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Photo by
inainaco
立方体の思い出
まだ六十歳だった主人が急死して一年、一周忌法要も終わりやっと肩の荷が下りた午後、主人が大切にしまっていた大きい箱を開けた。
その中でもひと際目を引いたのは、紺色のベロアの立方体の小箱。鮮やかに想い出がよみがえる、そうこの箱に入っていた私の誕生石だったルビーの指輪を差し出して
「結婚してください」
と赤い顔でプロポーズしてくれたのだっけ。思い出して自然と、顔が微笑む。そして、大きい箱を覗いて見てみると今度は真新しい白い長方形の小箱が出てくる。
もう少しで結婚して三十年の記念日だった事を思い出して、胸がときめく。そっとその箱を開けてみると、そこにはーー
最近歯の治療に行っていた、主人の入れ歯がキラキラと輝いていた。
終わり
長年連れ添ってても、夫婦なんてこんなものです。(白眼)
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