見出し画像

承認欲求の膨張に注意せよ!裏のキーワードは「承認欲求のコントロール」(動画の文字起こし)

(語り:鳩山紀一郎、長島令和)

鳩山・長島:こんにちは。
鳩山:ということで、今回も前回に引き続いて、日本先進会のキーワードについてお話ができたらなと思うんですけど、前回は表のキーワードっていうことで、正義、シンプル、ガバナンス。この3つをこれから使っていきましょうというような話になったというふうに思ってますけども、今回はその裏のキーワード、そして、承認欲求のコントロールというのをご提案くださってましたけれども、それについて深くお話ができたらなというふうに思ってます。
 それで、そもそもですけど、承認欲求って何かという話なんですが、これには「マズローの欲求5段階説」というのがあります。この欲求5段階説によりますと、要は、人には5つの欲求の段階っていうのがあって、その一番基礎的な欲求が満たされると次の欲求に移っていくと、そういう理論ですよね。
 一番根底にあるのが生理的欲求っていうもので、食べるとか、寝るとか、トイレ行くとか、そういった欲求です。それが満たされると、次には安全欲求っていって、外的とか病気、それから自然環境、そういったものから身を守りたいというような欲求が出てくる。それらが満たされると、今度は社会的欲求っていって、自分が社会、家族とか、グループとか、友達関係とか、そういう社会の一員になりたいというような欲求が出てくると。
長島:帰属したいという。
鳩山:帰属したいというような欲求ですよね。これが満たされてくると、その次に出てくるのが承認欲求で。これは、自分が集団から認められたいし、自分自身も自分を認めたいというような、そういった欲求になってくるというふうになってますよね。これが、いわゆる出世欲とか、そういうのに関わってくるような気がしますけど。
長島:プライドとか、自尊心とか、自己顕示欲とか、いろんな言い方はあると思いますけど。
鳩山:いろんなものに関わってくるんでしょうね。これらが満たされると、最後に出てくるのが自己実現欲求ということで、自分らしさを発揮したいというような欲求。いわゆる職人の方たちというのはこれの極致みたいな、そういうことなんじゃないかなというふうに思います。
長島:自分らしく生きる。生きたいと。
鳩山:といったような5つの段階の欲求があるうちの、その4段階目にあるのが承認欲求で、これに目を付けたということだというふうに思いますけれども。そもそも欲求っていうものに今回目を付けたっていうのは、どうして目を付けましたか。
長島:それは、政治というものの機能は、やっぱり国民が幸福になろうとするのを助けるという役割があるはずだと。これはもう前回もお話ししたとおり、人々が多様である中で、多様な人々が幸福になろうとしたら、やはりぶつかり合うんですね、自由と自由が。その自由と自由がぶつかり合って、ほんとはみんな幸福を求めてるのに結果不幸になっちゃうみたいな、そういう悲劇を回避するために政府というものが、ルールとか、制度とか、そういうものを作る。これが政治なんだと思うわけですけれども。じゃあ、人々が幸福を求めるというのは、裏を返せば欲求を満たすということなんだと思うんですね。
 今お話しいただいたマズローの欲求5段階説というのは、もちろん完璧なフレームワークではない。なぜなら、何度も申し上げているように、人々多様ですから、こういうピラミッドの形だって、ほんとは多様ですと。なんだけれども、ざっくり共通している要素っていうのを考えてみると、こういうピラミッドというのがざっくり当てはまるだろうというのは確かだろうと思いますので、この枠組みを使って政治について、あるいは社会について考えてみるっていうのは非常に有効なのかなというふうにまず思っていました。
鳩山:心理学における理論というのは、基本的には、確実にこういう体系の中で人は考えてるということを示すようなものではない……。
長島:絶対的なものであるはずもない。
鳩山:ないですよね。ただ、こう考えると、いろいろ説明ができるんじゃないかというような理論。
長島:説明がつきやすいし、社会が見えやすくなるということだと思うので、これは最大限有効活用すればいいのかなと思ってるわけなんですが、それを踏まえた上で、なぜ私が、日本先進会の裏のキーワードとして承認欲求のコントロールというものを提案してるかというと、結論としては、承認欲求、先ほどのおさらいをすると、自己顕示欲であるとか、自尊心であるとかプライドみたいなものが、今、社会全体として、個々人のそういったものが膨張し過ぎた結果、いろんな社会問題とか、社会の機能不全みたいなものにつながっちゃってるんじゃないかなと思うんですよね。
 そもそも承認欲求ってものは、この1個上の自己実現欲求ってものを内包していると思っていて。自己実現って、先ほどおっしゃっていただいたように、自分らしく生きたいという話も、孤独なままで自己完結していたらあんまり意味ないですよね。例えば職人が何かは作るとしても、社会的にそれが価値があるもの、必要とされてるものだからこそ作るのであって、ただ作るってわけではないと。
 という意味では、やっぱり職人が作るものというのが人から価値を認められたり、必要とされたりということが重要だと思うので、承認欲求の中に入ると思うんですよ。すなわち承認欲求は自己実現欲求を内包している、含んでいるというふうに考えてしまえばいいと思うんですけれども。
 それはさておき、日本先進会は以前に、あるいはこの本の中でも少し説明していますけれども、「最適厚生主義」というものを掲げています。それは健康、安全、教育という、人間にとってなくてはならない非常に重要な領域については、国家、政府が合理的に最大限介入して人々が幸福になりやすいようにするということなんですけれども、その健康、安全、教育っていうのはまさに、ざっくり言うと、マズローの欲求5段階説の下から3つ。生理的欲求とか、安全欲求とか、社会的欲求っていうものを満たすためのものなんですよね。
鳩山:そう考えられますね。
長島:健康、安全というのはまさに生理的欲求とか安全欲求ですし、人間が社会的生き物であって、自由とか多様性は前提としつつも一定の社会化というのが必要で、そのための教育っていうものが教育の考え方ですから、それが社会的欲求につながっていく。社会的欲求を満たすことにつながっていくと。
 なので、この3つっていうものをどれだけ理想的な状態、完璧な状態に近づけていけるかっていうのが政治のミッションだと思うんですけれども、それを妨げているのがこの承認欲求の膨張なんだと思うんです。なので、それをどれだけコントロールできるか。自然体で人々が生きていると、どうも個々人のプライドとか自己顕示欲とか自尊心みたいなものが膨張し過ぎてしまうということをまずみんなで認識した上で、それが膨張した結果として、その下の欲求が満たされる度合いが高まるのを邪魔しちゃっているのであれば、それはやめましょうよというのが承認欲求のコントロールっていう話なんですよね。
鳩山:承認欲求って、じゃあ、ほっておくとどんどん膨張してしまいやすいというふうに考えているってことですね。
長島:やっぱり人間って人から認められたい、価値があると思われたい、うらやましいと思われたい、あるいは自分自身でそう思いたい、自分自身のことを誇らしく思いたい。その気持ちは分かります。分かるというか、それは自然なことです。
鳩山:自然ですよね。
長島:まさにマズローが言ってるのは、こういうもんだと言ってるわけなので、承認欲求があること自体は否定されるべきものではない。それは確かなんですけれども、でも、個々人が持ってる承認欲求が膨張して、それがぶつかり合って負の影響を社会に与えてしまうっていうのは、これはよろしくないと思うので、これをどうにか社会全体として、教育ってものも含めてですけれども、いろんな政策領域でコントロールしていくか。コントロールした結果として、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求というのをより満たす度合いを高めていけるかというのが一つの大きなミッションなんじゃないかなと思うんですよね。
鳩山:それを承認欲求のコントロールというふうに表現されたわけですね。
長島:これはほんとに、でも、承認欲求の膨張が社会に悪影響を与えているっていうのは、はっきり言って例を挙げようと思ったら、ほんとにいくらでも挙げられると思うんです。
鳩山:枚挙にいとまがないと。
長島:その例に関しては、これからまさに会員募集を始めるわけですから、会員の方々であったり、それから政治家とか、有識者の方々と対話とか対談をしていく中でいろんな例をみんなで考えていけたらなと。みんなで考えることによって承認欲求の膨張が社会に悪影響を与えているということをみんな認識して、それをどうやって変えていけるだろうかというのを考えていけたらなと思ってるんですよね。
鳩山:承認欲求が膨張して、それが社会にどう影響を与えるかっていうのをみんなで考えていくというのはとても良い考えだと思うけれども、例えばどんな例が挙げられますか。
長島:例えばですけれども、今日この動画を撮影している時点で申し上げますと、Twitter上で、コロナが収まった後に財務省が消費税を10%から15%に上げようとしてるみたいな、そういう観測というか、話が出てきていて。これって、結論からいえばあり得ない話で、やるべきではないということなんですけれども、なぜ財務省という組織が、これまでもそうだったし、おそらくこれからもそうなんですけれども、事あるごとに増税をしようと。財政破綻とか、ハイパーインフレという言葉で国民の不安をあおって。
鳩山:怖がらせて。
長島:増税をしようとするのかというのは、やはりこれは承認欲求っていうところに帰着すると思うんですよね。それはどういうことかというと、増税すなわち徴税というのは、財務省のある意味最大の権力なわけです。もちろん予算策定も彼らの権力ですけれども、やっぱり徴税というのは非常に大きな、国民に対する権力なわけです。その権力というものがなかったら、彼らは仕事がなくなっちゃうし、仕事がなくなればプライドも持ちようがないと。
 でも、それっていうのは、東大法学部の人たちも多い財務省の方々っていうのは、もうとにかくプライドが高いはずですから。
鳩山:高いでしょうね。
長島:自分たちの権力っていうものが相対化されるのは許されないわけです。例えば今の日本経済の状況とか、MMTという正しい経済理論に基づけば、増税なんてあり得ないんだけれども、増税をするということで自分たちの権力を誇示するというか。それがまさに彼らの承認欲求を、ある意味充足しているわけなんですよね。でも、それによって国民生活が悪くなってしまったり、政府が実行すべき政策をできませんと。その結果、下の3つの欲求が充足できなくなってしまうっていう弊害が発生するわけで、まさにこれは承認欲求の膨張の一つの例だと思うんですよね。
鳩山:確かにそうかもしれませんね。彼らが、実際に、よく考えたら、それによって国民生活が良くなるとは思えないはずなんだけれども、だけれども、彼らにとってみれば、徴税あるいは増税をするということをしていかないと彼らの存在意義がないというか、彼らの欲求が満たされないというために増税っていうのを常に掲げ続けるというところがあるのかもしれませんね。
長島:こういう構造が社会の至るところに。完全に同じような形ではないんですけれども、いろんな形で承認欲求の膨張が社会を何か悪くしてしまっていると。生理的欲求、安全欲求、社会的欲求が満たされない方向になってしまっているという問題がほんとに至るところにあると思うので。
鳩山:ありそうですね。
長島:それをつまびらかにしていくことでみんながいろんなことに気付くようになるし、政策を考えていく上でも非常に重要なのかなと思うわけなんですよね。それがまさに裏のキーワード、承認欲求のコントロールということなんです。
鳩山:では、これからどうするかということでいうならば、どういう事象が承認欲求の膨張による弊害なのかということをいろいろ、われわれとしてもご紹介していったりとか、あとは、会員の方々からもいろいろ例示をしていただいて、これは違いますか、これはどうですかというような例を挙げていただいて、それに基づいて議論をするみたいな、そういう活動をやっていけたらいいってことですかね。裏のキーワードに関しては。
長島:まさに社会全体という、もう非常に大きなくくりでもこれは有効だと思いますし、それだけじゃなくて、個々人のある意味細かい悩みとか、心配事とか、そういうことにも実は同じようなことが言えると思うんです。
鳩山:それはそうですね。人間の基本的な欲求ですからね。
長島:人間社会の基本的な話なので、これはちょっと掘り下げていきたいなと思ってます。
鳩山:面白そうです。それは今後、ぜひ皆さんからの意見も取り入れながら、伺いながら、議論をぜひ深めていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?