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答えよりも問いを見つけること

『たった一つを変えるだけ』(ダン・ロススタイン、ルース・サンタナ、吉田新一郎訳)

本書は
①すべての生徒は、自分で質問が作れるようになる方法を学ぶべきであること

②すべての教師は、生徒の質問づくりを授業の一貫として教えられるようにすること

の2点を目的に書かれている。

よく授業では、教師がどのような発問をするかよって、授業の方向性そのものが決まってしまうため、発問研究が重要でえるとされる。しかし、本書はでは、教師は質問をしないとしている。その代わりに、子ども自身が素材から問いを見つける。

本書で提案する質問づくりは、とてもわかりやすい。授業のほとんどは元のままでいいからだ。だから、「ちょっとやってみようかな」で取り組める。実際日本でもこの本に影響を受けて、過去NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演した元中学校教諭、鹿嶋真弓氏も研究を行い、本を出版されている。

質問づくりの段階は7つある。

①「質問の焦点」は教師によって考えられ、生 
  徒たちが出す質問の出版点となる。
②単純な四つのルールが紹介される。
③子どもが質問を出す。
④子どもが「閉じた質問」と「開いた質問」を
 書き換える。
⑤子どもが優先順位の高い質問を選択する。
⑥優先順位の高い質問を使って、教師と子ども
 が次にすることを考える。
⑦ここまでしたことを子どもが振り返る。
 (学んだことは何か?どのようにして学んだ
 か?学んだことをどのように応用できそう
 か?など)

①質問の焦点を決める。

子どもが質問を出すための引き金になるものであり、それをきっかけに質問を出す材料。短い文章、写真や動画、表や図など何でも構わない。
質問づくりの授業では、ここが肝になる。つまり、効果的な質問の焦点にならないといい質問が出ない。効果的な質問の焦点には、4つの特性がある。

①明確な焦点をもっている。(課題、テーマ、 
 大切にしたいことを短く分かりやすく提示す
 る)
②質問ではない。
③刺激によって新しい思考を誘発する。
④教師の好みや偏見は表さない 

②4つのルール

4つのルールは以下の通りである。

①できるだけたくさんの質問をする。
②質問について話し合ったり、評価したり、答
 えたりしない。
③質問や発言通りに書き出す。
④意見や主張は疑問文に直す。

この4つは簡単そうに見えて意外と難しい。②において、つい出された質問に対して話したり、評価したり(いいね!なども含めて)してしまうからである。
だから、著者は話し合いの前に、ルールを実行することの価値と難しさを話し合うことを推奨している。

③質問を出す

このフェーズでは、提示された質問の焦点からできる限りたくさんの質問を出す。
3〜5人のグループに分け、ルールを守りながら質問を出す。(5分程度)
教師はこの間、例を挙げたり、質問を言ってあげるようなかたちでのサポートはしない。

④質問を書き換える

ここでは、出された質問を「閉じた質問」と「開いた質問」に分類し、それを相互に書き換える作業を行う。前者は、「はい」か「いいえ」で答えられる質問に対して、後者は説明を要する質問のことである。
どちらか、判断に迷う時があるが、中間という立場をとってもよい。
「開いた質問→「閉じた質問」
「閉じた質問」→「開いた質問」と書き換えることで、質問を操る能力を身につけ、質問を使うことに自信をもち、自分で問題解決ができる方法を見つけ出すことができる、と述べられている。

⑤優先順位をつける

優先順位をつけるというのは、とても重要なスキルである。しかし、現状はほとんど見過ごされています。子どもは、自分の前にあるものに価値を見出したり、優先順位をつけたりすることをまだ知らない可能性が高いからである。
このフェーズでは、実に重要なスキルを使う。
比較、分類、分析、統合などといったように。子どもは優先順位の高い質問を3つ選び出し、なぜそれを選んだのか根拠を提示する。

⑥質問を使って何をするか考える

ここまでで出された質問は学習の過程の中で建設的に活用することができる。質問づくりこら授業を始めることもできるし、授業の最後に質問を出すこともできるし、学習過程の途中で、形成的評価として質問づくりもできる。
出された質問はグループないし、クラス全体のプロジェクトで生徒たち自身によって使われる。

⑦学んだことを振り返る

このフェーズでは、自分たちの取り組みについて振り返りを行う。新しく知ったこと、感じたこと、できるようになったことについて、学びについて語る。振り返りには、5〜8分の時間を確保する。

本書で提案されている「質問づくり」の良さは、何といっても取り組みやすいことである。カリキュラムそのものを大幅に変える必要はないし、今の枠組みの中で十分に行っていける点だ。子どもの問いを大切にしたいと考える人にはぜひお勧めしたい一冊である。

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