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学習観の転換〜学びを子どものものに

『超具体ー自由進度学習はじめの一歩ー』(難波駿)

今年行っているブッククラブ仲間である難波さんの初単著。

私は、常々これからの時代は教師がどう教えるかではなく、「子どもの学びを教師がどう支えるか」という学習観の転換が必要であると考えている。

本著における難波さんの6年に渡る実践は、まさにそのことを体現しようとしたものである。

自由進度学習は、愛知県の緒川小学校などで取り組まれていたものであるが、個別最適な学びや令和の日本型教育などが叫ばれてから最近また注目を浴びるようになってきている。

難波さんの提案は、自由進度学習を子どもの実態等に応じてフレキシブルにカリキュラム編成できる点が素晴らしい。自由進度学習を5分、10分、20分、35分、単元1時間分、単元2時間分…等と取り組む場合の具体例が詳細に紹介されている。
5分からでも取り組めるというところが、自由進度学習に興味をもったが二の足を踏む人には受け入れられやすいだろう。まずは、「少しやってみる」ということができる。さらに、どの教科でも汎用性があり、教科横断的に取り組める点も興味深い。図工と家庭科、体育と音楽の2教科同時進行の取り組みなどは目から鱗であった。

著書を読んでいくと、難波さんが実に多くの書籍をこれまでに読んできて、影響を受けてきたことがわかる。年間数百冊読書をする難波さんならではだ。私も難波さんほどではないが、本を読むことを日課にしている。随所に、「これはきっとこの本の内容に基づいているのだろえな」と感じる部分がある。
例えば、自由進度学習の進め方の「ミニレッスン→準備進度学習」は、「リーディングワークショップ」や「ライティングワークショップ」の実践に基づいていることが推測されるし、環境の工夫は「センター」と呼ばれる欧米の実践に基づいていることがわかる。目標設定のためには、「SMARTゴール」を採用している。多くの読書体験をご自身の実践に広く生かしている。


ブッククラブの中で、子どもの「自立」を目指すのか子どもの「自律」を目指すのかという話題になった。難波さんは本著では、「自律」を採用している。以下は、難波さんが「自律」と捉える理由だ。

私は学校教育においては「自律」の側面が強いのかなと感じていました。理由は2つあります。1つ目は、教師というリーダーの存在。自分で決めて、自分で行動する子どもたちを育てたいと授業形態を工夫していますが、それでも教師が方向性を示したり、大きく逸脱しないガードレールのような存在は必要だと考えるからです。2つ目は、教科書等やカリキュラムがある程度の枠組みで決まっている以上、そこから学ぶ基本路線はあるのかなと感じて、「自律」の力を育てていく方がいいのではと感じていました。「自律」を積み重ねた先に、自立した人間があるイメージでした。

さらに、本著でも以下のように述べられている。

主体的な学びというのは、「自分の自分の学びがコントロールできること」だと考えるべきではないか。前向きであること、前のめり、まちろん大事なんだけれども、自分で自分の学びがコントロールできる、つまりそれは、「自分の課題を、自分の力を運用し解説するとともに、その成果物を自分のものにしていく」ということだと思います。
本著p129

学校教育において教師の権威性は認めながらも、「自律」とは子どもが自分自身をコントロール・マネジメントすることでより良い生き方を目指し、自分の人生を自分で切り拓いていくための力のことではないだろうか。難波さんの哲学を感じるところである。

さらに、本著の中で特筆すべき点は、自由進度学習が放任学習にならぬよう、数多くの手立てが取られているところである。挿入された写真や図、巻末にあるワークシート集を是非活用していきたい。

私自身も自由進度学習を実践しているが、学ぶべき点ばかりであった。4月からの実践をさらに改良していきたい。

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