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ブルックリン物語 #23 Autumn in NY「ニューヨークの秋」

NYにいるぴちゃん(ダックスフント・♀)からメールが届いた。厳密に言えば預かってくれている友人のモダンダンサー折原美樹邸に住んでいるヒーラーのしんちゃんからなのだが、パパと一緒の時より笑顔が多いような気がするのは、僻(ひが)みだろうか。

ぴちゃんはパパの出張を知っている。旅のパッキングをし始めると単独のお出かけがバレてソワソワさせてしまうので、ぴちゃんを宿泊先に預けてしまうまでパパは一切何もしない。パッキング以外の旅の準備。例えばメモを作って持っていくものを把握したり、冷蔵庫の野菜を片したりゴミを出したり。でもそういう些細なことこそ、ぴちゃんには伝わっているのだ。キッチンからリビングへ、リビングからキッチンへちょっとした動きをするパパについて、ぴちゃんはお出かけのキャリーバッグに滑り込む。

「あたしもパパと一緒に行くもん。絶対に一緒に行くんだもん」

今回の旅前のパパは忙しかった。日本に出発する直前にオペラの人とのコンサートがあり、そのすぐ後にはパパ自身のトリオライブがあった。そんなわけでリハなどで人の出入りが激しい。ぴちゃんはいつもと同じように、人懐っこい仕草でミュージシャン達に甘えて共に過ごす時間を満喫しているようだった。しかし刻々と近づいてくるパパのお出かけの瞬間を予感しているのかのごとく、パパがちょっとした外出から戻るとドアに一番近いローチェアに座って丸まっていることが多くなった。パパがトイレに行くと、さささとチェックしにくる。パパがデッキに出ると後を追う。ピアノを弾くパパを、デッキからジト目で見張る。大好きなご飯を食べている時も、パパがちょっとでも動くと口の周りにいっぱい食べ物をつけたままパパを追う。

そんなぴちゃんが滞在先のヘルズキッチンを悠々と歩く写真が、パパの誕生日にNYから送られてきた。しんちゃんと同じ表情をしてリラックスモードで映るぴちゃん。マリーンの船をバックに今まで見たこともないようなニコニコ顔で微笑むぴちゃん。目にはちょっとだけ目糞がついてるよ、ちゃんとお掃除してね。ポケモンと一緒のぴちゃん。毛布にくるまるぴちゃん。ご飯を待ってとろんとした目をするぴちゃん。しんちゃんからのメールにはパパの知らないぴちゃんの臨海学校の時間が凝縮して詰まっていた。

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