とある一人の男が占い師になるまで #19 ~信用金庫職員編~
渉外係を担当する事になってから3カ月が経過しようとしていた。
3人のメンバーで渉外業務をこなしていたが、突如、メンバーたちを脅かす存在となる人物が、本部から送り込まれる事になる!
.....................................................................................................................................................
「山内君、この通達見ておいて」
出勤早々、先輩職員に促されて通達に目を通してみる。
内容を見てみると…。
「債権管理部の職員が各営業店付で債権管理業務を行う」
というような事が書いてあった。
債権管理部とは、本部にある部署のうちの一つであり、簡単に言うと、回収の見通しが立たないような債権の管理・回収業務を行っている部署という事になる。
私には今回の通達の内容がいまいちピンと来ていないが、どうやら債権管理部の担当者ごとに複数の支店の債権管理を任される事になり、今後は各担当者がそれぞれの支店にほぼ常駐する事になるらしい。
当然、M支店にも債権管理部の職員が一人就く事になるのだが、それだけだと特に影響はないように思える。
ただ、渉外係長も先輩職員も、どこか浮かない表情をしている。
『この△△部長代理という方がM支店を担当する事になるんですね?』
「うーん、ちょっと厄介かもな……」
「大変かもしれませんね……」
渉外係長と先輩職員はそう口にした後、黙り込んでしまった。
そして数日後……
渉外係の部屋で朝の準備をしていると、次長と一人の大柄な男が入ってきた。
「おはようございます!」
男が挨拶してきたので、渉外係のメンバーも挨拶を返す。
「債権管理部の△△です」
「よろしくお願いします」
なるほど、この人が債権管理部の△△部長代理か。
何か威圧感のある人だなあ……。
「△△代理と話し合ったんだけど、渉外部屋には空いてるデスクがあるから、△△代理にはそのデスクを使ってもらおうと思うんだけど、良いかな?」
次長が渉外係長に提案する。
「はい、大丈夫です」
係長が返答する。
ちなみに、その空いているデスクとは、私の隣にあるデスクの事だ。
実際、この人はM支店の渉外係に配属された訳でなないし、単に活動拠点としてM支店の渉外部屋を利用するだけだと思っていたので、その時私は特段気にする事はなかった。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
そう言って、次長は部屋から去っていった。
しばらくの間、〇△部長代理は渉外係長と会話をしていた。
部長代理がグイグイと話しかけているのに対し、係長はどことなく他所他所しい感じがするのが気になる。
ふと、〇△部長代理が突然私に話しかけてきた。
「君は何年目なの?」
『あ、はい、入社して2年目です』
「え、という事は、もしかして渉外は1年目?」
『あ、はい、そうです』
「融資は経験しているの?」
いきなり、痛いところを突いてきてくる。
『……いえ、してないです』
「じゃあ、これから融資の勉強もしないとね!」
『はい……』
なぜか、私に対してもグイグイと話しかけてくる。
その間、渉外係長も先輩職員も黙ったままだ。
「ところで、君の名前は?」
『あ、山内と言います』
「え、山内君って、もしかして財務3級100点取った山内君!?」
『……え、ええ、そうです』
「君の事は知っているよ!」
「君には期待してるからね!」
「頑張ってよ!」
『あ、はい、ありがとうございます……』
そう言って、彼は私の肩をポンと叩いた。
私は彼の勢いに圧倒されてしまっていた。
相変わらず、渉外係長と先輩職員は黙ったままである。
特に渉外係長は、私が彼と話している事に対してあまり面白くないように感じているようだ。
私も本当は自分の仕事に集中したいのだが、債権管理部の部長代理というそこそこ偉い人から隣の席で話しかけられているのに無視する訳にもいかず、相手をせざるを得なかった。
財務3級の100点についてもあまり触れてほしくないし、いきなり期待していると言われたところで、現時点で私にできる事など限られている。
私は何となくだが、この〇△部長代理という人に対して胸騒ぎを覚えていた。
何か、「この人と深く関わると、あまり良くない出来事が起きるのではないか」と感じていたのだ。
そしてやはり、この部長代理の存在は、今後私の心に大きな葛藤とストレスを与える事になるのだった。
To Be Continued ➤
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?