なぜ日本先進会は「道州制」に反対なのか?ー道州間の財政格差を容認することはできない!ー

こんにちは。昨日は大阪都構想について書きましたが、その中で「日本先進会は基本的に道州制には反対である」と述べました。今日はその理由について説明したいと思います。

繰り返しになりますが、そもそも道州制とは、日本全国を「いくつか(たとえば10個)の道州」に分割した上で、安全保障・外交・金融を除いて、基本的に全ての中央政府の権限・財源を各道州に移譲するということであり、これは非常に抜本的な地方分権策と言えます。そして維新が究極的な目標として道州制を掲げているのは、地方分権こそが日本の再生につながると考えているからです。改革を掲げる維新は、中央政府の官僚および国会議員こそが日本を停滞・衰退させてきた張本人だから、地方分権によって中央政府の権力を解体しなければならないと考えているのです。

もちろん日本先進会も、日本には改革が必要だと考えていますし、これまで改革を怠ってきたのは中央政府であり、その究極的な責任は国政の政治家にあると考えています。しかし中央政府に問題があるからと言って、その権力を解体するために地方分権、より厳密に言えば道州制が必要だという考え方には、日本先進会は反対なのです。

その最大の理由は「財政」です。道州制が実現されれば、中央政府の財源が各道州に移譲されることになります。つまり各道州の政府は、自らの責任や裁量で税金を集めて、使うことになります。これは「自分たちのことは自分たちで決め、解決する」ということであり、まさに地方分権そのものです。

しかしここで問題になるのが「財政格差」なのです。各道州は独立した財政運営をしなければならない。つまり必然的に、道州間で大きな財政格差が生まれてしまい、社会保障や教育などを中心とした全ての行政サービスに格差が生まれてしまうわけです。これでは日本という国全体として、個人の権利を最大限に尊重することはできません。日本先進会は「健康・安全・教育」という領域では、国民に対する政府の介入を「合理的に最大化」すべきと考えていますので、財政格差が原因で発生してしまう道州間の行政サービスの格差を容認するわけにはいきません。

もちろん、このような主張に対して、道州制論者は「確かに財政格差はデメリットかもしれないが、道州制のメリットもきちんと考えるべきだ」と反論するでしょう。そのメリットとは具体的に言えば、「道州制によって地方自治体が切磋琢磨するようになれば、行政サービスの質は全体として確実に上がる」ということです。

しかし日本先進会は、切磋琢磨をすべきなのは個人や企業なのであって、地方自治体ではないと考えています。社会保障や教育などを中心とした全ての行政サービスは、質の高さが重要であることは言うまでもありませんが、同時に重要なのは「平等性」なのです。

その点、コロナ禍における大阪府の吉村知事の発言が注目に値しました。大阪府が「医療従事者への寄付」というふるさと納税を設定したことについて一部で批判が起きたのですが、それについてコメントを求められた吉村知事は「それは地方自治体の切磋琢磨による結果だから問題ない」と発言したのですが、日本先進会はこのような考え方には全く賛同できません。ふるさと納税によって起きるのは、「ある地方自治体から別の地方自治体への財源の移転」です。つまり、大阪府がふるさと納税を受け取るということは、別の地方自治体の財源が少なくなることを意味している。そしてその分、その別の地方自治体では医療従事者に報酬を支払うことはできなくなってしまうということなのです。

もちろん、「それなら他の地方自治体も大阪府と同じことをすればいいではないか」と主張する人もいるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。大阪は関西ではNo.1、全国でもNo.2の大都市圏であり、その首長である吉村知事は必然的にその他の自治体の首長より発信力をもっているに決まっています。つまり、同じように「医療従事者への寄付」というふるさと納税を設定しても、お金の集まりやすさは全く違う。それを踏まえれば、「地方自治体の切磋琢磨による結果だから、それによって医療従事者の報酬に差が出ても問題ない」ということにはならないはずなのです。

そしてこれは、「健康・安全・教育」という領域で、財政格差による道州間の行政サービスの格差は容認できないという話と、基本的に同じなのです。

とにかく、道州制によって地方自治体の間で根本的な財政格差が生じることは許されません。ただもちろん、日本先進会は維新の問題意識である「納税者利益につながらないムダな行政を徹底的に排除すること」および「消費者利益につながらない非合理的な規制などを排除すること」は必要だと考えています。しかしそれは「道州制」ではなく、あくまで中央政府を合理化することによって成し遂げるべきだと思うのです。

それこそが、「真に政策本位の新しい政党をゼロから作る」という日本先進会の挑戦なのです。

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