらXで情報を入手しました。
軍の指揮官がまずは実弾なしで出動させたこと、韓国の有名俳優が後輩の特殊部隊員に命令への対処について説得していたこと、韓国軍では命令ではなく法に従えと教えられていたこと…。また、前大統領が軍に対し「国民に対抗する誤りを再び犯すべきではない」とポストしていたことも明らかになっています。
一方で、軍は最初の制圧が成功すれば次には制圧用のゴム弾などを装備した部隊を出すなどエスカレートしたであろうとの指摘もあり、最初に市民が結集できたことが戒厳令不発の大きな力となり、国会議員もバリケードを超えて窓から国会に入り職責を果たしていたことが明らかになりました。中には、82歳の議員もいたとのこと。そして、日本の報道機関も特派員が国会内にいて、その後の情報発信に携わっていました。
中の人は、集まった市民、議員、そして戒厳令に解除条項を入れていた先人、発砲しなかった軍にそれぞれ敬意を表しました。また、事態を生中継し続けた韓国のテレビにも賞賛を送りたいと思います。
韓国では民主的な政権交代ができるようになったのはまだ40年くらいのこと。光州事件など、民主化運動の弾圧といった歴史を潜り抜けて現在があることを思うと、そんな世代の積み重ねが、今回の危機感につながったという数々の指摘は的を射ていると思います。闘争継続中という言葉も流れており、そんな緊張感が今回の事態に役立ったとみられます。
◇
さて、中の人は、これまで400件以上のnote記事を書いていますが、意識して「平和」という言葉を避けています。これは中の人の信念であり、他者に押し付けるものではないことを前提に読んでいただきたいのですが、「平和」という状況は「ない」と思っています。現在は「戦争状態にない」だけであると。
今が「平和」と考えることは、ある種の守りであると考えています。守りに注力される方も居てこそですが、中の人は積極的に発信して警鐘を鳴らし続ける「攻め」によって、戦争を回避し、結果的に戦争にない状態を継続していきたいと考えています。自分でできる範囲ではありますが、自腹を切って何物にも妨げられず、忖度することもなく、過去を掘り起こして、あるいは現代の話題について発信することで、常に戦争状態に陥る危険性があることを訴え続けたいと思っています。
いかに安定して見えていても、一度何かのきっかけで歯車が動くと、止めようもなく悪い方に加速して「戦時体制」「戦争状態」にいくこと、失政のつけはすべて弱者に回ることなどを、徹底して伝えていきたい。そうして関心を寄せてもらうだけでも、戦争を阻止する意識を広げることになると。
今回の韓国の戒厳令阻止を見るにつけ、権力者が一度暴走し始めると、早期に抑え込むことが肝要であり、それには普段の努力、常に流される危機感や過去から学ぶ事例に触れることで研ぎすまされる意識が必要と痛感させられました。デモや政治の不正などに触れるのも、そんなところに戦争状態を阻止する鍵があると思うからです。
今回の韓国の戒厳令から直接学べることは、おいおい新聞などが深堀していくでしょう。中の人は、象徴的な日本の政治家の発言を取り上げたいと思います。
これに対する中の人の返信がこちら。
「韓国で何が起きているか、分からない。でも、日本でも起きる可能性がある。だから緊急事態条項が必要」と。何か分からないと断言しておきながら、「分からないことが日本でも起きる」って、何を言いたいか分かりません。実は、前段の韓国で何か起きているという部分は、前振り以外の何物でもなく、それと無関係に、日本でも何が起きるか分からないから、それに備える緊急事態条項が必要という、自分の主張を並べただけなのです。
しかし、引用ポストは戒厳令を布告したとの内容。戒厳令が起きていることは承知しているはず。戒厳令の前段に何かがあって戒厳令を敷いたと勘違いしている面も考え得るのですが、その「何か」が分からないのに、やみくもに「緊急事態条項」を訴えるのは、混乱に乗じて戒厳令のような緊急事態条項の必要性を訴えたといえるでしょう。
この発言に対しては、戒厳令を肯定的に捉えている発言として批判するポストが圧倒的で、リポストも批判する引用がほとんど。リプも批判が大勢を占め、1,000万PVに対して「いいね」が1,152にとどまっているところから見ても、頓珍漢な発言であり、隣国への無理解と、どさくさ紛れに権力者に都合の良い「緊急事態条項」を売り込む姿勢が反感を受けたこと、ありありとしています。
このように日本において権力者は、隙あらば弾圧法規を設けようとしています。スパイ防止法なども、やがて恣意的に使い始めるでしょう。それを抑えるのが公開請求などによる運用の透明化ですが、近年は答弁しない、何でも黒塗りで出す、存在をごまかすという、「見せない、聞かせない、言わない」の「三ない」が顕著になっています。そんな所から、権力者は徐々に準備を進めていくのです。
隣国の対応に学ぶこと、それは国民が「常在戦場」並みの高い関心を持って、政治に、権力者に向き合っていないと、いずれ大きな圧政が来ること。権力者は、権力のさらなる強大さと確実性を常に欲しています。その歩みに待ったをかけられる報道、行動できる市民、見極めて投票し声を出せる国民が、とても大切なことであると。