システムエンジニアと、システム"ズ"エンジニアの違い

日本において「システム・エンジニア」という名称の指す職種は、海外とは異なるようです。それについては、Wikipedia:システムエンジニアでも説明されているので読んで頂きたいのですが・・・。

以下は、わかりやすいエピソードがないかと探していた中でたまたま見つけた、NASAのシステムズ・エンジニアさんによる配信です。
「2. システムズエンジニアってナニ?」の3:00頃から本題に入るので、ぜひ聞いて頂きたい!!

・・・で、聞いて!って言ってもなかなか聞いてくれる方は少ないので、書き起こして大事なところを抜粋しました。目を通してみてください。

システムズエンジニアってナニ?

僕の肩書き、システムズ・エンジニアですね。
よく日本で、システム・エンジニアって言いますよね。
僕らっていうかアメリカでは、一般にシステム・エンジニアっていうことが多いんですね。
日本で言うところのSEっていうシステム・エンジニアは、主に情報システムの構築に携わるような ITエンジニアですよね。
こちら(アメリカ)で言うシステム・エンジニアっていわゆるシステム工学に関わる技術者、システム工学、システムの絡むところ全てに関わるエンジニアです。なので情報システム、ITシステムだけに限らない。
いわゆる「概念設計」とか、「上流設計」っていう言い方をするんですね、僕らは。上流~下流の上流ですね。その川が上流から下流に流れるようにその上流部分を設計する。つまり、まだ何も決まってないような、曖昧な段階の決定事項を決めていく人。

(概念設計の「概念」って目的ってことですか?)
目的は決まってる。ミッションの目的は決まってて、じゃあ大体ざっくりとどんなミッションにするか、例えばローバー(探査車)を使うのか、ただの着陸機を使うのか、どんなものを送るのかとか何も決まってない状態から概念はまず考える。
(火星に探査機を送るけど実際何を送るかとかそういうことですか?)
そうそう、火星のサンプルを取って帰ってきたいってことは決まってる。それが目的ですよね。目的が決まってて、じゃあそれを達成するのにどんな風にするか?すればいいか?っていう、その次の段階を考えるエンジニアなんですね。システム全体を考える。

(システムって何なんですかね?)
定義はありますよ、一応。 複数の要素が合わさって一つの目的を達成しようとするものですよね。その複数の各要素、要素はそれぞれ固有のなんか機能を持ってるわけですよ。
タイヤだったら転がるという機能を持ってますよね。でもタイヤの転がるという機能は、例えばどこかに行きたいっていう目的は知らないで転がってますよね。そういう風に、その1個1個の要素は大きな目的が何か知らないけど自分の機能をただ果たしてればいい、自分の機能をただ全うするっていう、その複数の要素が合わさって作ったひとつのものがシステムです。
設計が始まっての初期段階、初期設計というんだけど、そこをやるのが僕らシステムズ・エンジニアの主な仕事です。

(その後にガチのエンジニアがやるわけですよね?)
そうそう、だから一旦大きいことがざっくり決まったら、そのシステムを構成する一つ下の階層のいろんな要素のことをサブシステムって言うんだけど、各サブシステムの専門家たちが詳細設計をしていくわけです。
(じゃあサブシステムに渡してしまったらシステムズ・エンジニアの仕事は終わってるってことですか?)
そんなことは多分なくて、各サブシステム間の調整役っていうのは基本的にシステムズ・エンジニアの仕事なんで、まあいわゆるリーダー的な、プロジェクトマネージャーって言うと言い過ぎなんだけど、まあ各サブシステムのインターフェースを調整する人たちみたいな仕事ですね。

システムズエンジニアってエライ?

(でもそんな全体の動きを見渡すような仕事を、若造だと思うんですけど?全体の中で見ると。やっていけるんですか?)
別に「指示する」とかじゃないから。むしろ「意見を乞う」というか、専門家様のご意見を「お教えください」と。
概念設計する段階ですでにエキスパートたちの(見解を)、ちょっとずつ取り入れるわけですよ。取り入れつつこういうのってあり得るとか、もちろんそういうやり取りをしながらやってますよ。
僕らだけで概念設計をまず完全に終わらせて、はいじゃあ専門家たちお願いしますっていう感じじゃないですよ。

(日本の感覚から言うと、それって部長の仕事なんですよ。部の中に課があって、課のそれぞれの動きを全体で掌握するイメージなんですけど。部長ってどんな人がなるかっていうと、課を歴任した人。だからシステムズ・エンジニアっていう専門職を、若いキャリアの時からスタートさせてるっていうのが、なんとも不思議だなという感じがします。)
まあ確かに日本人の感覚はそうでしょうね、日本にそういうポジションってないから。
(ないでしょうし、普通に考えてそのサブシステムの経験をされた方がシステムズ・エンジニアになった方がスムーズというか)
でも、その人は一つに深いだけですよね。
(だから何個か回すのが日本ですよ)
ジョブローテみたいな?ジョブローテし終わるまではシステムズ・エンジニアになれないじゃないですか?効率悪いよね。

一つ一つの部品、サブシステムの詳細設計じゃなくて、ミッション全体のことを考えて、例えば安全とか低コストとか、ミッションを成功させるための全体のトレードオフをするわけです。
ハイレベルって言うとね、ちょっと語弊があるっていうか日本人の方々は勘違いするかもしれないんですけど、要はその抽象度の高いレベルで検討するわけですね。
実際ぶっちゃけでいうと、広く浅くなんでも屋さんです。
でも一方でやっぱり本物のエンジニアって言う気はしてないんですよね。
彼らは実際にその実機を作ったりするわけじゃないですか?実際に実機に積むソフトウェアを書いたりとか、実機に積むそのハードを作ったりとか。
だから僕らシステムズ・エンジニアはね、なんか偽物って言ったらあれだけど、ちょっとうさんくさいっていうか机上の空論っていうかね。

システムズエンジニアになるには何が必須なスキルですか? 

必須なスキルはね、特にないです。
(コミュニケーション能力なんじゃないんですか?)
言っちゃうとそうですね。僕にはそれはないんですけどね。
僕に何ができるかっていうと、例えば何かを数学モデルにすること、それをMATLABとかでコード書いて計算回すくらいですよ。そういうソフトウェアがあるんですけど。例えば、ある問題があって、どうするのが一番良いかなって考えなきゃいけない。例えば、一番コストがかからない方法はどれかとかっていう問題があったとして、それを全部数式に置き換えるんですね。 
(そんなことできるんですか?) 
小学校の頃から文章題の訓練とかしてきたでしょ?りんごが3つありましたとかね。あれのクソムズい版ですよ。クソムズいっていうか答えがない版だと思ってください。そういう問題があって、それを数式に置き換える、それがいわゆる数学モデルを作るということですね。

(それがシステムズ・エンジニアの仕事なんですか?)
それを最初にやって、ひとたび数式に置き換えたら今度は計算をするんですけど、答えを出すためにね、計算するんですけど、大体は手計算で済むようなシンプルな問題じゃないんですよね。むちゃくちゃたくさんの計算をしなきゃいけないような、複雑な問題なわけですよ、大体は。で、じゃあそれをコンピュータに解かせようってことになるんですけど、次に必要なのがプログラミングのスキルですよね。でも、僕は大したプログラミングスキルは持ってないんです。っていうか、そもそもコードのスキルは必要ないです。 コードのプログラミングスキルは、システムズ・エンジニアには必要ない。必要なくて、最低限の自分が作った数学モデルを、コーディングするのに十分な知識があればよいです。っていうか、なければググりながらコード書きますよ。で、コードが書けたら、いろんな条件で計算を回してみて、結果が出てきますよね、何かしらの結果が。その結果を考察して何かしらの結論を出すと。 

(そしてそれをサブシステムに落とすんですか?) 
そう。だからこの結果を考察すると、やっぱりローバーはソーラーパネルで行こうとかなるわけですよ。このぐらいの大きさのソーラーパネルで大丈夫とか、そういう結果が出るわけですね。で、これだけです。必要なスキル。あとは幅広い好奇心というか、何でも学ぼうとする意欲と。
(なかなか持てないですね、それはね、年取ってくると。)
あとはスペシャリストというよりはジェネラリストであるという精神。
一個の専門に特化するというよりかは、全体を?いわゆる広く浅く、さっきも言ったけど、広く浅く何でも屋であるという精神があれば、システムズ・エンジニアにはなれるんじゃないですかね。 
(例えば、概念設計しました。で、サブシステムそれぞれの仕事をし始めてるんだけど、その後で、やっぱり違いました、やり直してください、みたいなことあるんですか?発見してなかった問題に気づいたとか?)
あり得るでしょうね。だから何ラウンドも何ラウンドも設計はするんですけどね。そこまで大きなループは描かないにしても、ちっちゃなループで何周も何周も設計はし直しますよ。初期設計の段階だけでも 何周も何周もやり直しますよ。

(ちなみに、日本のシステムエンジニア、SEってアメリカで何て訳せば正しいんですか?) 
知らん・・・ITエンジニア?・・・知らん。
(じゃあ難しいですね。自分のこと、職業を話す時、肩書きが日本で。)
日本に浸透してないからね。
(何ておっしゃってるんですか?) 
日本で言うとSEって思われちゃうね。だから別に何も言ってないですよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?