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主体的に取り組む態度をどう評価しますか?

『ヤマ場をおさえる学習評価ー深い学びを促す指導と評価の一体化入門ー』(石井英真、鈴木秀幸)

新学習指導要領における学習評価のあり方について示唆に富んだ本著。ここでは「主体的に学習に取り組む態度」について書いてみたいと思う。

成績の時期ですね。

三観点のうち、個人的に最も難しいと感じているのが、「主体的に学習に取り組む態度」(以下、主態)である。
みなさんは、どうですか?

「挙手の回数やノートを取っているかなど、性格や行動の傾向が一時的に表出された場面を捉えるべきでない」とか「AACやCCAは原則あり得ない」などよく耳にするようになった。しかし、なぜそうなのかについて本著では詳しく述べられている。

主態は、中教審の報告によると大まかに2つの側面に分けられる。
①知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取り組みを行おうとする側面

②①の粘り強い取り組みを行う中で、自らの学習を調整しようという側面

主態については、単に継続的なやる気を認め、励ますだけでなく、教科として意味のある学習への向かい方ができているかどうかを評価していく方向性が見て取れる。

さらに、主態のみを単体で取り出して評価するのではなく、「思考・判断・表現」などと一体的に評価していく方針が示されている。例えば、長く試行錯誤の機会を伴うパフォーマンス課題を設計し、その過程と成果物を通して「主体的に学習に取り組む態度)と「思考・判断・表現」の両方を評価するといった具合である。

先述した「挙手の回数」や「ノートを取る」
または「授業態度」や「提出物)などはこれまでの「関心・意欲・態度」を評価するには、当たり前のように行われてきた。しかし、価値規範や道徳的価値わ評価することは、個々の性格やその人らしさを値踏みする全人評価につながりかねない、という危惧がある。そのため、「評価」はしても「評定」することには慎重になる必要がある。

とはいいつつ、これまでの「関心・意欲・態度」に近い資料で評価することは引き続き妥当であると述べられている。すなわち、パフォーマンス評価(観察法、作品法、ポートフォリオ法)が適している。
また、「自己調整」の側面に注目するなら、自らの理解の状況を振り返るとか、他者と協働して自らの考えを相対化するとか、自分の学び方を省察的に振り返るなど、状況を設定する必要がある。ここに関しては、やはり単元設計を工夫した授業改善の必要性を感じている。

しかしながら、本著が指摘するように、文科省が示している観点の趣旨は、教科によってかなり異なっていて、メタ認知能力に言及していない教科もある。粘り強く学習に取り組む態度に関しても教科によって違う。教科によって扱いが異なるのは、この観点を評価する扱いの難しさを示しているといえる。

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